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1. 医療行為と医療安全について
(医療)医療の目的は健康の維持です.健康に影響する病気や症状のため,医師・歯科医師など医療従事者に診てもらう時,あなたは医療を受けています.医療従事者は心配事を聴き,症状の原因を見つけ,病気や疾患を治すための検査をし,検査結果とその意味を分かりやすく説明し,あなた自身が治療選択肢を決めることを助けます.これらの医療を受ける時,あなたは 「患者」 と呼ばれます.
(医療行為)医療行為は,簡単に言うと,「人が他人を治す」という社会的実践です.社会的・文化的行為であり,共同体構成員が病的状態,適応状態から逸脱する場合に,共同体が持っている技術,知識,富という社会的資産と労働力をもって,病的状態の人が,健康に生存し続けるように手当,治療をすることです.
(医療と医学)医療を実践する知識や経験,病気を認知し,原因を同定追求し,対処法を提示する知識理論体系を「医学」と言います.先に 「医療」 があり,「医学」 はその 「医療」 を効率よく実践するための意図的に編集された学問知識体系です.「医療」 は人類の歴史とともに古く,連綿と続いているのに対し,「医学」 は時代と共に変化してゆきます.
(医療安全)医療は本質的に不確実・不確定な部分があり,すべての医療行為には常にリスクを伴います.医療安全には最善を尽くしていますが,予期せぬ重大な合併症や偶発事故は起こり得ます.医療の不確実性は,生命の複雑性や有限性,人体の多様性,医学の限界にも由来し,低減はできても,消滅はできません.医療行為とは無関係の病気や,加齢に伴う症状が医療行為の前後に発症することもあります.勿論,これらの治療には最善を尽くしますが,予後に影響を及ぼす後遺障害が残存し,時に死亡に至ることもあります.
2.
よい咬み合わせとは?-不正咬合の治療目標,原因と予防-
歯ならびの悪いことを専門的には
不正咬合 malocclusion といい,歯が正しく噛み合わなかったり,乱れていることを意味します.しかし,「歯並びが悪い」ことと,「咬み合せが悪い」ことは,明確に区別しなければなりません.歯並びが悪くても,しっかりとした咬み合わせを保っており,見た目という「心の病」の改善を希望される方と,咬み合わせが悪いために咀嚼に不都合が生じ,日常生活や顎関節の問題に支障を生じている方では,歯列矯正の目的は大きく異なります.当クリニックでは,患者さまのご要望を十分にお聴きした上で,いくつかの治療法とともに,予測される治療結果をわかりやすくご説明させていただき,患者さま自身が
治療方法の選択に積極的にかかわれるように,正しい医療情報をわかりやすく提供する努力を行なっております.また,十分納得し,安心して治療を始めていただくためにも,セカンドオピニオンとして別の医療機関を受診されることも積極的にお勧めしております.現在のお口の歯並びの状態を受け入れ,治療しないことも一つの選択肢です.どうぞ安心してお気軽にご相談ください.『歯並び』や『咬み合わせ』についてご理解いただくためには,
正しい咬み合わせについてよく知る必要があります.言い換えれば,患者さま自身の歯並びや顔との調和を,どのような状態に治療しようとしているのか? すなわち,達成される治療目標です.矯正歯科治療後の歯並びの評価法は,カウンセリング時に詳しくご説明させていただきますが,ご参考までに下表を,また,日本矯正歯科学会による「診療ガイドライン」もご参照ください.■ 矯正歯科診療のガイドライン(日本矯正歯科学会)
① 上顎前突編
また,現代社会における矯正歯科医療の位置づけについては,「良質かつ適切な(善行なる)矯正歯科医療とはなにか」,お時間があればご一読いただければ幸いです.
ABO: Guide for grading clinical case reports model analysis
■ 治療結果(正しい咬み合わせ)の見方: ⇒ ■ 不正咬合の治療目標 | |||
Class I |
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Class II |
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チェック事項 | 上下の歯は「2対1」の関係で,交互に隙間なくかみ合います. | 上下の正中が一致し,上顎の歯が下顎の歯の外に2-3mm程度かぶさります.歯の正中は顔の真ん中とも一致します. | 上下の歯は「2対1」の関係で,交互に隙間なくかみ合います. |
※ここに示した咬み合わせの評価法は,じっとしている状態です.実際には,咀嚼(そしゃく:ものを食べる)時に正しく機能するように,また顎関節に問題がないかといった点についても確認しながら治療を進めます.また,歯の根がきちんと平行に並ぶように調節をします. |
不正咬合の多くは遺伝的要因によるものですが,妊娠中の母体の状態やある種の病気,顎や歯の発育異常などいろいろの原因があります.また,指しゃぶりのような習癖は出っ歯の大きな原因になります.その他に,乳歯の虫歯による早期喪失も不正咬合の大きな原因の一つです.もし,乳歯が虫歯で早く抜けてしまうと,他の歯が自然に動いてきて,乳歯の抜けた場所へ移動し,永久歯の生える場所を埋めてしまいます.その結果,永久歯の正しい生え方を妨げて乱れた歯ならびをつくります.
このように,乳歯は物を噛む役目と同時に,次に生えてくる永久歯のために席をとっておく場所とりの役目もしています.乳歯を虫歯にしないことが,私たちにできる最善の
予防矯正です.そのためには,一般の歯医者さんや小児歯科医の早期の治療と定期的な診査を進んで受けるべきです.定期的検査をしていれば,矯正歯科治療が必要なことや適切な時期を歯医者さんが説明してくれます.一般の歯医者さんや小児歯科医では,歯の定期検査,歯ブラシ指導,フッ素塗布,などの予防処置や虫歯の治療をし,さらに歯が早く抜けた場合には子供の入れ歯をつくってくれます.このような予防処置をして,小児の歯の発育を観察するようにすれば,多くの子供を不正咬合から救うことができるでしょう.最善の歯列矯正治療は「予防」です.これは歯科医とご両親の責任でもあります.
不幸にして,不正咬合が発見されたら,それはもう
矯正歯科治療の分野です.口腔の異常や不正咬合,顔面の不調和の診断・予防・治療のための特別の専門教育とトレーニングが必要とされています.いくつかのクリニックを実際に受診され,治療方針や治療期間,料金(総額や支払方法など)などについてお尋ねください.また,休診日や通院の利便性なども長い通院には大切な選択基準になります.
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