以下の内容は,本研究会の資料として記述しいます.法律上,会計・税務上,福利厚生上,政策上の利用は自身の責任でご利用ください.

 

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― 健康の社会的決定要因について

   国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針

   健康日本21(第二次)最終評価報告書

    歯・口腔の健康

   日本の公衆衛生システムへのOECDレビュー

 

― 子どもの権利条約と我が国における医療としての歯科矯正

   こども家庭庁設置法 児童福祉法 こども基本法 子ども権利条約 子ども・若者育成支援推進法

 

― 欧州大陸における社会保障制度:わが国の医療としての矯正歯科の位置
   ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

 

― 主要国における歯科矯正の公的医療保障制度概要2017(厚生労働省資料を追加改変)

   子どもの歯科矯正への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国,2016)

   ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療への公的医療保障の現状(2010)

 

― わが国の社会保障の概念

 

― 医療提供体制について

   価値財/一般財

   皆保険/自由開業制/フリーアクセス/出来高払い 

 

― わが国の公的医療保険(歯科矯正に関するもの)の流れ

 

― 疾病としての歯・歯列弓の大きさ/位置関係/機能の位置異常

 

― WHOによる国際疾病分類 ICD

   ICD-11

   ICD-DA 第3版(WHO 1995)― 歯科矯正領域の疾病 Disease
   子どもの歯の矯正の政府見解
   医療倫理の問題解決の視点

 

― 8020 と 社会疫学の視点(歯列矯正:所得格差からくる実態)

 

― 歯列矯正の目的:概念的なもの

 

― 誰が主体となって医療を提供すべきか?

― 医療制度は社会的ニーズへの対応にどの程度関与すべきか?

 

― 誰の歯科矯正治療を優先するべきか?(医療資源の倫理学)
   シャンシエフ報告書(Schanschieff report)- IOTNの背景
   イギリスにおける矯正歯科学会の役割
   治療品質基準に関する各国ガイドライン

 

― 歯科矯正(歯の位置,歯列異常への医学的介入)に適切な時期

 

― 我国の歯科矯正の治療品質評価と諸外国の比較

 

― 医療保険の基礎理論
        情報の非対称,モラルハザード.逆選択

 

― 我国の法令上における不正咬合,歯列・咬合,歯科矯正,矯正治療の取り扱い

   所得税法  学校保健安全法  学校教育法  統計法  地方自治法
   成育基本法
    成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針
    健やか親子21  健康日本21
   健康増進法  医療法  健康保険法  生活保護法  歯科口腔保健の推進に関する法律

 

― 日本における歯科矯正の議論:
   子どもの歯列矯正のについて の議論
   OECD加盟国の保健医療費の状況(2018年)
   OECD Health Statics 2021

 

― こどもの歯科矯正への公的医療保障の国際比較

   OECD加盟国での比較

   英国  フランス  ドイツ  スウェーデン  ノルウェー  イタリア
   カナダ  アメリカ  オーストラリア  ロシア

 

― その他,追加など

 

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― 健康の社会的決定要因について

 

 人の健康に影響する要因:

 

① 個人的な決定要因

・喫煙,飲酒,歯磨き習慣などの生活習慣

・食生活,睡眠

・舌癖

・遺伝

 

② 社会的な決定要因(SDH: Social Determinants of Health)

・ソーシャルキャピタル(社会的支援,信頼,規範,市民活動)

・移住地域(国,気候)

・文化的慣習

社会経済的状況(所得,学歴)

国家制度(法令,保健医療制度,教育制度)

 

 

Closing the gap in a generation: Health equity through action on the social determinants of health - Final report of the commission on social determinants of health

一世代でギャップを埋める.健康の社会的決定要因への取り組みによる健康の公平性  WHO健康の社会的決定要因委員会 最終報告書

 ☛ 日本語版 Japanese を選択するとスウェーデン語が表示されますので,→ 日本福祉大学の日本語訳(要旨),もしくは web翻訳ソフトを参照ください.

子どもたちは,どこで生まれたかによって,人生のチャンスが大きく異なります.日本やスウェーデンでは80歳以上,ブラジルでは72歳,インドでは63歳,アフリカの国々では50歳以下と,その寿命は大きく異なります.また,国内でもライフチャンスの差は激しく,こうした状況は世界中で見られます.最貧困層は,病気や早期死亡のレベルが高いですが,健康状態が悪いのは,最も貧しい人々だけに限りません.所得水準に関わらず,健康や病気は社会的勾配に従い,社会経済的状況が低いほど,健康状態も悪くなります.
このような状況が合理的な行動によって回避可能であると判断される場合,こうした格差を私たちは「健康の不公平」と呼びます.是正可能な国家間や国内における健康上の不公平,すなわち健康格差を正すことは,社会正義の問題なのです.健康の社会的決定要因に関する本委員会では,健康格差の是正は倫理的な要請と考えます.

 

社会全体でなすべき規範:

 ・健康は人権であるという視点.生存権 健康権 生命権 幸福追求権

 ・すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.

 ・過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.

 ・常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.

 

参考 ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

☛ 米国における「医学的に必要な歯科矯正」の基準(メディケア給付対象)

 

Q:社会制度に起因した日本人の口腔環境改善への医療格差,歯科矯正医療へのアクセスの社会経済的障壁は,健康の社会的決定要因として歯科医療全体にも及んでいる.
   → 子どもの歯科矯正に対する各省庁間の矛盾:法令 国税庁/文部科学省/厚生労働省における解釈の違い.国民の混乱について
   → こども家庭庁での整理・政策立案を期待す.

 

 

国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針

  第一 国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向
   一 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
   五 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

社会経済的状況の違いに着目し....

乳幼児期から高齢期までのライフステージや性差、社会経済的状況等の違いに着目し、こうした違いに基づき区分された対象集団ごとの特性やニーズ、健康課題等の十分な把握を行う。

健康格差の縮小は、生活習慣の改善や社会環境の整備によって我が国において実現されるべき最終的な目標である。

(6)歯・口腔の康
   歯・口腔の健康は摂食と構音を良好に保つために重要であり、生活の質の向上にも大きく寄与する

  という方針......

公表された最終告書(健康日本21(第二次)最終評価報告書 令和4年10月11日)
 
5.栄養・⾷⽣活、⾝体動・運動、休養、飲酒、喫煙及び⻭・⼝腔の健康に関する ⽣活習慣及び社会環境の改善

(6)歯・口腔の健康 354ページから

評価報告書から,「目標に達した」 ものはなかったという結果.

【生涯にわたる健全な口腔保健の確立】 口腔機能の維持・向上 C  歯の喪失の防止 E
【歯科疾患の予防】 う蝕予防 B 歯周病予防 E
【歯・口腔の健康のための基盤的行動】 歯科健診の受診者の増加  E

A 目標値に達した
B 時点で目標値に達していないが,改善している
C 変わらない
D 悪化している
E 評価困難

健康日本21(第二次)最終価報告書 令和4年10月11日
概要
第1章
第2章
第3章 Ⅰ~II4
II5~IV ← (6)歯・口腔の健康 354ページから
第4章
別添  ← (6)歯・口腔の健康 67ページから
参考資料

 

次期健康づくり運動プランの検討スケジュール(厚生労働省Webより)

【 平成6年度以降の 「次期国健康づくり運動プラン」 に必要な課題として 】

☛ 評価者の社会経済的格差による医療アクセスへの障壁,社会的健康格差の是正.
☛ 口腔環境の改善(歯列矯正)という根本的な課題に目を向けるべきではないか?
☛ 歯科における健康格差の課題への取り組みの欠除が 「評価困難 E」 の要因ではないか?

参考 ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

日本の公衆衛生システムに対する OECD のレビュー(2019)

OECD(2019), OECD Reviews of Public Health: Japan 2019, A Healthier Tomorrow, Chapter 1 The Public Health System in Japan, 1.9. Conclusion 06 Feb 2019

 

我が国の歯科医療は,公的医療保障の最高い国の一つであるが,歯科矯正(疾病としての歯・歯列の位置や大きさの異常)に限ると,それはまったく逆であり,国民の経済的負担が世界でも最も大きな国ではなかろうか.日本の歯科医療においては,常に視点を低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善がはじめてなされるという社会全体でなすべき規範は失われている.社会変化や国民意識,健康/医療概念の変化とともに,社会経済的状況の格差から生じている歯科矯正医療へのアクセスの格差/不平等は,全国自治体からの多数の意見書,請願,国民の声として政府に寄せられているが届いていない.OECD報告書にも指摘されているように,国民の声(請願・各自治体意見書・国民の要望など)に耳を傾けるべきでではないか.

また,そもそも日本の平均寿命,健康寿命はすでに世界一である.公衆衛生における全体像,人間の寿命は永遠ではなく,政府は国民の寿命という数値を伸ばす目標は,国民の幸せという目的ではない.政府の健康指標(目標)と生きている目的には大きな違いがあり,健康は目的ではなく,それぞれの国民自身が大切と考えることを達成するための手段でもある.健康と通じて国民が幸福度を向上させ,不平等/格差のない健康を享受できる制度はいかにあるべきであろうか? 健康増進は目標ではなく目的であり,口腔機能の維持・向上,歯の喪失を防止を目標としている目的は国民の幸福ではないか?

人間が生活するための現代社会において,コミュニケーションにとって,歯や歯列の大きさ・位置の異常という疾病は,なぜ日本ではこどもの成長や健やかな発育にとって必要がないものであり続けているのだろうか?歯科矯正医療の目的について,我が国の歯科医師は,技術的次元から離れて道徳的次元から,いま一度かんがえるべきではないか?

 

Q:健康日本21(二次)の最終評価を見ると,その目標が達成に必要なものとして, 国民自身が口腔環境や生活の質に関する関心を持つためには,健康格差(口腔機能,歯の喪失,う蝕予防,歯周病,歯科健診への関心)という,これら口腔保健への関心の高さへの社会的障壁となっているのではないか?

Q: こうした歯科医療への社会的格差是正こそが,政府の目的とする我が国で実現されるべき課題,最終的目標ではないか?

☛ 調査研究のデザインの見直し,サンプル選択の基準への社会経済的因子(所得水準など)の追加

☛ 歯列矯正と口腔衛生(FDIの施政方針)

 

公益社団法人 日本矯正歯科学会 定款
第2章 目的及び事業
(目的)第3条 この法人は、歯科矯正学に関する学理及びその臨床応用についての研究発表、知識の交換、国内外の関連学会との連携協力等に関する事業を行い、歯科矯正学の進歩普及、学術の発展ならびに国民の口腔衛生の向上に寄与することを目的とする。

  ☛ 寄与: 役に立つことを行うこと.貢献.

  ☛ 世界のそれぞれの国々における歯科矯正医療の道徳的-実践的次元は,それぞれの社会においてどのように国民の口腔衛生の向上に貢献しているだろうか?

 

 

― 子どもの権利条約 と わが国における医療としての歯科矯正

 

子どもの権利条約(Convention on the Rights of the Child)における child

Child:① 子ども,② 児童

第1条 児童とは18才未満のすべての者をいう.

 

UNICEF 国連児童基金 ユニセフ:子どもの権利条約

外務省:   児童の権利条約 (児童の権利に関する条約)

文部科学省:児童の権利に関する条約

 

こどもの医療費助成

多くの各自治体では,子どもの医療費の自己負担分を助成している.対象年齢は15歳,18歳など様々である.助成水準について,子どもの医療費の自己負担は,健康保険制度では原則、小学校入学前は2割、小学生以上は3割だが,各自治体が独自で無料化や軽減策などを実施し,助成水準は自治体によって異なる.

参考:広島市 

 

こども家庭庁

こども家庭庁設置法

こども家庭庁は、心身の発達の過程にある者(以「こども」という。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務とする。

 

児童福祉法

第一章 総則

第一条全て児童は、児童の権利にする条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
 ② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
 ③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。

 

こども基本法

 

子ども権利条約

1989年「子どもの権条約」は国連で採択され,1990年国際条約として発効.
日本は1994年4月22日に批准し,1994年5月22日に発効した.

政府訳:

第24条
1.締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
2.締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
 a. 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
 b. 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。

☛ 「子どもの歯科矯正」 における公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

 c. 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と戦うこと。
 d. 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
 e. 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
 f. 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。
3.締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。

   ☛ 我が国における「子どもの歯列矯正は審美・美容とする考え」は,伝統的な慣行に当たらないか?

       ↳ 国税庁,厚生労働省,文部科学省の省庁間における見解の相違(下表参照)
          国 税 庁 :子どもの歯科矯正は
医療費として医療費控除可としている.
          厚生労働省:不正咬合は疾病でなく美容目的との見解.厚生労働省監修の国際疾病分類では疾病として記載.保険適用はなく矛盾
          文部科学省:学校健診における不正咬合:子どもの健康に影響を与えるものとして全国で健診を実施.

4.締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。

 

ユニセフ協会抄訳

第24条 健康・医への権
   子どもは,健康でいれ,必要な医療や保健サービスを受ける権利をもっています.

 

 

子ども・若者育成支援推進法

第一章 則
(目的)
第一条 この法律は、子ども・若者が次の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。

(基本理念)
第二条 子ども・若者育成支援は、次に掲げる事項を基理念として行われなければならない。
一 一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるようになることを目指すこと。
二 子ども・若者について、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な差別的取扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善の利益を考慮すること。
三 子ども・若者が成長する過程においては、様々な社会的要因が影響を及ぼすものであるとともに、とりわけ良好な家庭的環境で生活することが重要であることを旨とすること。
四 子ども・若者育成支援において、家庭、学校、職域、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に取り組むこと。
五 子ども・若者の発達段階、生活環境、特性その他の状況に応じてその健やかな成長が図られるよう、良好な社会環境(教育、医療及び雇用に係る環境を含む。以下同じ。)の整備その他必要な配慮を行うこと。
六 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における知見を総合して行うこと。
七 修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。

 

第二章 子ども・若者育成支援施策

(子ども・若者育成支援推進綱)
第八条 子ども・若者育成支援推進本は、子ども・若者育成支援施策の推進を図るための大綱(以下「子ども・若者育成支援推進大綱」という。)を作成しなければならない。

2 子ども・若者育成支援推進大綱は、次に掲げる事項について定めるものとす。
 一 子ども・若者育成支援施策に関する基本的な方針
 二 子ども・若者育成支援施策に関する次に掲げる事項
   イ 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における施策に関する事項
   ロ 子ども・若者の健やかな成長に資する良好な社会環境の整備に関する事項
   ハ 第二条第七号に規定する支援に関する事項
   ニ イからハまでに掲げるもののほか、子ども・若者育成支援施策に関する重要事項

 

こども政策の充実 予算の在り方

 

令和4年1月17(月)議院 予算委員会

 全世代型社会保 子育政策 イフステージに応じた支援についての議論

  発言者:高木陽介(公明党),答弁者:岸田文雄(内閣総理大臣)

子ども不妊治の保険適用,教科書の無償配布,出産育児一時金の増額,幼児教育保育の無償化
子ども家庭庁の来年度からの発足.子供の年齢に応じた支援について

全世代型社会保障構築本部

日本の子育て関連の公的支出は対GDP比で欧州諸国の分程度であり,子どもの関連予算の倍増も緊の課題ですよね.
基本的な考え方として,子どもの視点に立って必要な子ども政策は何か?財源について社会前提でどのように負担するのか,考え方を整理し,その上で倍増の議論を進めていかなければならない.来年の「骨太の方針」には倍増の道筋を示していきたい.

動画

 

 

― 欧州大陸における社会保障制度:わが国の医療としての歯科矯正の位置

 

ユバーサ・ヘル・カバレッジ(UHC)

すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なきに、負担可能な費用で享受できる状態

 

 各国の制度的医療についての要点と問題点.

     欧州諸国:健康上/well-beingの医療問として,国家は公平・平等な公的保険医療の適用.

欧州など諸外国における歯列不正への公的医療保障制度,社会的概念を渉猟比較.以下参照.

 ☛ 「子どもの歯科矯正」 における公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

 ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

 

わが国の医療保険制度は,すべての国民を公的医療保険で保障する「国民皆保険制度」,「現物給付」,「フリーアセス」の3点に集約される.しかしながら,歯科矯正については,日本固有の歴史文化社会的背景から,公的医療保障制度と法制度(学校健診,税制上,専門医制度など)において,国民,各省庁間,医療従事者においてもそのあり方についての解釈や整合性は十分でない.

 

歯列矯正における健康上 well-being の意義,そして,すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、要なときに、負担可能な費用で享受できる状態の達成,良質かつ適切な歯科医療を国民へ公平に提供するまでには多くの課題が存在している.

 

ドイツ,英国では,歯と歯列の位置・大きさの異常を障害の程度に応じて5段階に分類.公的医療保障の適用となる歯列正の適用基準がより明確である.わが国における歯科矯正には,民間保険はなく,公的保険の適用範囲も一部の疾患にのみ限られており,そもそも歯と歯列の位置・大きさの異常(国際疾病分類K07)を疾病でないとする日本独自の歴史的文化背景に起因した 「疾病 / 健康概念」 や 「社会通念」 が存在している.政府見解・国民の要望・歯科医療従事者の教育などへの対処が求められる.

Orthodontics と歯科矯正,グローバルな現状とわが国との乖離は,幕末に伝来した歯科・ 歯列矯正の歴史的背景,国民の口腔の健康への意識向上,歯列に対する社会的文化的意識や概念の急速な変遷に起因すると考える.現在の我国では国民に多大な経済的負担を強いており,口腔の健康格差,制度的改正による健康の社会的決定要因の是正が望まれる.

 

 

― 主要国の公的医療保障制度の概要2017厚生労働省資料を追加改変)

我国の歯科医療は世界で公的医療保障が最も高い国の一つとされているが,「歯科矯正」に限るとその学問体系に関する考察遅れ,その意義と目的が不明瞭となっている.政府見解や歯科医師自身からも美容整形技術であるかのように解釈されており,国民には大きな経済的負担を求められる世界でも奇異な国家となっている.経済的負担から生じる歯科矯正医療へのアクセスの不平等は,口腔の健康格差の社会的決定要因となっている.

 矯正歯科専門医の役割は誰のためにあり,その目的と意義は何か? 国民への平等な医療提供制度,口腔の健康格差の是正はいかにるべきか?

 ☛ 子どもの歯科矯正 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国 2016)

 ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

 

 日本ドイツフランススウェーデンイギリスアメリカ
制度類型社会保険方式
国民保険
会保険方式
国民皆保険
社会保険方式
国民皆保険
税方式による公営の
保健・医療サービス
税方式による公営の
保健・医療サービス
NHS, National Health Service
メディケア
メディケイド
民間医療保険
自己負担0-30%
こども医療費助成
外来:なし
入院:1日10€
外来:30%
入院:20%
薬剤:35%
無料
ランスティング
(地方自治体)
原則無料民間医療保険
加入率67.3%
2018年
歯列矯正への適応
OECD諸国,米国,諸外国では,医学的に必要とされる場合,公的医療保障が適用
民間保険なし
×
公的保障は限定的

一部疾病
適用範囲は限定
根拠解釈は議論要

18才以下
(1)

16才未満
(2)

19才未満
(3)

18才未満
(4)

メディケイド
21才まで
州による格差+
国民の71%は民間歯科保険に加入
公的医療保険の根拠 疾病及び傷害の国際分類 1900年-
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」とは,「国際疾病分類」とも呼称され、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や傷病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため設けられた分類.1900年(明治33年)に国際統計協会により制定されて以来,医学の進歩や社会の変化に伴いほぼ10年ごとに修正が行われ,第2次大戦後はWHOの所管となり世界保健機関憲章に基づいたものとなった.現在国際的には,1990年(平成2年)の第43回世界保健総会で採択されたICD-10が使用されている.厚生労働省大臣官房統計情報部より引用

  ICD-11 Version: 02/2022
    ICDの概要について
    ICD-11の国内の公的統計への適用について

健康の定義 1946年Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 
公的医療保険適応への経過1947: 顔貌の不正による精神的・社会生存上の懊惱苦悶を指摘(高橋新次郎)

1951: WHO加盟













1982:
唇顎口蓋裂


1990:
顎変形症
詳細は下表.

1994: こどもの権利条約批准(世界で158番目)

1995: 学校歯科検診(不正咬合の健康診断開始)



2001: 健やか親子21

2002~2022:
歯科矯正混迷期



2015: 健やか親子21(二次)

2019: 成育基本法


 歯の矯正への請願
 自治体意見書 
 国民の要望多数



2023:
こども家庭庁



1948
: Orthodontic treatment included in the provisions of the National Health Service Act












1986:
シャンシェフ報告

1986:
Occlusal Index Committee set up in the aftermath of the 'Committee of Enquiry into Unnecessary Dental Treatment' recommends the introduction of orthodontic indices for NHS treatment
1947:公的資金を投入すべき不正咬合として,口唇口蓋裂,重篤な上下顎の疾患や外傷に起因する不正咬合,醜状,発音に関係し,正常発育への影響や教育就労に障害をもたらす場合の歯列矯正の基準を示した.

1965: 社会保障法IXI メディケイドプログラム制定.
1967: 社会保障法改正.21歳までのメディケイド,handicapping malocclusionへの給付義務化.
















2010: ACA法(Patient Protection and Affordable Care Act(PPACA, オバマケア)成立.Medically necessary orthodontic treatment

適用基準一部の疾病
社会通念上必要
容姿の美化X 概念
(Social handicapとQoL)
学校健診:

議論の整理要
諸外国の現状
子どもの権利
制度/法的な是正
☛ 健康格差
KIG
歯科矯正適応グループ
IOTNHLD index
HLD(CalMod)
Salzmann index
など.州による.

Medicaid Orthodontic Service
 歯・歯列の位置や大きさの異常と健康の関係についての国際的な認識
根底にあるものは,「国民の幸せとは何か」という社会通念や理から,国民が享受できる医療制度や法が構築されてゆく.国民の幸福という国家における医療のあり方を考えるに,健康格差の大きな米国においても日本の終戦直後の時期に,公的資金の投入すべき不正咬合の審査基準は定められており,自由診療を取り入れてきた我国の歯科医療は,諸外国における倫理的実践的次元の医療概念,Social handicap,健康格差の是正や社会保障について学ぶものはないか.

Oral health care in Europe: Financing, access and provision, Health Systems in Transition vol.24 No.2 2022

OECD加盟国の保健医療費の状況(2018年)

OECD Health Statics 2021

OECD Health Statics 2022

The state of oral health in Europe. Report commissioned by The Platform for Better Oral Health in Europe

OECD health Working Papers No. 90 (2016) How OECD health systemsdefine the range of good
and services to be financed collectively

Committee of European Health Insurances, European Orthodontic Health Insurances, June, 2010. European Federation of Orthodontic Specialists Associations

ドイツのKIGシステム:2002年1月1日より導入.

Prevalence and Development of KIG-relevant Symptoms in Primary School Students from Frankfurt am Main. Bettina Glasl, Björn Ludwig, Peter Schopf, J Orofac Orthop 2006(6): 414-423

アメリカのHLD/HLD CalModなどについて
Relationship of 3 indexes of orthodontic treatment need used by Medicaid and oral health–related quality of life
Camacho D,Rinchuse D, Zullo T, Roche M
AJO-DO 161(4) p574-81,2022

An Overview of Orthodontic Indices
World Journal of Dentistry, January-March 2012;3(1):77-86

6.6.2. 歯列矯正治療

133 OECD 加盟国のうち 12カ国(ベルギー、チェコ、フィンランド、フランス、ギリシャ、ハンリー、 アイスランド、日本、ルクセンブルグ、ノルウェー、ポーランド、スイス、トルコ、イギリス)は、 矯正歯科治療に一部保険を適用している。

ベルギーでは9歳、ポーランドでは12歳、フランスでは16歳、フィンランドとルクセンブルグでは18歳、ノルウェーでは20歳と、年齢制限の異なる子供たちに適用されることがほとんどである。

ハンガリーでは、顔面の奇形、癌、外傷などの病状に限定されており),日本では手術が必要な重篤な症例に限定され,カナダでは歯科矯正治療は一部の州と一部の民間医療保険プランでのみカバーされている。

Table A.16 Coverage of interventions which are at the frontier between health and cosmetics: Orthodontics

Table A.17. Coverage of dental care and prosthesis

   ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

☛ 子どもの歯科矯正 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

   ☛ わが国の医療保険について(厚生労働省)

 こども医療費助成(乳幼児等に係る医療費の援助):少子化対策の一環とて、各を都道府県・各市町村が独自に子どもの医療費を助成するようになり,厚生労働省「乳幼児等に係る医療費の援助について(令和2年度)」参照.47都道府県全てで導入されているが,対象年齢や所得制限の有無などは都道府県によって異なる.

 

EU MANUAL (2015.2年版)

 

参考:    配布資料:保険診療の理解のために:歯科(令和3年度版)[PDF形式1,129KB]

スライド資料:保険診療の理解のめに:歯科[PDF形式:1,453KB]NEW7月30日

相田潤,他 ライフステージによる日本人の口腔の健康格差の実態:歯科疾患実態調査と国民生活基礎調査から.口腔衛生会誌 66: 458-464, 2016

歯科健康格差への対応について

Manski RJ and Rohde F. Dental Services: Use, Expenses, Source of Payment, Coverage and Procedure Type, 1996–2015 : Research Findings No. 38. November 2017. Agency for Healthcare Research and Quality, Rockville, MD.

https://meps.ahrq.gov/mepsweb/data_files/publications/rf38/rf38.pdf

 

※ わが国における歯科矯正における制度上の諸問題.ヨーロッパ大陸諸外国との社会保障上の歯科矯正の位置/あり方の違いを理解する.

Traitionally, craniofacial biology has served as the sole scientific basis of orthodontic practice and research. Clearly an overlap of interests does exist between clinical orthodontics and craniofacial biology. However, the specialty is also significantly related to social, economic, and cultural factors. The "new paradigm" recognizes all of these interactions and dictates their integration conceptually and in research aimed at rationalizing orthodontics. Vig PS: Orthodontic controversies: their origins, consequences, and resolution. In Melsen B, ed. Current Controversies in Orthodontics. Chicago: Quintessence, 1991; 269-310. Fig 10-1  

 

 

― わが国の社会保障の概念

 わが国の社会保障の始まりは,明治期の廃藩置県,地租改正などによる貧困問題への公的な救済法として明治7年(874に発布された 恤救(じゅっきゅう)規則 にあり,昭和4年(1929)救護法,昭和25年(1950)生活保護法へ引き継がれている.

 社会保障概念の基は 日本国憲法第25条 であり,その概念を明示したものが 「社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)」 とされる.

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 ② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

1942年の Sir William Beveridge 卿による 「SOCIAL INSURANCE AND ALLIED SERVICE  通称 ベバリジ報告」,同年の ILO 国際労働機関による 「社会保障への途」 に基づいて提唱されたのが,以下の社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)

いわゆる社会保障制度とは,疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子その他困窮の原因に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生及び社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)

すなわち,社会保障制度とは,

① リスク分散:

  自分の責任に帰することのできない理由によって発生する,さまざまな経済的リスクに対して社会全体で備えること

② リスク軽減:

  そうしたリスクが実際に発生する可能性そのものを社会全体で引き下げること

という2つの側面から,最低限度の生活「ナショナル・ミニマム」を保障する.

 

平成24年 厚生労働白書

 第1章 なぜ社会保障は重要か(p.5-18)

 第1節 社会保障の誕生

 第2節 社会保障の発展

 第3節 社会保障の「見直し」と再認識

 第4節 日本の社会保障はどうだったのか

 第2章 社会保障と関連する理念や哲学(p.19-  )

 第1節 自立と連帯 ~ 自立した個人を,連帯して支える

 第2節 効率と公正 ~ 効率と公正の同時実現を追求する時代に 

 第7章 社会保障を考えるにあたっての視点(p.218-244)

 第1節 望ましい社会の姿を考える

 第2節 社会保障の機能・役割を理解する

 第3節 社会保障の給付と負担の関係を考える

 第4節 他社の立場で考える

 

  「社会保障って,なに? ~身近な人から学ぶ健康保険や公的年金の話~ 」 厚生労働省 映像教材 25分30秒

  中3社会公民_社会保障の仕組み

 【高校生のための政治経済】 世界の社会保障#1

 【高校生のための政治経済】 社会保険①医療保険#2

 【高校生のための政治経済】 社会保険②年金保険#3

 【高校生のための政治経済】 社会保険③雇用保険・労災保険・介護保険#4

 【高校生のための政治経済】 公的扶助・社会福祉・公衆衛生#5

 

 

社会保障の4つの柱

 ① 公的扶助

 ② 社会保険

 ③ 社会福祉

 ④ 公衆衛生

 

老齢,遺族及び廃疾に関する保険険
国家扶助
公衛生及び医療療
社会福祉祉

☛ 「社会保障と憲法」に関する基礎的資料 基本的人権の保障に関する査小委員会 平成15年7月 衆議院憲法調査会事務局

 

所得再分配と社会保障

最低限度の生活保障

保険原理と福祉原理

普遍主義/選別主義

 

 

 WHOによる健康の定義がなされた1946年は,終戦翌であり,わが国の国民生活・日本経済は貧困の渦中にあった.この当時の医療概念や対象とする歯科疾患の造は現とは大きく異なり,虫歯と入れ歯の洪水で歯科医院は足りず,前歯の開面金冠や銀歯はごく当たり前,白い歯の審美修復や歯列矯正はまだ先の時代であったこの時代の高橋新次郎氏の著書「歯科矯正学」(1947)には,歯列矯正の意義が健康の定義と関連して記述されている.

 1947:高橋新次郎:(以下原文のまま)不正咬合並びにこれに依りて招来される顎骨の異常,乃至は顔貌の不正(勿論顎骨の異常が原因で不正咬合を生ずることも多いが)等は單に患者の咀嚼,發音等の諸機能を阻害するにのみならず,患者自身の精神上にも頗る重大な影響を及ぼし,これがため自らを卑下し,社會生存上常に大なる損失を招きつゝあることは吾々經驗するところである。例へば圖1-2のやうな甚だしい不正咬合に於いては,その顔貌上に及す影響も極めて大であつて患者自らもその點に關し,懊惱苦悶せることは明らかである。かくの如き場合に於ける矯正施術の目的は,單に齒牙の正常なる機能を恢復するばかりでなく,進んで顔面の不正おも改善することにより,より重大な意義を有することは明である。顔貌の不正は患者自身の精神上にも架る

顔貌の不正の改善,well-beingの向上

矯正歯科医療の価値 / ☛ 矯正歯科治療の目的と意義

 1950年代後半から,我国の高度経済成長は国民の生活水準を引き上げ,1982年には先天性疾患として唇顎口蓋裂の保険適用がなされた.社会保障制度は,当初は貧困への救済から始まったが,国民生活の向上,国民の健康概念の西洋化により,医療保障は社会的・精神的な分野への対応も必要となっている.社会変化・国民の求めに応じて,医療保障の適用範囲は修正・是正すべきものであろう.

 

社会的共通資本:本当の豊かさとは何か? 宇沢
 自然資本:海,森,川,海洋,水,土,大気
 設備資本:道路,水路,橋,,上下水道,電力,ガス
 制資本:教育,医療,福祉,司法,文化

 

よくある不思議な回答:

歯列矯正ってなぜ保険がきかないのか?
 保険診療では,治療内容、使用できる薬,材料等に細かいルールが決められています.それ以外の治療方、材料等を望まれる場合は,自費診療になります.昨今,保険診療の財政的問題で,安全性のある高度先端医療すべてが保険導入されているわけではなく保険の枠のなかだけで,国民的ニーズに答えきれなくなってきました.歯科の分野では,インプラント,歯周再生治療,歯列矯正,審美歯科,審美補綴(オールセラミック等),特殊義歯が上げられます.その他詳しい内容は,ご相談ください.

 歯の位置異常・大きさの異常という「疾病」としての歯列不正は,他に代替療法のある他の分野とは明らかに異なる分野であり,この点においても歯列矯正に保険適用されていない理由の説明に不可解な矛盾がある.我が国の国民は,疾病としての歯の位置異常の医療行為を希望した場合,「治療する」,「治療しない」 の二択選択しかできない.

 社会的共通資本としての医療について

 

 

― わが国の公的医療保険 歯科矯正に関するもの の流れ

 

明治07 1874年 恤救(じゅっきゅう)規則

大正11 1922年 (旧)健康保法

和13 1938年 (旧)国民健康保険法

昭和20 1945年 終戦

昭和22 1946年 WHO憲章(健康の定義)

昭和25 1950年 社会保障制度に関する勧告,生活保護法

昭和26 1951年 WHO加盟

昭和33 1958年 国民健康保険法の制定

昭和36 1961年 国民皆保険の実現

昭和48 1973年 70歳以上の医療費が無料に(自己負担ゼロ)

昭和50 1975年 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 昭和50年11月11日

             兎唇口蓋裂に対する健康保険診療範囲の拡大に関する請願(第1497号)

昭和51 1976年 第82回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 昭和52年10月25日

             口唇裂・口蓋裂児の医療に関する件

昭和53 1978年 医療法改正により,標榜診療科 「矯正歯科」 「小児歯科」 の追加

昭和57 1982年 唇顎口蓋裂の保険導入

      ☛ 口蓋裂と矯正歯科―その保険導入の前後

      ☛ 谷間の口がい裂児:この子らに健保を

昭和58 1983年 老人保健法の施行

昭和59 1984年 職域保険(被用者保険)本人の自己負担1割

        そしゃく機能障害 ☛ 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 昭和59年8月1日

平成02 1990年 顎変形症の保険導入

平成07 1995年 学校歯科健診に歯並びの項目が追加される

平成08 1996年 顎口腔機能診断施設基準の追加

平成09 1997年 同自己負担2割

平成14 2002年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

平成15 2003年 同自己負担3割

平成16 2004年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

平成20 2008年 後期高齢者医療制度始まる

             別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

平成22 2010年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

平成26 2014年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

平成27 2015年 医療保険制度改革法が成立

平成28 2016年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

             (国民健康保険への財政支援の拡充、

              入院時の食事代の段階的引き上げ、

              紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入などが盛り込まれた)

平成30 2018年 国民健康保険の財政運営が、市町村から都道府県単位に変更

             別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

             前歯3歯以上の永久歯萠出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)

令和01 2019年 成育基本法(基本的な方針

令和02 2020年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

令和04 2022年 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

 

学校歯科検診において専門医の受診が勧められるもの

  → 諸外国における公的医療保険の適用基準と比較する

学校歯科検診の基準

 

 

― 疾病としての歯・歯列弓の位置/位置関係/機能の異常

 

疾病 / 病気 / 健康とは何か? 疾患の文化的概念,とらえかた(社会的価値の多様性について)

 

健の定義

病,病気,疾病,疾患 (illness/disease

疾病,障害,死因の国際統計分類

ICD

健康寿命

 ☛ 問い: わが国において 「歯や列弓の位置/位置関係の異常」 は疾病でないとされているのはなぜか?

政府答弁

発言URL:  歯科矯正につきましては、疾患咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象といたしております。 これは、我が国の公的医療保険は疾病や負傷の治療等に対して保険給付することを目的としておりますけれども、歯科矯正治療につきましては審美的な要素も大きいため、原則的に保険適用外となっているためでございます。

☛ 患者は病気(illness)を苦しみ,医師は疾病(disease)を扱うと言われるが,国際的な医療概念から外れている日本独自の政府答弁の原因は,われわれ医療提供者側にも責任はないか? 歯科矯正学の学問体系に関する総論的な考察が遅れ,矯正治療の意義と目的が不明瞭となっているとの指摘がなされてきた.この社会的苦痛 social suffering に関する医療的意義は高橋 19471,鈴木ら 19782 によっても指摘されている.医療は社会との契約の基礎であること.医師の利益より患者の利益を優先すること.健康に関する専門的助言を社会に与えることなど医療倫理原則について.

☛ 歯科矯正のあり方,現状の考察,修正すべき点はどこか? 諸外国の現状との乖離

咬合異常,歯列不正,不正咬合 ⇒ 歯の位置異常,歯列関係の異常,歯周病,顎関節疾患などの疾患/疾病の結果として生じるもの.咬合という概念に関するドグマ

【 参考】:

1. 不正咬合並びにこれに依りて招来される顎骨の異常,乃至は顔貌の不正(勿論顎骨の異常が原因で不正咬合を生ずることも多いが)等は單に患者の咀嚼,發音等の諸機能を阻害するにのみならず,患者自身の精神上にも頗る重大な影響を及ぼし,これがため自らを卑下し,社會生存上常に大なる損失を招きつゝあることは吾々經驗するところである。例へば圖1-2のやうな甚だしい不正咬合に於いては,その顔貌上に及す影響も極めて大であつて患者自らもその點に關し,懊惱苦悶せることは明らかである。かくの如き場合に於ける矯正施術の目的は,單に齒牙の正常なる機能を恢復するばかりでなく,進んで顔面の不正おも改善することにより,より重大な意義を有することは明である。 高橋新次郎: 矯正齒科學 理論と實際 第六版 第一章 矯正齒科學の意義 1947

2. 技術を中心とした治療学の進歩は,不正咬合の治療効果を高め,治療に伴う歯根吸収などの障害を避け,術後の安定を一層確実にするための努力の表現であって,このこと自体,非難されるべきではない.しかし,一方では,技術的進歩のみが独走して,そのあとにかずかずの矛盾が残されたという面がないとはいえない.とくに,歯科矯正学の学問体系に関する総論的な考察が遅れ,矯正治療の意義と目的とは,ともすれば不明瞭となり,このため歯科矯正学は,学生諸君からも,そしてときには矯正専門医からも,あたかも美容整形技術の一部であるかのように受け取られる結果を招いている.歯科矯正学は,現在,もう一度そのあり方について考える時期に来ているといえる.そして,学問の進歩とともに,また時代の流れと社会の変化とともに,常に考え続けるものでなければならない.歯科矯正学実習書 実習総論 p.1 医歯薬出版 昭和53 1978

 

 ☛ 問い: 歯科医師の医療行為,特に歯科矯正学の技術や知識は,格差なく国民へ公平に配分されているか?

6年間の大学歯学部での教育後,国家資格を経た歯科医師(あるいは矯正歯科の標榜,学会の認定医や専門医を名乗る歯科医師)は,その知識や技術を,国民へ公平に提供できていない.社会経済的理由から歯列矯正が受けられない多くの患者が存在しており,多くの自治体,国民から健康の社会的決定要因を是正する要望が出ている.

現在の歯科矯正領域では,専門医制度による国民への医療資源の配分について,大きな矛盾がある.

【国民の声と現状について】

 

平成10年(1998)3月31日 公明党広島県本部と歯科矯正の保険適用を求める会より1万人を超える署名簿を厚生省(小泉厚生大臣)へ提出.
平成10年4月7日 第147回国会 議院 国民福祉委員会 第5号
その後の全国の自治体からの意見書
 平成12年03月29日 三鷹市議会
 平成12年03月30日 東京都議会
 平成29年09月15日 甲府市議会
 令和元年06月26日 第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第23号
子供の歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願(宮川典子君紹介)(第二一二三号)
 令和元年06月11日 第198回国会 参議院 内閣委員会 第23号
地方自治法の規定による自治体からの衆・参議院議長,内閣総理大臣,財務,文部科学,厚生労働大臣への意見書.
 令和2年03月25日 兵庫県議会
 令和2年06月25日 東村山市
 令和3年09月03日 山梨県中央市議会
 令和3年09月24日 山梨県上野原市議会
 令和3年09月30日 大月市議会
 令和3年10月21日 奈良県議会
 令和3年12月02日 広島市議会
 令和3年12月09日 大和高田市
 令和4年03月25日 橿原市議会

 

【 子どもの歯列矯正のについての最近の議論】

 

☛ 厚生労働省,文部科学省,財務省(歯列を矯正するための費用

 

第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 和4年4月7日 会議録 動画

 子どもの歯列矯正は将来の疾病予防のために資する

 

第208回国 参議院 消費者問題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月15日 会議録 動画

 子どもの歯科矯正治療の保険適用について

 

第04回国会 子どもの歯科矯正への保険適応の拡充に関する請願(厚生労働委員会 令和3年6月16日採択)

   【請願要旨と処理経過(所管省庁における処理要領)

請願情報

経過

 

第204回国会 衆議院 文部科学委員会 第16号 令和3年5月26日 会議録 動画(3h:10m:30s から)

   児童生徒の歯科矯正に対する保険適用を求め声についての政府の対応について

 

第204回国会 参議院 文教科学委員会 第13号 令和3年5月20日 会議録 動画

   学校歯科健診における歯科矯正の問題点について

 

第200回国会 どもの歯科矯正に保険適応の拡充を求めることに関する請願(厚生労働委員会 令和元年12月)

     【請願要旨

 

 

 ☛ 問い: 良質かつ適切な矯正歯医療を,国民へ格差なく公平に提供できる医療制度はどのようなものか?

専門医制度は誰のため? 本質,国民の健康格差と矯正歯科医療の役割.医療制度の正:

医療としての公平性.健康は人権であるという視点から,すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であり専門職の役割であること.常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.

健康と疾病/病/病気の概念について:

 

 

― WHOによる国際疾病分類 ICD  Version: 02/2022― 歯科矯正領域の疾病 Disease

 

国際疾病分類の第11回改訂版 (ICD-11)は2018年にリリースされ,ICD-DAと統合され,矯正歯科領域における顎顔面,歯・歯列の異常を疾患分類している.プリント版に加えて,Browseによる検索が容易にデジタル化され,疾病概念を説明するコンテンツも記載されている.疫学,臨床,研究目的で,今後の我が国における歯科矯正の疫学調査に有用と思われる. 2022.1から5年程度の移行期間を経て ICD-11は実施される.社会保障審議会 (統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会) において日本語化など検討中

ICDの概要について

ICD-11の国内の公的統計への適用について

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☛ 不正咬合は,以下に分類される.

DA0E.5 Malocclusion
All ancestors up to top
  - 13 Diseases of the digestive system
   - Diseases or disorders of orofacial complex
    - DA0E Dentofacial anomalies
     - DA0E.5 Malocclusion

Description:

WHO_EN: Malocclusion is the atypical relationship between maxillary and mandibular teeth which may interfere with the efficiency of excursive movements of the mandible that are essential for the effective mastication process.

WHO_ZH: 错牙合畸形是上颌和下颌牙齿之间的非典型关系,可能会影响下颌骨漂移运动效率,这对于有效咀嚼过程至关重要。

不正咬合とは,効果的な咀嚼に欠かせない下顎骨の左右・前後の滑走運動効率に影響を与えるような,上下顎の歯の非典型的な位置関係をいう.

 

叢生,捻転,正中離開,移転歯,上顎前突,下顎前突,開咬,正中偏位,交叉咬合,過蓋咬合といった,上下顎の咀嚼運動に影響するような不正咬合を国際疾病分類 K07.0 ~ K07.6, p.69-71 に記載.我国においては,各省庁間において,不正咬合や咀嚼機能という概念(厚生労働省),美容,審美的要素,社会通念上など(財務省),歯列咬合(文部科学省)といった解釈で説明される.国際的な疾病概念からの乖離.国民の要望,医療従事者(歯科医師)との認識の相違もある.わが国独自の社会的・文化的背景,歯科の歴史経過,公的医療保障から歯科矯正が欧州諸国から立ち遅れていることで生じている社会疫学・公衆衛生上の諸問題について知る.

☛ 英国,独逸:歯列咬合の異常を健康に障害を与える程度によって5段階に分類.IOTN

 

 

ICD-11における歯科矯正領域の疾患:

 

 

ICD-10 と ICD-11 の歯科矯正領域における疾病分類のコード対応表

ICD-10 / ICD-DA ICD-11
ClassKindDepthCodeChapterTitleClassKindDepthCodeChapterTitle
category1K07XIDentofacial anomalies [including malocclusion]category1DA0E.Z13Dentofacial anomalies, unspecified
category2K07.0XIMajor anomalies of jaw sizecategory2DA0E.0Z13Major anomalies of jaw size, unspecified顎の大きさの著しい異常
category2K07.1XIAnomalies of jaw-cranial base relationshipcategory2DA0E.113Anomalies of jaw-cranial base relationship顎と頭蓋底との関係の異常
category2K07.2XIAnomalies of dental arch relationshipcategory2DA0E.213Anomalies of dental arch relationship上下歯列弓の位置関係の異常
category2K07.3XIAnomalies of tooth positioncategory2DA0E.313Anomalies of tooth position歯の位置異常
category2K07.4XIMalocclusion, unspecifiedcategory2DA0E.5Z13Malocclusion, unspecified不正咬合,詳細不明
category2K07.5XIDentofacial functional abnormalitiescategory2DA0E.613Dentofacial functional abnormalities歯顎顔面の機能的異常
category2K07.6XITemporomandibular joint disorderscategory2DA0E.813Temporomandibular joint disorders顎関節症
category2K07.8XIOther dentofacial anomaliescategory2DA0E.Z13Dentofacial anomalies, unspecified  
category2K07.9XIDentofacial anomaly, unspecifiedcategory2LD2220Syndromes with dental anomalies as a major feature  

 

ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics (who.int)

ICD-11 Diseases of the digestive system_orofacial complex

 

DA0E Dentofacial anomalies

Parent

Description

A congenital or acquired abnormality in which the dental and oral structures deviate from normal form, function, or position.

Exclusions

DA0E.0 Major anomalies of jaw size

Parent

DA0E.1 Anomalies of jaw-cranial base relationship

Parent

Description
This is a congenital or acquired abnormality in which the portion of the skull that holds the upper jaw deviates from the normal form, function, or position.
DA0E.2 Anomalies of dental arch relationship

Parent

Description
This is a congenital or acquired abnormality in which dental arch relationship deviate from normal form, function, or position.

Coded Elsewhere

DA0E.3 Anomalies of tooth position

Parent

Description
Dental anomalies are craniofacial abnormalities of form, function, or position of the teeth, bones, and tissues of the jaw and mouth. Anomalies of tooth position can be classified in ectopic, transmigration, transposition, rotation.

Inclusions

DA0E.5 Malocclusion

Parent

Description
Malocclusion is the atypical relationship between maxillary and mandibular teeth which may interfere with the efficiency of excursive movements of the mandible that are essential for the effective mastication process.
DA0E.50 Class II division 2 malocclusion

All ancestors up to top

Description
This condition relates to Angle’s classification of occlusion in which the first permanent maxillary molar position is aligned or in an anterior relationship to that of the mandibular firs permanent molar, such that the mesiobuccal cusp of the maxillary molar is mesial to the buccal grove of the mandibular molar and the central incisors are in linguoversion.
DA0E.51 Angle class I malocclusion

All ancestors up to top

Description
The maxillary first permanent molar is in slight distoversion in relation to the mandibular first permanent molar, and the mesiobuccal cusp of the maxillary molar is aligned with the buccal groove of the mandibular molar.

 

 

- - 以下は,ICD-DA 第3版(WHO 1995)に関する記述 - - - - - - - - -

英語版 The Application of the Internationl Cassification of Diseases to Dentistry and Stomatology (ICD-DA 3rd Ed. 1995)

日本語版 国際疾病分類 歯科学及び口腔科学への適用 第3版 平成13年12月(厚生労働省)CD-ROM版

CHAPTER XI

Diseases of the digestive system

Diseases of oral cavity, salivary glands and jaws

K00 Disorders of tooth development and eruption

K01 Embedded and impacted teeth

K02 Dental caries

K03 Other diseases of hard tissues of the teeth

K04 Diseases of pulp and periapical tissues

K05 Gingivitis and periodontal diseases

K06 other disprders of gingiva and edentulous alveolar ridge

K07 Dentofacial anomalies [including malocclusion] 歯顎顔面(先天)異常[不正咬合を含む]

K07.0     Major anomalies of jaw size 顎の大きさの著しい異常 (顎変形症:1990 保険適用) 

Excludes:     acromegaly 末端肥大症<先端巨大症>(E22.0)(顎変形症:1990 保険適用)
                       hemifacial atrophy or hypertrophy
 顔面半側の委縮又は肥大 (Q67.4) 2004保険適用
                       Robin's syndrome
 ロバン症候群 (Q87.0) 2002保険適用
                       unilateral condylar hyperplasia
 片側性下顎頭過形成 (K10.81) (顎変形症:1990 保険適用)
                       unilateral condylar hypoplasia
 片側性下顎頭形成不全 (K10.82) (顎変形症:1990 保険適用)
K07.00       Maxillary macrognathism [maxillary hyperplasia] 大上顎症[上顎過形成]
K07.01       Mandibular macrognathism [mandibular hyperplasia] 大下顎症[下顎過形成]
K07.02       Macrognathism, both jaws 大顎症,上下顎
K07.03       Maxillary micrognathism [maxillary hypoplasia] 小上顎症[上顎低形成]
K07.04       Mandibular micrognathism [mandibular hypoplasia] 小下顎症[下顎低形成]
K07.05       Micrognathism, both jaws 小上顎症[上顎低形成]
K07.08       Other specified jaw size anomalies その他の明示された顎の大きさの異常
K07.09       Anomaly of jaw size, unspecified 顎の大きさの異常,詳細不明

K07.1    Anomalies of jaw-cranial base relationship 顎と頭蓋底との関係の異常(顎変形症:1990 保険適用)

K07.10      Asymmetries 顎の非対称

Excludes:    hemifacial atrophy 顔面半側委縮 (Q64.40) 2004 保険適用 
                      hemifacial hypertrophy
 顔面半側肥大 (Q67.41)  2008 保険適用
                      unilateral condylar hyperplasia
 片側性下顎頭萎縮 (K10.81) (顎変形症:1990 保険適用)
                      unilateral condylar hypoplasia
 片側性下顎頭形成不全  (K10.82) (顎変形症:1990 保険適用)
K07.11       Mandibular prognathism 下顎前突(症)
K07.12       Maxillary prognathism 上顎前突(症) 
K07.13       Mandibular retrognathism 下顎後退(症)
K07.14       Maxillary retrognathism 上顎後退(症)
K07.18       Other specified anomalies of jaw-cranial base relationship その他の明示された顎と頭蓋底との関係の異常
K07.19       Anomaly of jaw-cranial base relationship, unspecified 顎と頭蓋底との関係の異常,詳細不明

☛ わが国において1990年に公的医療保障となった「顎変形症」という保険請求上の病名は,統計法上の疾患コードではK07.

☛ 傷病名「顎変形症」は,顎顔面の変形をともなう疾患群のうち治療法として「顎離断術」が選択された場合に「顎変形症」と呼ばれる.K07 歯顎顔面(先天)疾患[不正咬合を含む]の一部に該当する.

☛ 疾患/傷病への保険給付ではなく,治療方法によって疾病名が決定され保険給付されるため,最善の治療方法の選択する場面において,患者の自律性,無危害原則との衝突がある.特に,ボーダーライン症例の治療方針の決定では,患者の経済的状況が影響を与えることもあり,医療倫理原則上のジレンマが生じる場合がある.公平な術式選択のための医療倫理(詳細な連携医療,治療計画立案,治療同意)が求められる.術式による保険給付ではない保険適用基準の是正を要する.

☛ 顎離断を望まない,歯列改善のみで容貌改善を希望しない場合,あるいはその逆に経済的理由からの顎離断術の選択を主張される場合もあり,医療倫理上のジレンマを実際に経験する.

☛ 公的医療保障の適用基準として:傷病名なのか治療方法なのか?顎離断の根拠,制度上のジレンマについて.

☛ 顎変形症の意義と目的:顔貌,歯列,顎機能などの優先順位.

☛ 医療倫理の4原則:自立尊重,無危害,善行,正義

K07.2 Anomalies of dental arch relationship 上下歯列弓の位置関係の異常我国では疾病とは認められず,公的医療保障の適用外

K07.20      Disto-occlusion 遠心咬合
K07.21      Mesio-occlusion 近心咬合
K07.22      Excessive overjet [horizontal overbite] 過剰なオーバージェット[水平的オーバーバイト]
K07.23      Excessive overbite [vertical overbite] 過剰なオーバーバイト<過蓋咬合>[垂直的オーバーバイト]
K07.24      Openbite 開咬
K07.25      Crossbite (anterior, posterior) 交叉(差)咬合(前歯部,臼歯部)
K07.26      Midline deviation 正中偏位
K07.27      Posterior lingual occlusion of mandibular teeth 下顎歯の後臼歯部舌側咬合<鋏状咬合>
K07.28      Other specified anomalies of dental arch relationship その他の明示された上下歯列弓の位置関係の異常
K07.29      Anomaly of dental arch relationship, unspecified 上下歯列弓の位置関係の異常,詳細不明

K07.3 Anomalies of tooth position 歯の位置異常我国では疾病とは認められず,公的医療保障の適用外

K07.30      Crowding そう<叢>生
                Imbrication インブリケーション<うろこ<鱗>状配列>
K07.31      Displacement 転位
K07.32      Rotation 捻転<回転>
K07.33      Spacing 空隙
                Diastema 歯隙
K07.34      Transposition 移転<位置交換>
K07.35      Embedded or impacted teeth in abnormal position 異常位の埋伏歯 2018 保険適用
                Excludes: embedded or impacted teeth in normal position 正常位の埋伏歯 (K01.0, K01.1)
K07.38      Other specified anomalies of tooth position その他の明示された歯の位置異常
K07.39      Anomaly of tooth position, unspecified 歯の位置異常,詳細不明

☛ K07.2 とK07.3 歯列の位置関係,歯の位置異常は,わが国では疾病として認められていないため公的保険適用外となることから,国民に過剰な費用負担を強いる結果となっている.学校健診で指摘されるが医療を受けられないということから,請願や自治体からの意見書が国会へ多数出ている.

 歯並びの価値について:社会的文化的概念のグローバル化による変遷.国民の要望の変化.医療社会学的視座から.

K07.4 Malocclusion, unspecified 不正咬合,詳細不明我国では疾病とは認められず,公的医療保障の適用外

K07.5 Dentofacial functional abnormalities 歯顎顔面の機能的異常我国では疾病とは認められず,公的医療保障の適用外

Excludes:  bruxism [teeth-grinding] 歯ぎしり (F45.82)
K07.50      Abnormal jaw closure 閉口異常
K07.51      Malocclusion due to abnormal swallowing 異常えん<嚥>下による不正咬合
K07.54      Malocclusion due to mouth breathing 口呼吸による不正咬合
K07.55      Malocclusion due to tongue, lip or finger habits 舌,口唇又は指の習癖による不正咬合
K07.58      Other specified dentofacial functional abnormalities その他の明示された歯顎顔面の機能的異常
K07.59      Dentofacial functional abnormality, unspecified 歯顎顔面の機能的異常,詳細不明

K07.6 Tempromandibular joint disorders顎関節症として保険適用)

K07.60     Temporomandibular joint-pain-dysfunction syndrome [Costen]
               Excludes: current temporomandibular joint dislocation (S03.0) and strain (S03.4) diseases listed in Chapter XIII
K07.61     Clicking (snapping) jaws
K07.62     Recurrent dislocation and subluxation of temporomandibular joint
               Excludes: current injury (S03.0)
K07.63     Pain in temporomandibular joint, not elsewhere classified
               Excludes: temporomandibular joint-pain-dysfunction syndrome [Costen] (K07.60)
K07.64     Stiffness of temporomandibular joint, not elsewhere classified
K07.65     Osteophyte of temporomandibular joint
K07.68     Other specified temporomandibular joint disorders
K07.69     Temporomandibular joint disorder, unspecified

☛  叢生,捻転,正中離開,移転歯,上顎前突,下顎前突,開咬,正中偏位,交叉咬合,過蓋咬合など国際疾病分類 K07.0 ~ K07.6, p.69-71 に記載.我国においては,各省庁間において,不正咬合や咀嚼機能という概念(厚生労働省),美容,審美的要素,社会通念上など(財務省),歯列咬合(文部科学省)といった解釈で説明される.国際的な疾病概念からの乖離.国民の要望,医療従事者(歯科医師)との認識の相違もある.わが国独自の社会的・文化的背景,歯科の歴史経過,公的医療保障から歯科矯正が欧州諸国から立ち遅れていることで生じている社会疫学・公衆衛生上の諸問題について知る.

☛ 英国,独逸:歯列咬合の異常を健康に障害を与える程度によって5段階に分類.IOTN

☛ 医療とは何か.病気/疾病とは何か.国民の幸福.Well-being.感情(喜怒哀楽)と健康

☛ 子どもの歯列矯正の受診についての格差:健康格差対策の進め方

 

 

 

 

 

<子どもの歯の矯正についての議論>

☛ 動画 子どもの歯列矯正は将来の疾病予防のために資する

☛ 動画 子どもの歯科矯正治療の保険適用について

☛ 動画 児童生徒の歯科矯正に対る保険適用を求める声についての政府の対応について(3h10m30sから)

☛ 動画  学校歯科健診における歯科矯正の問題点について

☛ (政府見解....)我が国の医療保険制度においては、基本的に、疾病、負傷等の発生を保険事故として保険給付が行われていることから、歯科矯正については、唇顎口蓋裂等の先天性疾患に起因する咬(こう)合異常や顎変形症による歯列不正など、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象としている

↪ 政府は 「咬合異常,歯列不正」 という概念を疾患としているようであり,「歯の位置異常,歯列関係の異常」 は疾患でないという解釈をしているのかもしれない.

 わが国の歯科界のドグマ.☛ 咬合という概念に関するドグマ

 

☛  医療倫理の問題解決の視点

  1. 目前の診察治療での規範:

  2. 組織(病院・診療所)での規範:

  3. 社会全体でなすべき規範

 健康は人権であるという視点.生権 健康権 生命権 幸福追求権

 すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.

 過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.

 常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.

   Global Health 101, 邦訳 グローバル ヘルス 世界の健康と対処戦略の最新動向

 

歯列矯正の必要性

Need for Orthodontic Treatment in Pupils Aged between 12 and 15 in the Valencian Region (Spin)

IOTN-DHC指標を用いた場合、12歳での治療の必要性は12.6%、15歳では7%であった。IOTN-ACで判断した場合、治療の必要性は12歳で4.3%、15歳で0.9%であった。DAI指標を用いた場合、12歳での必要性は30.1%、15歳では20.9%であった。性別や社会経済状況による矯正治療の必要性に統計的な有意差は認められなかったが、社会経済的背景の低い学童で必要性が高まることが判明した。

Malocclusions and Orthodontic Treatment in a Health Perspective: A Systematic Review

 

 

 

― 8020 と 社会疫学の視点

問い: 8020達成者は,健康で咬み合わせが良い.のは本当か? (因果関係と相関関係の区別

 ☛ 8020達成者は,高所得・高学歴であり,高い生活水準から高度な医療を受けた健康格差の結果であるとの説.

  8020運動の意味と問題点 日本補綴歯科学会雑誌 49巻2号 p.168-178, 2005.

  「8020運動」と社会疫学からみた口腔ケア 朱 珉 国府台経済研究,27(1),133-148 (2017-03-31)

教育年数の長さ(学歴),生活状況と暮らし向きと(所得)と 残存歯数の関係

  良い咬み合わせで自立したシニアへ 8020 No.14 2015

港区(平均所得日本一の地域)の事例

 

社会疫学の視点:(健康に影響を及ぼす因子)

① 生物としての個体
   ↳ 細胞,遺伝子,生活習慣,ライフスタイル

② 個人の社会経済的因子
   ↳ 学歴,所得,家族形態,友人など社会的サポートな

③環境としての社会
   ↳ 所得格差(不平等),医療制度,社会構造などの社会的決定要因

 

 

― 歯列矯正の目的:概念的なもの

日本の専門教育や学会日本政府の見解諸外国の現状
公的医療保障の概念:①疾病/病気を基準とするため「誘因」の除去は自己責任として医療保障の対象とならない.②疾病発生して初めて公的医療保障対象となる.歯・歯列・顎の位置や大きさの異常は,成長発育に関連する疾患,先後天的疾患?

動画 子どもの歯列矯正は将来の疾病予防のために資する
動画 子どもの歯科矯正治療の保険適用について
動画 児童生徒の歯科矯正に対する保険適用を求める声についての政府の対応について

動画  学校歯科健診における歯科矯正の問題点について

 

公的医療保障の概念:健康を基準(WHO1946: physical, mental and social well-being)
生活の質QOL,口腔の健康,機能の改善とし,社会的問題として捉えている.

国際的康概念
国際疾病分類 など
2012 第3版 新しい歯科矯正学 永末書店2019 第6版 歯科矯正学 医歯薬出版 英国矯正歯科学会BOS
米国矯正歯科学会
ドイツ矯正歯科学会
 A 生理的障害
   ① 咀嚼機能障害
   ② 発音障害
   ③ 顎骨の発育に及ぼす障害
   ④ 齲蝕発の誘因
   ⑤ 歯周疾患の誘因
   ⑥ 外傷の誘因
   ⑦ 補綴修復を困難にする
   ⑧ 顎関節症の誘因
 B 心理的障害
 ① 齲蝕の誘因
 ② 歯周疾患の誘因
 ③ 外傷の誘因
 ④ 歯根吸収の誘因
 ⑤ 咀嚼機能障害
 ⑥ 筋機能障害
 ⑦ 顎骨の発育異常
 ⑧ 発音障害
 ⑨ 審美的な欲求と心理的な背景
☛(政府見解....)我が国の医療保険制度においては、基本的に、疾病、負傷等の発生を保険事故として保険給付が行われていることから、歯科矯正については、唇顎口蓋裂等の先天性疾患に起因する咬(こう)合異常や顎変形症による歯列不正など、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象としている.


参考:
☛ 国際疾病分類
☛ 単に疾病であるかどうかより,
☛ 疾病による障害(健康への影響程度(IOTNなど)
      
① 生活の質QOL,Well-being 社会的,幸福,自尊心,対人関係の向上など
② 口腔の健康と機能の改善

    清掃性(歯垢による齲蝕,歯周病)
    外傷の予防
    発音障害


☛ 諸外国では,医療・健康の観点から歯の位置異常の障害程度について述べる.我国では咬合や上顎前突,下顎前突,開咬といった分類の視点から述べる.文化社会的に概念的に異なる視点.

☛ これらの医学的・医療上の問題や誘因としての歯の位置異常を矯正することは,わが国では公的医療保障となっていない.すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること,また過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.

 

 

翻訳:

equality                     平等

inequality                   格差 不平

fairness                     公正

helthcare                保健医療(public health も含む広い活動)

health care system     保健医療制度

medical care syastem 医療制度

 

 

― 誰が主体となって医療を提供すべきか?

― 医療制度は社会的ニーズへの対応にどの程度関与すべきか?

 

健康の社会的決定要因(SDOH: Social Determinants of Health)

 

医療は府が責を提供すべきか?

 イギリス  Yes 82%

 カナダ   Yes 63%

 ドイツ   Yes 56%

 アメリカ  Yes 33%

 日 本   Yes 

 

 関係学会の解等も参考にしながら,中医協において議論を行う.関係省庁において連携し,必要な取り組みを行う.ということではっきりしない状況である

   ↳ 関係学会:日本矯正歯科学会  ↳ 央社会保険医療協議会  ↳ 厚生労働省,文部科学省,財務省,総務省など

☛ 国民の要望等:請願,自治体意見書

 

 

 

① 政府

② 医療提供者(歯科医師,特に矯正歯科専門医)

   保険者

③ 国民

 

 

 

 政府(関係省庁:厚生労働省,文部科学省,財務省,総務省など)

 我が国の医療保険制度においては、基本に、疾、負傷の発生を保険事故として保険給付が行われていることから、歯科矯正については、唇顎口蓋裂等の先天疾患に因する(こう)合異常や顎変形症による歯列不正など、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象としているところであり、歯科医師がこうした疾患を疑って診察、検査等の必要な診療を行った場合も保険給付の対象としている。 保険給付の対象となる歯科矯正の範囲については、これまでも、安全性、有効性等の観点から、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)において議論の上、拡充してきているところであり、引き続き、関係学会の見解等も参考にしながら、中医協において議論を行ってまいりたい。 また、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第十三条第一項の規定により行われる児童生徒等の健康診断(以下単に「健康診断」という。)における咬合異常や歯列不正の検出は、児童生徒等に対し歯科矯正の勧奨を行うことを第一義的な目的とするものではなく、学習面を含む学校生活への配慮やう蝕(しよく)予防など、児童生徒等の将来を見据えた生活指導を行うことを重視すべきものであると考えている。 その上で、健康診断において咬合異常や歯列不正を指摘された児童生徒等に対して、学校と地域の歯科医療機関との間で連携しながら、養護教諭や学校歯科医による健康相談等の充実が図られるよう周知する。 引き続き、関係省庁において連携し、必要な取組を行ってまいりたい。

(注:国際的には咬合異常や歯列不正は疾病であるためこの回答は謎であること.日本語版 国際疾病分類 歯科学及び口腔科学への適用 第3版 平成13年12月(厚生労働省)

 

 ☛ 関係学会の見解を参考にし, + 中医協において議論をする

↳ 関係学会の見解が求められている(45年前の英国に類似する状況.複数学会の乱立.不必要な歯列矯正,治療の質 ⇒ シャンシェフ報告からIOTONの提案の事例)

日本矯正歯科学会:正歯科治療における標準治療の指針(by 日本矯正歯科学会 2022.9.12版)の見解.

3. 疾患としての不正咬合
(ア) 不正咬合は ICD11(世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版の症例分類)において“不正咬合は、効率的な咀嚼に重要な下顎運動を阻害するような正常ではない上下顎の歯の関係”と定義づけられている。また、口腔・顎顔面の異常は先天的、後天的な原因によって生じる形態的、機能的、位置的な歯と口腔の異常な状態と記されている。
(イ) 不正咬合の病態はさまざまであり、顎と歯の形態不全、歯の萌出や顎骨の成長など成育過程の障害、口腔の生理的機能不全などの原因、さらには、う蝕、歯周病、口腔習癖などによっても生じる。そして不正咬合は咀嚼や発語機能、外傷のリスク、顎関節の状態に影響を及ぼすことがある。さらに患者の心理社会的な問題に影響を及ぼす。そのため、不正咬合は患者の QOL を低下させることが知られている2-6)。

↳ 上記の関係学会見解は,「疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象としている」  とする「我が国の医療保険制度における保険給付の原則」に合致している.

 

↳ 不正咬合は疾病である.厚生労働省監修「国際疾病分類」

 

↳ 「審美的要素が大きい」 と理由から,保険給付の対象外としているということの解決策はすでに諸外国にて実施されている.

  ☛ 「審美性のおおきさ」 についての判断し,その判断基準(OTONなど)を関係学会と決定し,多くの国民の要望に沿うように制度正する政策立案が望ましいのではないか?

↳ 子どもの歯科矯正の保険導入について

↳ 現在の我が国の歯科においては,歯科疾患実態調査,国民生活健康調査といった調査は行われているが,健康における社会的決定要因の因子として,被験者の所得格差に関する因子がないため,統計の信頼性についての見直しが必要であろう.8020達成者は,高所得,高学歴であることがいくつかの報告から読み取れる.調査結果による政策は国民の実態とかけはなれたものになっていないか?

 

相田ら: 国民皆保険制度において歯科保険を充実させることが国民の歯の喪失を防ぐことにつながる可能性が示された。日本では英国よりも無歯顎の格差は小さいものの、格差自体は存在するため、今後、より格差を是正できるような社会保障制度を構築していく必要があると考え。

 

↳ そのうえで,中医協にて議論する

 

  ☛ 中医協における歯科のビジョン_令和3年12月10日 歯科医療(その2)

1.歯科医療を取り巻く状況について
2.地域包括ケアシステムの推進について
  Ø 地域における歯科医療機関と施設・行政等係機関との連携
  Ø 医療機関間の連携
  Ø 安心・安全で質の高い歯科医療の推進のためのICTの活用、研修等
3.生活の質に配慮した歯科医療の推進等
  Ø 口腔疾患の重症化予防
  Ø 各ライフステージに応じた口腔機能の管理
  Ø 歯科固有の技術の評価

    資料

    議事録 

 

    ☛ 中医協における議論 令和3年8月4日 歯科医療(その1)について

資料

議事録(以下の歯列矯正に関する発言が確認できるが,その後の歯科医師委員の追加なし)

○間宮委員
ありがとうございます。
小児の口腔機能管理の件、小さい頃から歯医者さんに診てもらって、口の中の健康を維持するのは非常に大事だと私も思っていますので、これは進めていっていただきたいのですけれども、歯科の矯正の治療がまだまだ自由診療であるということが多く見られていて、実際、矯正治療をしたほうがいいという状態の子も、親御さんによってはお金がないので治療できないということもあります。
子供の頃にきちんと歯列とかかみ合わせを矯正することによって、大人になってからも歯の健康を維持するということは非常に重要というか、できると思いますので、なるべく矯正治療を保険でできるようにしていっていただきたいと思います。これは矯正をした経験のある人たちからデータを取って、矯正は有効なのだということが分かれば、保険適用を拡大していく必要があるのかなと。
15歳未満の子供に対する管理料ということではありますけれども、矯正というか、歯の成長、口の成長は、15歳以上も成長するわけであって、成人ぐらいまでは管理が必要と思いますので、その辺りも検討していっていただきたいと思います。

 

参考:中医協を巡る贈収賄事件について

平成14年診療報酬改定における「かかりつけ歯科医初診料」の算定要件の緩和,及び平成16年診療報酬改定における「かかりつけ歯科医再診料」の単価の引上げに係る贈収賄.日歯連事件(にっしれんじけん),中医協汚職事件(ちゅうきょうおしょくじけん)とは,歯科診療報酬を巡って2004年春に日本歯科医師連盟による汚職や,日歯会長選に絡む横領と政界に絡む選挙買収や闇献金が発覚した事件.日歯連幹部6人,中医協委員2人,自民党国会議員2人,自民党派閥会計責任者,地方議員5人ら計16人が起訴され全員の有罪が確定した.この影響により中央社会保険医療協議会は根拠法が改正され,診療側委員を削減し公益側委員の増員するといった改正が行われた.

 

 

 医療提供者(歯科医師,特に矯正歯科専門医,関係学会など)

 ☛ 社会保障の政策選択は,国民がどう生きてどう死ぬか,歯科矯正のあり方の選択であるが,

 ☛ 矯正歯科は自由診療のため保険適用外になります.という政府見解の説明に限定されている.

  保険療自体を行っていない矯正歯科医もおり,経済的理由から医療を享受できない患者への関心が少ない. 

 ☛ 我国の国民(患者)も,医療について理解し,諸外国の現状を知り,自国の制度は国民の要望で変わりうることを理解する.

 

【医療倫理の視点】についてのより深い理解は,われわれ歯科矯正医にこそ必要ではないだろうか?

 目前の診察治療での規範:

 組織(病院・診療所)での規範:

 社会全体でなすべき規範:

・健康は人権であるという視点.生存権 健康権 生命権 幸福追求権

・すべて国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.

・過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.

・常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.

→ 歯列不正・不正咬合と健康: well-being 上の健康格差のある医療領域

健康:肉体的,精神的,社会的,すべてが満たされた状態 well-being

→ 諸外国の現状;ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

 

 

 国民

【国民の声と現状について】

 

平成10年(1998)3月31日 公明党広島県本部と歯科矯正の保険適用を求める会より1万人を超える署名簿を厚生省(小泉厚生大臣)へ提出.
平成10年4月7日 第147回国会 参議院 国民福祉委員会 第5号
そ後の全国の自治体からの意見書
 平成12年03月9日 三鷹市議会
 平成12年03月30日 東京都議会
 平成29年09月15日 甲府市議会
 令和元年06月26日 第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第23号
子供の歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願(宮川典子君紹介)(第二一二三号)
 令和元年06月11日 第198回国会 参議院 内閣委員会 第23号
地方自治法の規定による自治体からの衆・参議院議長,内閣総理大臣,財務,文部科学,厚生労働大臣への意見書.
 令和2年03月25日 兵庫県議会
 令和2年06月25日 東村山市
 令和3年09月03日 山梨県中央市議会
 令和3年09月24日 山梨県上野原市議会
 令和3年09月30日 大月市議会
 令和3年10月21日 奈良県議会
 令和3年12月02日 広島市議会
 令和3年12月09日 大和高田市
 令和4年03月25日 橿原市議会

 

 

【 子どもの歯列矯正のについての最近の議論】

 

☛ 厚生労働省,文部科学省,財務省(歯列を矯正するための費用

 

第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和4年4月7日 会議録 動画

 子どもの歯列矯正は将来の疾予防のめに資する

 

第208回国会 参議院 消費者題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月15日 会議録 動画

 子どもの歯科矯正治療の保険適用について

 

第204回国会 子どもの歯科矯正への保険適応の拡充に関する請願(厚生労働委員会 令和3年6月16採択)

   【請願要旨と処理経過(所管省庁における処理要領)

請願情報

経過

 

第204回国会 衆議院 文部科学委員会 第16号 令和3年5月26日 会録 動画(3h:10m:30s から)

   児童生徒の歯科矯正に対する保険適用を求める声についての政府の対応について

 

第204回国会 参議院 文教科学委員会 第13号 令3年5月20日 会議録 動画

   学校歯科健診における歯科矯正の問題点について

 

第200回国会 子どもの歯科矯正に保険適応の拡充を求めることに関する請願(厚生労働委員会 令和元年12月)

    【請願要旨

 

 

― 誰の歯科矯正治療を優先するべきか?

適用基準と治療評価:

 

 

各国における公的医療保障の適用基準:

IOTN, KIG, HLD(CalMod), Salzman index, PAR Index, ICON

 

治療必要度数(IOTN: Index of Treatmet Need )の背景(イギリスの事例から)

① シャンシエフ報告書(Schanschieff Report)について:

The Schanschieff report. Br Dent J. 1986;160:315.

1980年代中頃までの英国は,複数の矯正歯科団体が乱立し,我国の現状と類似する状況にあった.この当時,不必要な治療が横行したり,不十分な治療結果の患者の存在について,社会問題として提起され,当時の厚生大臣の依頼で1986年に報告書(Schanschieffレポート)がまとめられた.その内容はこの懸念を十分示すものであったのであるが,これに対してそれぞれの各学会は危機感をもち強くその内容を非難した.

(下記文献より引用)1969年から1974年まで、スティーブンはBSSOの名誉書記を務め、当時分裂していたイギリスの矯正歯科専門医の長所と短所を見抜く力を身につけました。彼はBSSOの会長(1976-1977)、コンサルタント矯正医グループの会長(1979-1981)、そして再編成されたBSSOの第2代理事長(1984-1987)に就任しました。この最後の任期中に、Schanschieff Committee of Enquiry into Unnecessary Dental Treatmentの報告書が発表され(1986年12月)、スティーブンは、英国の4つの矯正歯科学会を代表して、その報告書の根拠のない結論の多くに反論する合同委員会の立ち上げに重要な役割を果たしました.

1975年、スティーブンはBSSOの将来について、遠大な視野に立ったディスカッションペーパーを提出し、BSSO評議会に統一を提唱しました。この論文はその後、英国の他のすべての矯正歯科学会にコピーされました。しかし、1986年にSchanschieff Reportが出版されるまで、ほとんど進展はなく、最終的に彼のアドバイスに従って統一する必要性をすべての関係者が確信し、1994年10月2日に統一英国矯正歯科学会の最初の会合で頂点に達しました。1996年、スティーブンは2代目BOS会長に就任しました。

 

イギリスにおける専門職として歯科矯正学の成立.英国矯正歯科学会の役割
The emergence of orthodontics as a speciality in Britain: The role of the British Society for the Study of rthodontics.
Taylor, G.S., Nicolson, M.
Medical History. 51(3): 379-398, 2007

 

British Orthodontic Society, (2002). A History of the British Orthodontic Societies. London: British Orthodontic Society.

 

② シャンシエフ報告書の余波

The development of an index of orthodontic treatment priority
Brook PH, and Shaw WC

European J Orthodontics 11: 309-320, 1989.

Schanschieffレポートを受けて,マンチェスター大学のBrookとShawは,スウェーデン歯科医師会が使用していた治療優先度の指標に基づいて,治療必要度数(IOTN;Index of Orthodontic Treatment Need)を開発した.

IOTNは、不正咬合による歯や周囲組織の完全性に対する潜在的リスクのうち最も高いものに従って、矯正治療の必要性を評価する.1990年までに病院での治療に採用され、2006年からはプライマリーケアでNHS治療を受ける患者を定義するようになった.当初は不正咬合の軽い患者の不必要な治療を避けるために使用されていたが,2006年以降は,医療資源の配分の視点から,治療サービスを公平かつ透明な方法で割り当てる際のふるいとして使用されるようになった.

IOTNの導入により,矯正歯科医は矯正治療の必要性の評価を標準化でき,さらに歯科公衆衛生の見地からも,歯列矯正の供給計画を立てるためのツールと認識されている.

IOTNには、歯科保健要素(DHC)審美要素(AC)の2つのカテゴリーがある.

 

IOTNn

 
GradeLevel of orthodontic treatment need
5Very great
4Great
3Moderate
2Little
1No need

LetterOcclusal trait
aOverjet – recorded to the most prominent part of the most prominent incisor
bReverse overjet with no masticatory or speech problems
cCrossbite
dDisplacement of contact points where teeth deviate from the line of the arch, worst displacement recorded, spacing inline of the arch not included
eOpen bite
fDeep bite
gGood occlusion
hHypodontia
iImpacted due to lack of space ≤4 mm
lPosterior lingual crossbite
mReverse overjet with masticatory or speech problems
pDefects of the cleft lip and palate
sSubmerged deciduous teeth
tPartially erupted teeth, tipped and impacted against adjacent teeth
xPresence of supernumerary teeth

 

IOTN Dental health component54321
Missing teeth5h = extensive hypodontia
+ restorative implications
>1 tooth missing per quadrant requiring pre-restorative orthodontic treatment
5s = submerging primary teeth
5i = impeded eruption/impaction
4h = less extensive hypodontia requiring orthodontic treatment for pre-restorative or space closure   
Overjet5a = OJ >9 mm
5m = ROJ >3.5 mm+ masticatory and speech difficulties
4a = OJ 6.1-9 mm
4b = ROJ >3.5 mm with no masticatory and speech difficulties
3a = OJ 3.6-6 mm + incompetent lips
3b = ROJ 1.1-3.5 mm
2a = OJ 3.6-6 mm + competent lips
2b = ROJ 0.1-1 mm
 
Crossbite 4c = x-bites + >2 mm discrepancy between RCP and ICP
4l = posterior lingual x-bite
3c = x-bite + 1.1-2 mm discrepancy between RCP and ICP2c = x-bite with up to 1 mm discrepancy between ICP and RCP 
Displacement of contact point 4d = contact point displacement >4 mm
4t = partially erupted teeth, tipped and impacted against adjacent teeth
4x = supplemental teeth
3d = contact point displacement 2.1-4 mm2d = contact point displacement 1.1-2 mmMinor irregularity
Overbite (including open bite) 4e = lateral or anterior open bite >4 mm
4f = increased + complete OB + gingival or palatal trauma
3e = lateral or anterior open bite 2.1-4 mm
3f = increased + complete OB with no gingival trauma
2e = lateral or anterior open bite 1.1-2 mm
2f = increased OB >3.5 mm and no gingival contact
 
 

ScoreNeed for treatment
1/2No need
3/4Slight need
5/6/7Moderate need
8/9/10Definite need

 

The aesthetic component of the IOTN developed by Evans and Shaw 1987.

 

 

Who needs orthodontic treatment? Who gets it? And who wants it?
Jawad Z, Bates C & Hodge T
British Dental Journal 218: p.99–103, 2015.

 

 

The development of a guide to borderline orthodontic need
Sampson A, Jeremiah HG, Lai NN & Kirschen R
Progress in Orthodontics 23:13 (2022)

 

 

 

ドイツ口腔保健省の報告書 

IGES Institute (2018) Orthodontic treatment measures
Kieferorthopädische Behandlungsmaßnahmen

 

 

治療品質基準についての各国のガイドライン

ドイツ矯歯科学会

Qualitätssicherung in der Kieferorthopädie
J Orofac Orthop 2019 80:279–288

A+ 優れた結果,いかなる制限もない達成可能な最高の結果.
A  良結果、通は目指すべき
B  望ましい結果が十分に達成されておらず、改善の余地がある。
C  目標とする結果が得られていないため、改善が必要

検査結果の評価
治療計画の評価
治療経過の評価
治療結果の評価
保定中の評価
総合的な評価

 

Ideal treatment timing of orthodontic anomalies—a German clinical S3 practice guideline
J Orofac Orthop (2022) 83:225–232

 

ドイツの KIG 基準 (= Kieferorhopädische Indikationsgruppen、治療の必要性に関するドイツの指標)

 

PAR Index

Evaluation of treatment and post-treatment changes by the PAR Inex
European Journal of Orthodontics, 19(3) 1997: 279–288

 

 

 

― 歯科矯正(歯の位置,歯列異常への医学的介入)に適切な時期

 

ドイツにおける診療ガイドライン

 

 

 

― わが国における歯科矯正の治療品質評価と諸外国との比較

 

諸外国の治療ガイドライン

 ‣ドイツ

 ‣イギリス

 ‣アメリカ

 

日本における不正咬合の発現頻度(IOTN)

日におけるIndex of Orthodontic ThreatmentNeedを用いた不正咬合の疫学調査
Ortod ave-Jpn Ed 2009; 68(3): 142-154

小学6年~中学1年生(新潟県農村部3校と市内中心部1校,首都圏近郊埼玉県1,東京都心部1校,福岡県農村部1校の計7校)の口腔内診査を矯正歯科医3名が実施した.653名のうち同意が得られた497名について実施され,歯列矯正経験者72名を除外し,425名について調査したところ,Grade4以上の歯列矯正の必要となる者は35.5%であった.

 

咬合異常による社会心理学的影響と矯正治療必要度の調査

 

 

― 医療保険の基礎理論

 

医療保険制度の体系

経済的特徴

医師誘発需要理論

情報の非対称

モラル ハザードの問題と対応策

逆選択

 

Ethical considerations regarding the timing oforthodontic treatment
Laurance Jrrod
AJO-DO, 113(1) .85-90,1998.

A. Moral hazard in health insurance: What we kow and how we know it.
Einav, L. and Finkelstein A.
J European Economic Association, 16(4): 957-982, 2018.

Ethics for orthodontists
Wendy E. Mouradian, M. Lena Omnell, and Bryan Williams
Angle Orthod (1999) 69 (4): 295–299.
Abstract: 子どもの最善の利益や未成年者の意思決定における倫理的問題について,口唇口蓋裂の児童で,医学的適応ある矯正歯科治療を受けるため両親が来院しなかったケースを紹介.患者の利益,危害の回避,両親の意思尊重の必要性など,このケースでの倫理的特徴が議論され,米国歯科医師会および米国医師会の倫理規定が参照される.倫理的ジレンマとして,矯正歯科医の子供に対する義務,親の自律性尊重との葛藤.親の自主性は、子供に重大な危害を及ぼす可能性がある時点まで尊重される.歯科矯正医の第一の倫理的責任は,両親ではなく子供に対するものであり,医学的適応ある治療を提供する歯科矯正医は,親の意思決定が問題となる場合,頭蓋顔面チームまたは病院のソーシャルワーカーを関与させるべきである.

Ethical dilemmas in orthodontics
BJMMR, 16(3): 1-8, 2016.
Abstract: 歯科矯正医が子どもの最善の利益を擁護する際に直面しうる倫理的ジレンマの一例としての臨床事例.5歳の女児.乳歯列期の反対咬合を主訴に私のクリニックに来院した.矯正歯科医が考える子どもの利益と、親の自主性を尊重する必要性との間に葛藤がありました。母親は矯正治療の効果に疑問と不安を抱いており、この年齢で娘の治療を開始することに消極的であった。矯正歯科治療において重要な人間的価値があるにもかかわらず,矯正歯科医が治療中に遭遇する倫理的問題は絶え間なく存在する.これらの価値観には、痛みの防止、通常の会話や食事のための口腔機能の維持と回復,患者の身体的外観の維持と回復,および自分自身の健康に対するコントロールと責任の感覚の促進が含まれる場合がある.歯科矯正医が扱うのは主に子供であり,倫理的な問題が発生するのは、特に道徳的な不確かさがある場合です.医学と歯学の倫理的伝統と行動規範は、歯科矯正医が金銭的な取り決めに関係なく患者の利益のために行動すること、そして時には自分自身を危険にさらすことさえも要求している。小児の場合、この患者への関心はさらに顕著となり、患者の意思を尊重するという歯科矯正医の関心と相反する場合がある。

 

 

 

― 我国の法令上における不正咬合,歯列・咬合,歯科矯正,矯正治療の取り扱い

 

所管
官庁
執行法令法令の解釈・補足(説明文・回答・答弁・事務連絡・マニュアルなど)
財務省国税庁所得税法施行令 第207条
(医療費の範囲)
第二百七条 法第七十三条第二項(医療費範囲)規定す政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況にじて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
一 医師又は歯科医師による診療又は治療


歯列を矯正するための費用
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける者の年齢や矯正の目的などからみて社会通念上歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象となりますが、容姿を美化し又は容貌を変えるための歯列矯正の費用は、医療費控除の対象とはなりません(所得税法施行令第207条、所得税基本通達73-4)。
 将来の就職や結婚を考慮しての歯列矯正は、一般的に容姿を美化し又は容貌を変えるためのものであると認められ、この場合の費用は、医療費控除の対象とはなりません。

答弁:第84回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 昭和53年2月9日
 ☛ 子どもの矯正の大部分は医療の対象であり医療費に含める.特殊な例というのは美容のためだけにやる,健康上の理由はないんだということに該当する場合は問題がある.(国税庁直税部長) 


法令解釈通達 法第73条《医療費控除》関係
所得税基本通達73-4
(健康診断及び美容整形手術のための費用)
73-4 いわゆる人間ドックその他の健康診断のための費用及び容姿を美化し、又は容ぼうを変えるなどのための費用は、医療費に該当しないことに留意する。ただし、健康診断により重大な疾病が発見され、かつ、当該診断に引き続きその疾病の治療をした場合には、当該健康診断のための費用も医療費に該当するものとする。



 財務省と厚生労働省の医療概念の議論と考え方:

 ① 容貌の美化とは何か?
     
美容のためだけにやる.健康上の理由はないという歯列矯正はあるか?
 ② 容貌を変えるとは
     
歯並びを治す(歯や歯列の位置異常を矯正する)ことで,結果として容貌(口唇や側貌)は変わる.容貌を変えるだけの歯列矯正はないのではないか? お役人の知識不足や誤解.

 ☛ 答弁などから解釈すると,「美容のためだけや健康上の理由はない」という歯列矯正はどういう場合かと考えると.犬歯を吸血鬼のように出してほしいという奇人や映画俳優がいるかもしれないが,このような場合以外の歯列矯正は,国際疾病分類における歯の位置異常,歯列弓の異常という「疾病」を,正常な位置や大きさへ改善するものである.我国における八重歯はかわいいといった日本の社会的文化的背景のあるものを「疾病」と定義することには,まだ少し社会的な合意が必要かもしれない.

 ☛ 「容姿を美化し,容ぼうを変える」とは,疾病の有無によって解釈が異なる.

 ☛ 疾病による醜の改善(歯・歯列の位置・大きさの異常,腫瘍や外傷による身体の変形や欠損)
     ⇒ 歯科矯正,形成外科

 ☛ 疾病のない状態からの容姿,容ぼうを変える.健康上の理由がない.
     ⇒ 美容医療,美容外科

  歯の位置,歯列弓の異常を国際疾病分類に準じて,疾病と認めるかどうか
  諸外国に準じ,重篤なものから保険適用を拡大する

 例えば,公的医療保障の対象疾患である「顎変形症」の場合,歯や歯列の位置や大きさの異常を改善すると,結果として容貌の改善も得られる(財務省のいう美化という変化が起こる)が,これは疾病からの肉体的・精神的・社会的な健康回復が目的.

    善 ↔ 悪
    正 ↔ 不正
    正常 ↔ 異常
    美 ↔ 醜
    健康:疾病でないこと(日本)
        well-being(WHO, 諸外国)

☛ 公的医療制度に歯科矯正が適用されている欧米諸国では,WHOの健康概念の Social handicap ,すなわち醜状(教育・就労における障害),発音障害を健康の一部と捉えている.我国では健康は疾病でないこととの概念が未だにあり,社会的・精神的な健康概念の立ち遅れ,身体加工に対する歴史的,社会文化的会計から,国民の口腔の健康格差がある.

☛ well-being 幸福追求権,個人の尊厳,社会的健康格差


歯列矯正料の収入すべき時期【照会要旨】
 歯列矯正には通常数年の治療期間を必要としますが、歯科医師が歯列矯正治療を行う場合には、矯正装置の代金及び装着料のほか、その矯正治療の全期間を通ずる基本料金としての性質を有する報酬(以下「基本料」といいます。)を、治療の開始当初において患者に請求し、一括受領している事例が少なくありません。

 基本料及び矯正料(以下「基本料等」といいます。)については、その収入計上時期についてどのように取り扱うべきですか。

【回答要旨】
 基本料等の収入計上時期については、歯科医師と患者の契約の実態に応じ、次のとおりとなります。

 1 矯正装置の装着など一定の役務の提供を行った時に基本料等の全額について請求し受領することとしている場合には、基本料等の全額についてその一定の役務の提供を了した日の収入金額とします。
 2 期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて、所定の基本料等を請求し受領することとしている場合には、その期間が経過した日又はその役務の提供を了した日の収入金額とします。
 3 1及び2以外の場合はそれぞれ次によります。
  イ 支払日が定められている場合には、その支払日とします。
  ロ 支払日が定められていない場合には、その支払を受けた日(請求があった時に支払うべきものとされている場合には、その請求の日)とします。
  ハ ただし、イ及びロのうち、支払日が矯正治療を完了した日後とされているものについては、矯正治療を完了した日とします。


    
文部科学省学校保健安全法
(目的)
第一条 この法律は、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつ学校教の円滑実施との成果の確保に資することを目的とする。
(健康診断の方法及び技術的基準等)
第十七条 健康診断の方法及び技術的基準については、文部科学省令で定める。


学校保健安全法施行令
(検査の項目)
第二条 就学時の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。
六 歯及び口腔の疾病及び異常の有無


学校保健安全法施行規則
第二章 健康診断
第一節 就学時の健康診断
(方法及び技術的基準)
第三条 九 歯及び口腔の疾病及び異常の有無は、齲歯歯周疾患不正咬合その他の疾病及び異常について検査する。

(事後措置)
第九条 学校においては、法第十三条第一項の健康診断を行つたときは、二十一日以内にその結果を幼児、児童又は生徒にあつては当該幼児、児童又は生徒及びその保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいう。)に、学生にあつては当該学生に通知するとともに、次の各号に定める基準により、法第十四条の措置をとらなければならない。
一 疾病の予防処置を行うこと。
二 必要な医療を受けるよう指示すること。
三 必要な検査、予防接種等を受けるよう指示すること。
四 療養のため必要な期間学校において学習しないよう指導すること。
五 特別支援学級への編入について指導及び助言を行うこと。
六 学習又は運動・作業の軽減、停止、変更等を行うこと。
七 修学旅行、対外運動競技等への参加を制限すること。
八 机又は腰掛の調整、座席の変更及び学級の編制の適正を図ること。
九 その他発育、健康状態等に応じて適当な保健指導を行うこと。

第四章 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則
(学校歯科医の職務執行の準則)
第二十三条 学校歯科医の職務執行の準則は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。
二 法第八条の健康相談に従事すること。
三 法第九条の保健指導に従事すること。
四 法第十三条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。
五 法第十四条の疾病の予防処置のうち齲う歯その他の歯疾の予防処置に従事すること。
六 市町村の教育委員会の求めにより、法第十一条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。
七 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する指導に従事すること。
2 学校歯科医は、前項の職務に従事したときは、その状況の概要を学校歯科医執務記録簿に記入して校長に提出するものとする。


別表第
医療の面1(要医療)医師の直接の医療行為を必要とするもの
2(要観察)医師による直接の医療行為を必要としないが、定期的に医師の観察指導を必要とするもの
3(健康)医師による直接、間接の医療行為を全く必要としないもの






学校歯科健診
不正咬合診断とその事後処置の医療義務/医療倫理について








☛ 文部科学省令:健康診断の方法
   ◎ 健康診断
   ◎ 健康診断マニュアル
   ◎ 【事務連絡】児童,生徒,学生
   1 「歯列・咬合」の欄 歯列の状態、咬合の状態について、
      異常なし、
      定期的観が必要、
      専門医(歯科医師)による診断が必要、
     の3区分について、それぞれ 0、1、2で記入する。




☛ 就学時の健康診断マニュアル 平成29年度改訂 日本学校保健会



☛ 学校保健法施行令,施行規則では,不正咬合は疾病として記載されている.
    ↳ 国際疾病分類(ICD-10)でも同様.

    ICD-11 Version: 02/2022
    ICDの概要について
    ICD-11の国内の公的統計への適用について



☛ 健康診断後の事後処置として,21日以内に結果を児童又は生徒本人と保護者へ通知し,結果に基づいた,疾病の予防処置を行い,又は治療を指示し,並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとる.

 
← 具体的には,左記参照.




※ 多くの自治体意見書,国民の請願.日本に生まれた子どもたちの健やかな口腔の健康発育が達成できるよう,「子どもの歯科矯正の保険適用」を実現にはどうすればよいだろうか?



Q:  ①法令上,
   ②公益財団法人日本学校保健会
   ③日本学校歯科医会
  の3者における健康診断の目的の相違,医療従事者の義務と倫理的問題について

    ↳ それぞれの立場での「健康の社会的決定要因」への対応の事例を考える.



学校歯科健診における事後措置の問題点について

(不正咬合の事後処置に対する健康の社会的決定要因への制度是正について)

参考:
  ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)
  ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)
  ☛ 米国において公的医療保障となる「医学的に必要な歯科矯正」の基準


●子どもの歯科矯正への保険適用によって,下記の苦肉の策は解消できるのではないか?

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課
学校歯科健康診断における歯列・咬合の検査について(事務連絡 令和4年3月30日)

学校歯科健康診断における歯列・咬合の事後処置についてのお願い(令和4年4月7日)


学校における健康診断の在り方等に関する意見
学校における健康診断は、家庭における健康観察を踏まえ、学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて、疾病をスクリーニングし健康状態を把握するという役割と、学校における健康課題を明らかにして健康教育に役立てるという、大きく二つの役割がある。このことについて、学校関係者や保護者の間で、共通の認識を持つことが重要である。

(3)歯と口腔(こう<う)の領域
〇歯科検診におけるむし歯や歯肉炎等の結果を踏まえ、歯と口腔(こう<う)の課題だけではなく、子供の健康そのものの保持増進を固るという取組が必要になってくる。すなわち、生活習慣病の予防という観点にも注目し、健康相談や保健指導と関連させながら、歯科検診の更なる充実を図ることが必要となる。歯科検診は「疾病発見型のスクリーニング」ではなく「健康志向(健康増進)型のスクリーニング」であることに意義がある。

〇今後は、歯列咬合(しれつこうごう)及び顎関節についても大きな課題となってくる。これらは、「食べ物を取り込み、食べる」機能「表情をつくり、話す」機能及び「運動を支え、体のバランスをとる」機能等に直接関わっており、生活の質に関係してくるため、学校歯科医はもちろん、教諭、養護教諭をはじめとする教職員にも、その重要性の共有が求められている。



☛ 学校では,心や身体の疾病の通院加療のために,授業を欠席したり早退することへの理解と配慮,個人個人の障害や体の多様性を理解許容し,生徒,先生もお互いに助け合う社会を学ぶしくみ.



児童生徒等の健康診断マニュアル 平成27年度改訂 公益財団法人 日本学校保健会
歯及び口腔の疾病及び異常の有無(p.44~)
p.84:
2章 健康診断時に注意すべき疾病及び異常
健康診断を実施する際に,念頭に置いた方がよい疾患及び異常等について,診療科ごとに記述する.
 5 歯科口腔外科関連
  3  歯列(歯並び)と咬合(噛み合わせ)
 歯が健全な状態にあっても,歯列不正・咬合異常があると,咀嚼や発音(構音)などの口腔の機能は十分に営まれないこともある.また,これらの所見は顔貌を特徴付け,ときに児童生徒の心理状態にも影響を及ぼす.歯列不正・咬合異常の直接的な原因になる爪噛み,指しゃぶりなどの口に関する習癖や,口呼吸の誘因になる鼻咽頭疾患が見られるときは,改善のための対処が必要である.健康診断での歯列不正・咬合異常の検出は,不正・異常を有する児童生徒等に対し矯正治療の勧めをすることが第一義的な目的ではなく,給食などの学校生活や,発音などの学習上影響を及ぼす口腔機能への配慮や,むし歯,歯周病なども発生しやすいなどの将来を見据えての生活指導を重視すべきである.

  ↳ Q:歯科の健康診断を行ったところ歯列不正・咬合異常があった.診断を行った医師・歯科医師は,学校保険安全法施行規則にも記載されているように,患者が必要な医療を受けるように指示する医学的・医療倫理上の義務がある.しかしながら,このマニュアルでは,必要な医療を受けるのではなく,給食でうまく噛めない児童や,発音がうまくできない児童に配慮し,むし歯や歯周病の誘因になることの生活指導を重視すること,矯正治療の勧めをすることが目的ではないと書かれている.

 矯正歯科治療に関する相談,また学校生活での矯正治療中の発音,摂食など機能上の問題などの課題が見られる場合は,養護教諭及び学校歯科医との健康相談を通じての連携が大切であり,学校歯科医はかかりつけ歯科医との連携の橋渡しをすることが重要である.


4. 歯列・咬合の健康診断の判定基準について
歯列咬合に関しては、小学校低学年から中学校にかけては乳歯から永久歯への交換が行われることと顎骨の成長発育が盛んなことから、変化の激しい時期に当たり、短時間で判断するのは容易ではない。

大切なことは、学校における歯科健康診断での判定は、矯正治療の必要性を判断するということではない。将来、口腔の健康、全身の健康にとってどのようなリスクが考えられるかを、学校保健教育の視点から教育し、認識させることが必要である。

 ☛ 日本学校歯科医会の健康診断マニュアルでは,健康診断の目的は治療の必要性を判断することではないと記載されている.これはどういうことであろうか? 以下の問題について議論する.
      ↳ 法令上・医療倫理上の違反や問題点
      ↳ 医師,歯科医師の義務について
      ↳ 児童生徒の社会経済的な健康格差を配慮しているのだろうか?
         ☛ そうであれば,社会的決定要因としての制度是正すべきではないか?

参考:
  ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)
  ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)
  ☛ 米国において公的医療保障となる「医学的に必要な歯科矯正」の基準


歯列・咬合については、子どもの発達段階に応じた保健指導・健康相談を重要視し、口腔機能の発達及びその重要性、家庭との連携の視点から保健調査票の活用等について留意する必要がある。

 0:異常なし
 1:定期的観察が必要
 2:専門医(歯科医師)による診断が必要

矯正治療中のものは判定「1」に含む。

*判定「2」については「保健調査票」の活用により、家庭との連携・個別の保健指導や健康相談を重視し、本人・保護者等の意向により矯正治療を行わない場合等は、経過観察として管理する場合もある.





初等中等教育局
健康教育・食育課
学校歯科健康診断における歯列・咬合の検査について

学校歯科健康診断における歯列・咬合の検査について(事務連絡 令和4年3月30日)


学校医:公益財団法人 日本学校保健会
学校歯科医:公益財団法人 日本学校歯科医会
学校薬剤師:日本薬剤師会 学校薬剤師部会日本学校薬剤師会は2011に学校薬剤師会へ移行






 
公益社団法人 日本学校歯科医会
学校歯科健康診断における歯列・咬合の事後処置についてのお願い(令和4年4月7日)

☛ 非常に長く難解な言い回し文章であり,たとえば英訳は不可能で,具体的に何をお願いしようとしているのか理解が難しい.おそらく,学校健診で不正咬合・咬合異常を指摘された子どもたちの中には,それぞれの経済的理由により,我が国においては未だ公的医療保障の対象となっていない歯列矯正医療へのアクセスが困難な患者が多くいる.こうした事実は,われわれ矯正歯科医は臨床の現場において,日常的に日々接しており大変残念なことであり何とかしたいと思っている.
 例えば,歯列矯正を希望して受診された親子.検査後の診断において50万円~100万円程度の医療費を提示すると,娘:お母さん,やっぱり治療はしたくない.保護者(母):なんで..保護者と娘(中学生)が親子げんかになる.家庭の事情を思う娘と,娘の口元をきれいにしたいと思う母.こういうシーンは何度もあったが,我が国は未だに歯列矯正は美容らしい.
 子どもの権利条約の締結国として,また国民の声,多くの自治体意見書などに声を傾け,ガラパゴス化している我が国の子供の歯科矯正に関する健康格差の是正をお願いしたい.

社会全体でなすべき規範:

・健康は人権であるという視点.生存権 健康権 生命権 幸福追求権 子ども権利条約

・すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること

・過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること

・常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること


参考:
  ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)
  ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)
  ☛ 米国において公的医療保障となる「医学的に必要な歯科矯正」の基準


― 歯列不正は誰の責任か?

  患者
   ・子ども/児童
   ・保護者/親
   ・養護教諭
  医療従事者
   ・学校歯科医
   ・矯正歯科学会
   ・厚生労働省
   ・文部科学省
  ●社会(伝統的な慣行)→ 健康の社会的決定要因
   ・政策立案者(衆議院議員/参議院議員)
 





 学校教育法
第九章 大学
第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
② 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。









② 我が国における歯科矯正学は,社会経済的要因による医療へのアクセスに格差があることから,その成果が国民へ広く公平に提供することができいるとはいえない.所得格差による受診機会の社会的勾配が認められる.
 解決策: 社会的決定要因(医療制度)の是正により,子どもの健康に関する問題(子どもの権利条約など)を解消し,社会経済的な医療アクセスへの不平等を取り払う.
    
総務省 統計法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展び国民生活向上に与するとを目とする。
(定義)
第二条 この法律において「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項に規定する機関又は国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関をいう。
9 この法律において「統計基準」とは、公的統計の作成に際し、その統一性又は総合性を確保するための技術的な基準をいう。
(統計基準の設定)
第二十八条 総務大臣は、政令で定めるところにより、統計基準を定めなければならない。

「疾病、傷害及び死因の統計分類」

 「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。
 わが国では、統計法(平成19年法律第53号。以下「法」という。)第28条第1項の規定に基づき、法第2条第9項に規定する統計基準として、ICDに準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を告示している。 現在、国内で使用している分類は、ICD-10(2013年版)に準拠しており、統計法に基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されている。

疾患コード 060565 顎変形症 K07

国際疾病分類:K07 - 歯顎顔面(先天)異常[不正咬合を含む]

K07.0 - 顎の大きさの著しい異常
 K07.1 - 顎と頭蓋底との関係の異常
K07.2 - 上下歯列弓の位置的関係の異常
K07.3 -
歯の位置異常
K07.4 -
不正咬合,詳細不明
K07.5 - 歯顎顔面の機能的異常
K07.6 - 顎関節障害
K07.8 - その他の歯顎顔面の異常
K07.9 - 歯顎顔面の異常,詳細不明

☛ 統計法では,顎変形症 K07 の大区分の記載.区分詳細の上下歯列弓の位置関係の異常,歯の位置異常,不正咬合については空欄.「傷病名」の分類として総務大臣により定められているが,国際分類との十分な整合性が得られていない.

 

 

 

 地方自治法
第一編 総則
第一条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
第九十九条 普通地公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。
自治体からの意見書:

1998年10月31日に公明広島県本部の方とそれから歯科矯正の保険適用を求める会の方々が一万人を超える署名簿を厚生省に提出して、小泉厚生大臣に快く受け取っていただいた
 平成10年4月7日 第147回国会 参議院 国民福祉委員会 第5号

その後の自治体からの意見書
 平成12年3月29日 三鷹市議会
 平成12年3月30日 東京都議会

 平成29年9月15日 甲府市議会

第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第23号 令和元年6月26日
子供の歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願(宮川典子君紹介)(第二一二三号)

令和元年6月11日 第198回国会 参議院 内閣委員会 第23号

地方自治法(左記)の規定による自治体からの衆・参議院議長,内閣総理大臣,財務,文部科学,厚生労働大臣への意見書.
 令和2年3月25日 兵庫県議会
 令和2年6月25日 東村山市
 令和3年9月3日 山梨県中央市議会
 令和3年9月24日 山梨県上野原市議会
 令和3年9月30日 大月市議会
 令和3年10月21日 奈良県議会
 令和3年12月2日 広島県議会
 令和3年12月9日 大和高田市
 令和4年3月25日 橿原市議会

- - - 各自治体の文面例①

歯科矯正への保険適用に関する意見書

 健康な身体を保つために、歯は重要な働きをしている。しかし、近年子どもたちの嗜好は、固いものより軟らかいものを好む傾向があり、噛むことが少なくなったこともあって、顎の発達が悪く歯並びの悪い子どもが多くなったと言われている。
 乱れた歯並びや不正咬合は、外見の悪さやそれによる心的な影響だけでなく、虫歯や歯周病、顎関節症などの原因にもなり、更には、脳の発達にまで悪い影響を与えると言われている。このような理由から、既に学校の歯科検診に歯並びの項目が設けられたところである。
 また、大人になってから歯並びが悪くなった場合でも、上手に噛めないことにより、食物の消化が悪いなど、健康に様々な影響が現れるため、中年からの歯科矯正の意義を認める歯科医もいる。
 不正咬合は、歯科矯正により、ほぼ 100%治るところである。しかし、歯科矯正で、健康保険が適用されるのは唇顎口蓋裂や顎変形症などの顎の手術を伴う特殊な場合だけで、それ以外の場合は、治療費が一般的に50万円から 100万円と余りにも高額で全額自己負担のため、治療を断念する人も少なくない。
 よって、東京都議会は、政府に対し、国民の健康増進に資するため、医療上の機能回復を目的とする歯科矯正を保険適用の対象とするよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。
 平成12年3月30日
東京都議会議長 渋谷守生
内閣総理大臣 厚生大臣 自治大臣 あて提出

- - - 文面例②

子どもの歯の矯正治療に保険適用を求める意見書

 現在、歯の矯正治療の保険適用範囲は、特定の手術が必要な場合や、特定の疾患に起因するものなどごく狭い範囲に限定されており、原則として保険が適用となっていない。そのため、義務教育である小中学校の健康診断の結果、「要治療」と診断された場合であっても全額自己負担で治療しなければならない。歯並びが悪いと、全身の健康に大きな悪影響を与えることをはじめ、職業選択にも影響が出ることが懸念される。
 一般的に永久歯からの歯の矯正治療には、精密検査で5万円程度、矯正費用は30万円~70万円、毎回の診察には5千円~1万円と、総額で65万円~95万円かかるとされている。このような中、保険適用がされないままでは、経済的理由により子どもの歯の治療ができないという家庭が生じることが指摘されている。
 日本学校歯科医会によると「歯並びが悪いと全身に影響を及ぼすため、健診項目から『歯列・咬合』を外すことはできない」としている。学校健診で要治療となり受診した際に保険が適用されない項目は『歯列・咬合』だけであると、指摘されている。
 東京都歯科保険医協会の調査では、小中学校歯科健診で「要治療」とされた子どもの受診率は47.41%という調査結果が出ている。
 学校健診の結果、「要治療」と診断され、治療の受診結果を学校に提出することが求められているにも関わらず、保険が適用されないということは制度として不整合があると考える。
 よって、美容整形に該当しない子どもの歯の矯正治療に保険適用をすることを求める。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

●●県議会




    
厚生労働省 成育基本法(略称:平成30年12月14日公布)

成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号)

成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推に関す法律施令(令元年政令第百七十号)







成育医療等協議会










健やか親子21(第2次)











成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(令和3年2月)

Ⅰ 成育医療等の提供に関する施策の推進に関する基本的方向
 1 成育医療等の現状と課題
  (少子化の進行及び人口減少)
  (出産年齢の上昇と平均理想子ども数、平均予定子ども数の低下).
  (女性の健康に関する課題)
  (妊産婦の特性と診療における配慮)
  (妊産婦のメンタルヘルス)
  (低出生体重児の割合の増加)
  (子どものこころの問題
     子どもの発達特性,バイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)
  (学童期・思春期における全般の問題
この時期に科学的根拠に基づいた健康に関する正しい知識を身に付けること、自身の心身の健康に関心を持つことは、生涯の健康づくりのための行動変容に向けた大事な一歩となる。こうした観点から、性に関すること、肥満や痩せなど自身の体に関すること
運動や食生活などの生活習慣に関すること、がんに関することなど健康教育の充実
  (10 代における問題
  (食生活等生活習慣に関する課題)
  (妊産婦及び乳幼児における口腔
妊産婦については、ホルモンバランスの変化、嗜好の変化等によって、う蝕や歯周病が進行しやすいため、口腔清掃がより重要となる時期である。また、乳幼児についても、う蝕の予防のみならず、歯周病の初期である歯肉炎予防を行うとともに、しっかりと噛んで食べることができるよう、歯並びや噛み合わせ、口腔機能の観点からの対策等を行うことも重要である。保護者が乳幼児の歯と口の健康を管理することができるようになるためにも、家庭や保育所、幼稚園等において、歯磨きやよく噛むことの重要性についての教育が重要である。
 ☛ 歯,歯列の大きさ・位置異常という疾病による口腔機能の低下に対して歯科矯正の保険適用がない.
     基本的な方針に合致していないため,制度の是正が必要?
     成長過程にある子どもの口腔の成育医療を切れ目なく提供する(国民の健康格差).
     (子どもの歯科矯正の保険適用による経済的負担からの健康格差の解消).


  (児童虐待)
  (父親の孤立)
  (子育て世代の親を孤立させない地域づくり)
  (自然災害時や感染症発生時等における課題)
 2 成育医療等の提供に関する施策の推進に向けた基本的な考え方.
 3 関係者の責務及び役割.
Ⅱ 成育医療等の提供に関する施策に関する基本的な事項.
 1 成育過程にある者及び妊産婦に対する医療.
  (1)周産期医療等の体制 .
  (2)小児医療等の体制.
  (3)その他成育過程にある者に対する専門的医療等.
 2 成育過程にある者等に対する保健 .
  (1)総論
  (2)妊産婦等への保健施策.
  (3)乳幼児期における保健施策
  (4)学童期及び思春期における保健施策.
       しっかりと噛んで食べることができるよう、健全な口腔機能の保持・増進を図る。
   ☛ 上記に同じ 

  (5)生涯にわたる保健施策.
  (6)子育てや子どもを育てる家庭への支援.
 3 教育及び普及啓発
  (1)学校教育及び生涯学習.
  (2)普及啓発
 4 記録の収集等に関する体制等
  (1)予防接種、乳幼児健康診査、学校における健康診断に関する記録の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策
  (2)成育過程にある者が死亡した場合におけるその死亡原因に関する情報の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策
  (3)ICTの活用による成育医療等の施策の推進
 5 調査研究
 6 災害時等における支援体制の整備
 7 成育医療等の提供に関する推進体制等


これからの小児歯科医療のあり方について(日本小児歯科学会)


医政局
歯科保健課
健康日本21(歯の健康)

国民の健康の増進に関する基本的な方向として
①健康寿命の延伸と健康格差の縮小
②生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
③社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
④健康を支え、守るための社会環境の整備
⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣の改善及び社会環境の改善
の5つを掲げ、この5つの方向に沿った 53 項目の具体的な目標を設定

歯・口腔の健康についての5項目は現在歯科保健課で議論しているところらしい.



歯科疾患実態調査
この調査は、わが国の歯科保健状況を把握し、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項及び健康日本21(第二次)において設定した目標の評価等、今後の歯科保健医療対策を推進するための基礎資料を得ることを目的とする.











☛ 「健康格差の縮小」は,健康日本21の基本的方向の最優先課題であるが,歯列矯正を経済的理由から享受できない子供が多い.
⇒ 自治体意見書,請願が多数.
   成育基本法の理念との整合性について






 歯科疾患実態調査
主な調査事項
 1)性別
 2)生年月日
 3)歯や口の状態
 4)歯をみがく頻度
 5)歯や口の清掃状況
 6)フッ化物応用の経験の有無
 7)顎関節の異常
 8)歯の状況
 9)補綴の状況
 10)歯肉の状況
 11)歯列・咬合の状況


果の概要:学童期の被調査者数が少ない(15-19才: 51名,総数でも3,820名).結果については信頼性,バイアスに注意を要する.



健康局
健康課栄養指導室

健康日本21<平成12~24年度>
 健康日本21(歯の健康)PDF

健康日本21(第二次)


健康増進法
第三章 国民健康・栄養調査等
(国民健康・栄養調査の実施)
第十条 厚生労働大臣は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするため、国民健康・栄養調査を行うものとする。


健康増進法施行規則
第三章 国民健康・栄養調査等
(国民健康・栄養調査の実施)
第十条 厚生労働大臣は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするため、国民健康・栄養調査を行うものとする。
(国民健康・栄養調査の調査事項)
第一条 健康増進法(平成十四年法律第百三号。以下「法」という。)第十条第一項に規定する国民健康・栄養調査は、身体状況、栄養摂取状況及び生活習慣の調査とする。
4 第一項に規定する生活習慣の調査は、調査従事者が、被調査者ごとに、厚生労働大臣の定める調査票を配布し、次に掲げる事項が記入された調査票の提出を受けることによって行う。
六 歯の健康保持習慣の状況











令和元年 国民健康・栄養調査報告2019(令和2年12月)
第98表 歯の本数の分布(p.222)
-年齢階級別,人数,割合-総数・男性・女性,20歳以上
第99表 咀嚼の状況(p.223)
-年齢階級別,人数,割合-総数・男性・女性,20歳以上
第100表 食べ方や食事中の様子(p.224)
-年齢階級別,人数,割合-総数・男性・女性,20歳以上

 ☛ 


保険局
医療課
医療法
健康保険法
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)
(診療の具体的方針)
第二十条 医師である保険医の診療の具体的方針は、前十二条の規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。

九 歯科矯正
歯科矯正は、療養の給付の対象として行つてはならない。ただし、別に厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。








歯科矯正
は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において行う別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)又は別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において行う顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)の手術の前後における療養に限り保険診療の対象とする。

<別に厚生労働大臣が定める場合>
  別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
  前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)平成30年(2018)改訂により追加, 令和4年(2022)改訂により「小臼歯」を追加.
  顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)平成2年(1990)改訂により追加,平成8年(1996)より顎口腔機能診断施設基準が追加.

令和4年度診療報酬改定の概要【歯科】,p.77
 歯科矯正治療は不正咬合(歯並びが悪い)患者に対する治療であるが、咀嚼機能の改善と同時に、審美的(美容的)要素も大きいため、原則的に保険給付外となっている
 ただし、疾患に起因する咬合異常が認められる場合3歯以上の永久歯萌出不全又は顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)に限り、保険給付の対象としている。

 生活保護法
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。



 
 歯科口腔保健の推進に関する法律(通称:歯科口腔保健法)
(的)
第一条 この法律は、口腔の健康が国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしているとともに、国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取組が口腔の健康の保持に極めて有効であることに鑑み、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持(以下「歯科口腔保健」という。)の推進にし、基本理を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、歯科口腔保健の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的に推進し、もって国民保健の向上に寄与することを目的とする。



 
    
外務省 児童の権利条約(児童の権利に関する条約)

第1部
第1条
 この条約の適用上、児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。

第24条
1 締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
2 締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
(a) 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
(b) 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。
(c) 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と闘うこと。
(d) 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
(e) 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
(f) 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。

3 締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。

4 締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。









 

こども家庭庁こども政策の基本理念
全てのこどもの健やかな成長、
Well-beingの向上

常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策をわが国社会の真ん中に据えて(「こどもまんなか社会」)、こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全で後押し。

〇そのための新たな司令塔として、こども家庭庁を創設。


こども家庭庁設置法
第一章 総則
 第二章 こども家庭庁の設置並びに任務及び所掌事務等
  第二節 こども家庭庁の任務及び所掌事務等
(任務)
第三条 こども家庭庁は、心身の発達の過程にある者(以下「こども」という。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務とする。
2 前項に定めるもののほか、こども家庭庁は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。
3 こども家庭庁は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。

(所掌事務)
第四条 こども家庭庁は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 小学校就学前のこどもの健やかな成長のための環境の確保及び小学校就学前のこどものある家庭における子育て支援に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること。
二 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)の規定による子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援に関すること(同法第六十九条第一項の規定による拠出金の徴収に関することを除く。)。
三 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する認定こども園に関する制度に関すること。
四 こどもの保育及び養護に関すること。
五 こどものある家庭における子育ての支援体制の整備並びに地域におけるこどもの適切な遊び及び生活の場の確保に関すること。
六 こどもの福祉のための文化の向上に関すること。
七 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の福祉の増進に関すること。
八 第四号から前号までに掲げるもののほか、こども、こどものある家庭及び妊産婦その他母性の福祉の増進に関すること。
九 こどもの安全で安心な生活環境の整備に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること。
十 独立行政法人日本スポーツ振興センターが行う独立行政法人日本スポーツ振興センター法(平成十四年法律第百六十二号)第十五条第一項第七号に規定する災害共済給付に関すること。
十一 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成二十年法律第七十九号)第八条第一項に規定する基本計画の作成及び推進に関すること。
十二 こどもの保健の向上に関すること(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の規定による小児慢性特定疾病医療費の支給等に関することを除く。)。
十三 妊産婦その他母性の保健の向上に関すること。
十四 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号)第十一条第一項に規定する成育医療等基本方針の策定及び推進に関すること。
十五 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(平成三十一年法律第十四号)の規定による一時金の支給等に関すること。
十六 こどもの虐待の防止に関すること。
十七 いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)の規定によるいじめの防止等に関する相談の体制その他の地域における体制の整備に関すること。
十八 前二号に掲げるもののほか、こどもの権利利益の擁護に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。
十八の二 こども基本法(令和四年法律第七十七号)第九条第一項に規定するこども大綱の策定及び推進に関すること。
十九 少子化社会対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)第七条第一項に規定する大綱の策定及び推進に関すること。
二十 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)第八条第一項に規定する子ども・若者育成支援推進大綱の策定及び推進に関すること。
二十一 前号に掲げるもののほか、子ども・若者育成支援(子ども・若者育成支援推進法第一条に規定する子ども・若者育成支援をいう。次項第三号において同じ。)に関する関係行政機関の事務の連絡調整及びこれに伴い必要となる当該事務の実施の推進に関すること。
二十二 子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第八条第一項に規定する大綱の策定及び推進に関すること。
二十三 大学等における修学の支援に関する法律(令和元年法律第八号)の規定による大学等における修学の支援に関する関係行政機関の経費の配分計画に関すること。
二十四 こども、こどものある家庭及び妊産婦その他母性に関する総合的な調査に関すること。
二十五 所掌事務に係る国際協力に関すること。
二十六 政令で定める文教研修施設において所掌事務に関する研修を行うこと。
二十七 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づきこども家庭庁に属させられた事務
2 前項に定めるもののほか、こども家庭庁は、前条第二項の任務を達成するため、行政各部の施策の統一を図るために必要となる次に掲げる事項の企画及び立案並びに総合調整に関する事務(内閣官房が行う内閣法(昭和二十二年法律第五号)第十二条第二項第二号に掲げる事務を除く。)をつかさどる。
一 こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向けた基本的な政策に関する事項
二 結婚、出産又は育児に希望を持つことができる社会環境の整備等少子化の克服に向けた基本的な政策に関する事項
三 子ども・若者育成支援に関する事項
3 前二項に定めるもののほか、こども家庭庁は、前条第二項の任務を達成するため、内閣府設置法第四条第二項に規定する事務のうち、前条第一項の任務に関連する特定の内閣の重要政策について、当該重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務をつかさどる。













u 妊娠前から、妊娠・出産、新生児期、乳幼児期、学童期、思春期、青年期の一連の成長過程において、良質かつ適切な保健、医療、療育、福祉、教育を提供。

u 安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら、様々な学びや体験ができ、幸せな状態(Well-being)で成長できるよう、家庭、学校、職域、地域等が一体的に取り組む。

 教育、福祉、保健、医療、雇用などに関係する機関や団体が密接にネットワークを形成し支援。18歳など特定の年齢で一律に区切ることなく、こどもや若者が円滑に社会生活を送ることができるようになるまで伴走。

 

 

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以下は,各国の歯科医療における公的保険政策に関するもの.

 

 

―  日本における歯科矯正の議論:

 

日本:

国会会議録検索システム :昭和22年(1947)7月7日の第1回 衆議院 厚生委員会 第2号~

第75回国会 衆院 社労働委員会 第24号 昭和50年6月26日

歯科医療に関する諸問題について

医の倫理の荒廃

差額徴収 診療拒否 領収書

マル秘文書

脱保険の問題  など

 

 

子もの歯矯正のついて の議論

 ☛ 厚生労働省,文部科学,財務省(歯列を矯正するための費用

第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和4年4月7日 会議録

 ☛ 動画 子どもの歯列矯正は将来の疾病予防のために資する

第208回国会 参議院 消費者問題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月15日 会議録 

 ☛ 動画 子ども歯科矯治療の保険適用について

第204回国会 子どもの歯科矯正への保険適応の拡充に関する請願(厚生労働委員会 令和3年6月16日採択)

  【請願要旨と処理経過(所管省庁における処理要領)

 請願要旨
 子どもの歯や口腔の健康は、発育期における顎・顔面の骨格形成や咀嚼、発声(構音)、表情の発出等、良好な状態に維持・増進される必要がある。しかし、学校歯科健診という法定健診で疾患として指摘された咬合異常(不正咬合)は、健診結果の指示に従い受診しても保険適用外の治療となり放置されることも多い。学校健診には歯科だけでなくほかの健診もあるが、歯科のように保険適用外となる治療などな。さらに、保険適用外となっている歯科矯正については、初診料や相談料はもちろんのこと必要となる検査についても保険が適用されないため、受診すらできない子どもたちがいる。学校保健安全法による健診の場で指摘されたにもかかわらず対応できないというのは法の趣旨に反するものである。 ついては、子どもの歯科矯正に対する保険適用基準を拡充及び検討・実施されたい。
処理経過(所管省庁における処理要領)
【主な所管省庁:厚生労働省】
 我が国の医療保険制度においては、基本的に、疾病、負傷等の発生を保険事故として保険給付が行われていることから、歯科矯正については、唇顎口蓋裂等の先天性疾患に起因する咬(こう)合異常や顎変形症による歯列不正など、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象としているところであり、歯科医師がこうした疾患を疑って診察、検査等の必要な診療を行った場合も保険給付の対象としている。 保険給付の対象となる歯科矯正の範囲については、これまでも、安全性、有効性等の観点から、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)において議論の上、拡充してきているところであり、引き続き、関係学会の見解等も参考にしながら、中医協において議論を行ってまいりたい。 また、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第十三条第一項の規定により行われる児童生徒等の健康診断(以下単に「健康診断」という。)における咬合異常や歯列不正の検出は、児童生徒等に対し歯科矯正の勧奨を行うことを第一義的な目的とするものではなく、学習面を含む学校生活への配慮やう蝕(しよく)予防など、児童生徒等の将来を見据えた生活指導を行うことを重視すべきものであると考えている。 その上で、健康診断において咬合異常や歯列不正を指摘された児童生徒等に対して、学校と地域の歯科医療機関との間で連携しながら、養護教諭や学校歯科医による健康相談等の充実が図られるよう周知する。 引き続き、関係省庁において連携し、必要な取組を行ってまいりたい。

請願情報

経過

第204回国会 衆議院 文部科学委員会 第16号 令和3年5月26日 会議録

 ☛ 動画 児童生徒の歯科矯正に対する保険適用を求める声についての政府の対応について

第204回国会 参議院 文教科学委員会 第13号 令和3年5月20日 会議録

 ☛ 動画

 

第200回国会 子どもの歯科矯正に保険適応の拡充を求めることに関する請願(厚生労働委員会 令和元年12月)

  【請願要旨

 

 ☛ 疾病,負傷/病気の概念 ↔ 健康の増進とは

 ☛ 日本と欧米諸国における健康概念・医療目的の違いを理解する.

健康の定義は1946年に制定された.その後,英国では1947年に,米国では1948年に,歯列矯正は公的医療制度や資金投入すべき疾患に用された.Health is a state of complete physical, mental and ocial well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

→ 日本においては,医療保険の給付は疾病・負傷に対するものに限定するという見解がが政府よりなされているが,学会の見解等も参考にしながら議論を行ってゆくとの回答.

→ 欧米では,well-being(WHO)肉体的・

→ UHC と 公衆衛生,グローバルヘルスの視座:

例えば,疾病・負傷でない保険給付として:

禁煙(2006):習慣ではなく依存症と診断し病気と捉えた.

肥満

不妊治療(2022):不妊治療の経済的負担の軽減を図るため.子供を持ちたいという方々の気持ちに寄り添い,少子化に対処し、誰もが安心できる社会保障制度を構築するという理由で保険適用が実現されたことが政府方針に記載されている.43才未満.人工授精・体外受精・顕微授精・胚培養・胚凍結・胚移植.

健康は人権であること.すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること,また過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること Global Health 101, 邦訳 グローバル ヘルス 世界の健康と対処戦略の最新動向

歯の位置異常,不正咬合による口腔衛生の健康格差.疾病,負傷と保険給付の概念 → 健康(肉体的,精神的,社会的)

 

政府見解出典:第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和4年4月7日 会議
    第208回国会 参議院 消費者問題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月15日 会議
    京都新聞(2021年10月14日)
    請願要旨と処理経過(所管省庁における処理要領)
    中央社会保険医療協議会 総会 第485回議事録(2021年8月4日)
☛ 対策
歯科矯正が保険適用にならない理由 ①
公的医療保険は、疾病や負傷に伴う療養に給付するもの.歯科矯正は見た目などの審美的な要素
含まれるので、原則として適用外にしている

 ☛ 叢生,捻転,正中離開,移転歯,上顎前突,下顎前突,開咬,正中偏位,交叉咬合,過蓋咬合などは疾病であること.WHO「国際疾病分類 歯科学及び口腔科学」 にて コード分類(K07.0 ~ K07.6, p.69-71 )され,口腔(歯と顎)の 疾病 Disease として国際的に認知されている(厚生労働省翻訳).我国の歯科矯正の学問体系,審美的要素があるという理由から公的医療保険から除外されている社会文化的背景,経過を知る.

 ☛ 病気とは何か.医療とは何か.国民の幸せ.Well-being.病気と文化

 ☛ 不妊治療,禁煙指導など:病気の概念の変化と捉え方,国民の幸福とは何かの原点へ
   well-being
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態 well-being にあること)
   ↪ 国民の経済的負担,国民の幸福追求権,口腔の健康格差の是正

歯科矯正が保険適用にならない理由 ②
医療費の膨張で保険財政が厳しさを増していることも、保険適用外にしている

 ☛ 健康は人権であること.すべての国民に負担可能な費用で公平な医療サービスを提供すること,過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護すること,健康格差の是正は国家の義務であること
 ☛ 国民医療費の概況(令和元年2019年度)
    ↪ 歯科診療医療費は総医療費の 6.8%,保険財政上の影響は下記.
 ☛ 歯列不正の改善による歯周病予防,健康増進など?

 ☛ 適用範囲,制度設計からの試算.国民の口腔の健康格差の是正

歯科矯正が保険適用にならない理由 ③
歯科矯正に保険を適用した場合の費用を試算したデータはない

 ☛ 例;平野吉子:歯並びの歯科矯正治療への医療保険適用の検討―健全な永久歯列をめざした予防的医療のミクロ経済分析 大阪府立大學經濟研究. 2009, 55(1), p.101-119
   諸外国から


歯科矯正が保険適用にならない理由 ④
今後どうしていくかは、関係学会の意見も踏まえて検討していく余地がある

  ☛ どうしていくか・・・・・> 医療倫理上,健康格差の是正,幸福追求権
     関係学会からの意見
     歯科界の自由診療に対する歴史
     ↪ プロフェッショナリズム.医療と社会との契約の基礎.医師の利益より患者の利益を優先すること.


歯科矯正が保険適用にならない理由 ⑤
保険給付の対象となる歯科矯正の範囲については、これまでも、安全性、有効性等の観点から、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)において議論の上、拡充してきているところであり、
引き続き、関係学会の見解等も参考にしながら、中医協において議論を行ってまいりたい

 
 ☛ 第485回中央社会保険医療協議会にて,子どもの歯科矯正の保険適用についての要望発言が間宮委員からあるが議事録では全く議論されず終了.上記④の関係学会の意見待ちかと思われる.

  ☛ 我国の歯科矯正医療は,ごく一部の疾患を除くと公的にも民間にも医療保障制度がなく,国民は過大な経済的負担を強いられており,OECD諸国でも特異な国である.口腔の健康格差(歯列矯正),公的医療制度の是正


 

☛ 今後の課題:工程表,実態調査,ガイドライン,施設基準,制度設計(診療の流れと適用範囲:欧州諸国)

 

 

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Oral health care in Europe: Financing, access and provision

OECD加盟国の保健医療費の状況(2018年)

OECD Health Statics 2021

OECD Health Statics 202

The state of oral health in Europe. Report commissioned by The Platform for Better Oral Health in Europe

OECD health Working Papers No. 90 (2016) How OECD health systems define the range of good
and services to be financed collectively

6.6. 健康と美容のフロンティアである介入の範囲

129. 健康と美容のフロンティアに位置する治療がいくつかある。美容整形は一般に保険適用外である。しかし、場合によっては、再建手術や形成手術は「美容」とはみなされず、適用される可能性がある(例:けがの結果を修正する手術、乳房切除後の再建、唇裂や口蓋裂など特定の先天性欠損を治療するために必要な手術など)。乳房再建に関連する OECD 諸国の慣行は、均質ではない。歯列矯正治療も、医療上の必要性と美容上の目標との間の境界線が、少なくとも一般人の観点からは曖 昧である例である。

 6.6.1. 乳房再建

130. 両側および対側の乳房切除術は、がん治療の一環として行われることがあるが、近年、家族歴および/またはBRCA1/BRCA2の疾患原因となる変異を有する高リスク女性の間で予防医療として用いられることも多くなっている。

131. 乳房切除後、切除した乳房の形や外観を再建するために乳房再建手術が行われることがあり、OECD諸国では一般に乳がん治療の不可欠な一部として乳房再建手術が行われている。具体的なインプラントの種類や必要条件は国によって異なるが、韓国を除くほとんどの国で、この手術は患者に対して公的に保険が適用されている。しかし、予防的リスク軽減のための乳房切除術とそれに続く乳房再建術は、一部の医療制度(例えば、米国では保険契約により異なる)でのみカバーされている。

132. 乳房再建を国別に評価するHTAは一般に行われていない。しかし、数年前、乳房再建手術の5つの方法を比較したアメリカの研究では、自家組織の使用は費用対効果が高く、インプラントを使用した方法はそうでないことがわかった(Grover et al.、2013)。オランダでは、従来から保険適用されている人工乳房の挿入術よりも、2015年に条件付き適用が認められた自家脂肪移植法の使用に関して、今後数年間データを収集し、費用削減の度合いを検証する予定である。

 6.6.2. 歯列矯正治療

133. 歯列矯正治療は、混み合った歯や曲がった歯の位置を矯正し、歯へのダメージや歯や顎の異常な発達を防ぐことを目的としている。OECD 加盟国のうち 12 カ国(ベルギー、チェコ、フィンランド、フランス、ギリシャ、ハンガリー、 アイスランド、日本、ルクセンブルグ、ノルウェー、ポーランド、スイス、トルコ、イギリス)は、 矯正歯科治療に一部保険を適用している。ベルギーでは9歳、ポーランドでは12歳、フランスでは16歳、フィンランドとルクセンブルグでは18歳、ノルウェーでは20歳と、年齢制限の異なる子供たちに適用されることがほとんどである。ハンガリーでは、顔面の奇形、癌、外傷などの病状に限定されており)、日本では手術が必要な重篤な症例に限定されている。カナダでは、歯科矯正治療は一部の州と一部の民間医療保険プランでのみカバーされています。

Table A.16 Coverage of interventions which are at the frontier between health and cosmetics: Orthodontics

Table A.17. Coverage of dental care and prosthesis

 

 

 

― 子どもの歯科矯正への公的医療保障の国際比較

 

  ☛ 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国)

 

 

英国:  イギリスの歴史

The healthcare systems and provision of oral healthcare in European Union member states. Pat 1: cmparison of systems and withthe United Kingdom. British Dental Journal volume 227 paes305–310 (2019)

イギリス政府の運営する公的保険医療制度(NHS, National Health Service)は,税収などによる一般財源から賄われているため,医療機関を原則無料で利用可能(処方薬,歯科,眼科検診を除く).イギリス国民以外,以下の条件を満たす場合は利用できる.

・ 6か月以上イギリスに合法的に滞在することが可能なビザを取得している学生

・ ワーキングビザ(YMS)など働く上で合法的に滞在することが可能な方

・ 永住目的(パートナーシップビザ、結婚ビザなど)で移住する方。

歯科治療については,4つの価格帯に分類され,歯列矯正はBand 3: £282.80(約43,000円)を支払うことで治療を受けることができる.

NHS: Braces and orthodontics

歯列矯正は18歳未満は無料だが,治療の必要性はIOTNによってGrade 1~5に分類評価され,Grade3以上は健康上の理由としてNHS治療が適応される.

 

What is the value of orthodontic treatment?
British Dental Journal vol. 218, p185–90, 2015.

 Dental health / psychological well-being / Social well-being からの価値

 

Complexities associated with orthoontic services in the National Health Service
British Dental Journal volume 212, pageE5 (2012)

 

Socioeconomic disparities in orthodontic treatment outcomes and expendiure on orthodontics in England’s state-funded National Health Service: a retrospective observational study. J. Price, et al. BMC Oral Heath 17: 123- (2017)

 

NHS England Guides for commissioning dental specialties- Orthodontics

Equality and Health Inequalities Statement: 歯列矯正は,健康上の平等を達成するためのイギリス医療保険制度の核心として,また健康のみならず患者の心理社会的側面におけるwell-beingを改善する医療である.

 

 

 

 

 

Grade 1 is almost perfection

 

Grade 2 is for minor irregularities such as:

● slightly protruding upper front teeth

● slightly irregular teeth

● minor reversals of the normal relationship of uppr ad lwerteeh which do not interfere with noral function.

 

Grade 3 is for greater irregularities which normally do not need treatment for health reasons.

● upper front teeth that protrude less than 4 mm more than normal

● reversals of the normal relationship of upper teeth hich only interfere with normal function to a minor degree; by less that 2 mm.

● irregularity of teeth which are less than 4 mm out of line

● open bites of less that 4 mm

● deep bites with no functional problems

 

Grade 4 is for more severe degrees of irregularity and these do require treatment for health reasons.

● upper front teeth that protrude more than 6 mm

● reversals of the normal relationship of upper teeth which interere with normal function greater than 2 mm

● lower front teeth that protrude in front of the upper more than 3.5 mm

● irregularity of teeth which are more than 4 mm out of line

● less than the normal number of teeth (missing teeth) where gaps need to be closed

● open bites of more than 4 mm

● deep bites with functional problems

● more than the normal number of teeth (supernumerary teeth)

 

Grade 5 is for severe dental health problems

● when teeth cannot come into the mouth normally because of obstruction by crowding, additional teeth or any other cause.

● a large number of missing teeth.

● upper front eeth that protrude more than 9 mm

● lower front teeth that protrude in front of the upper more than 3.5 mm and where there are functional difficulties too

● cranio-facial anomalies such as cleft lip and palate.

 

待機リストが長いためこれを避けたい場合や,無料のNHS治療を受ける資格がない場合は,NHS以外のプライベートクリニックでの治療を選択できる.

 

NHSの7つの憲章

・ 万人への普遍的なサービス提供

・ 利用者の支払い能力ではなく、臨床的必要性に基づいた医療

・ 技術・専門性において高いスタンダードをめざす

・ すべての患者の心に届くサービスをめざす

・ 関連する患者・地方コミュニティ・市民全員らと、組織を超えて連携す

・ 納税者から得た原資を、最も高品質・効率的・公平・持続可能に活用する

・ NHSのサービスは市民・コミュニティ・患者への説明責任を果たせるものあること

 

市民の義務として,以下が規範が求められる.

・ 市民は自分自身および家族の健康に関心を持ち、責任を持つべきである

・ 市民はNHS制度へのアクセス拠点となるGP医に登録すべきである

・ NHSスタッフおよび他の患者へ敬意を払うべきである(暴力行為は起訴・診療拒否される)

・ 自己の状況や健康状態は正確に申告すべきである

・ アポイントメントを守り、キャンセルは常識的に行うべきである。そうでなければ最長の待ち時間にもなりえる

・ 者は同意したならば治療手段に従い、それが難しい場合はそれをスタッフに告げるべきである

・ ワクチン接種などの公衆衛生プログラムに参加すべきである

・ 臓器提供に関する本人意思を表示するべきである

・ 受けた治療や病状変化について、副作用などの良い面も悪い面もフィードバックを行うべきである(匿名のフィードバック手法が提供される)

参考: 澤憲明氏の記事「英国のお医者さん」

 

1948 Orthodontic treatment included in the provisions of the National Health Service Act

1986 Occlusal Index Committee set up in the aftermath of the 'Committee of Enquiry into Unnecessary Dental Treatment' recommends the ntroduction of orthodontic indices for NHS treatment

1990 Department of Health agrees to establish a working party to report on all aspects of orthodontic treatment

1992 Department of Health review of UK Orthodontics (SDAC Report) recommends training of orthodontic auxiliaries ERASMUS proposals published by the European Orthodontic Society

1993 All orthodontic societies, associations and groups agreed to unification after balloting their members at their AGMs

1994 Formation of Orthodontic Nurses Group (ONG) The 4 UK Orthodontic Societies merge to form the British Orthodontic Society (BOS)

1995 Chief Dental Officer recommends introduction of specialist registration (Mouatt Report)

1996 Joint Accord of Royal Colleges, General Dental Council and UK education bodies to establish specialist dental lists

1998 Orthodontic specialist list established

2006 Index of Orthodontic Treatment Need applied to all NHS funded treatment

 

 

フランス:  フランスの歴史

The healthcare system and the provision of oral healthcare in EU Member States: France British Dental Journal volume 220, pages197–203 (2016)

 

フランスの医療では,社会保険制度によるユニバーサルヘルスケアが達成されており,その所管はフランス厚生省であ.公立院,非営利団体による病院(公的医療と提携している),私的営利病院という3種類の病院が存在する.現在の医療制度は1945年に創設の制度をもとにしており、それに様々な変更が加えられて運営され,法的な強制保険制度とされ、市民はすべて保険料を納めなければならない.

2000年の世界保健機関調査において、フランスは世界の医療制度の中でも総合的最善な医療(close to best overall health care)を提供していると評価されている.

医療費の70%は強制加入である国民健康保険から還付され,自己負担は30%となるが,この30%は任意の保険制度に加入することで100%支払いができる.もちろん国民健康保険(強制)と任意保険への支払いは必要である.16歳までの歯列矯正にも適用されるので,治療が継続されている場合3年間有効となる.一般的な場合の歯列矯正治療では25万円程度が自己負担になるが,この部分も任意保険でカバーされることもある.

 

2018 French dental contracts: On the road to achieving universal dental health coverage?
Health Policy, 124(8): p.781-786, 2020.

 

La protection universelle maladie(PUMa)普遍的医療保障

 

フランス政府の社会保障制度について:

 

 

 

 

歯列矯正:

フランス連帯・保健省 Le Ministère des Solidarités et de la Santé 2017年6月21日に改称.

 

Impact of social and economic characteristics on orthodonti treatment among children and teenagers in France. Gema A, Kaminski M, NabetC. ommnit Dent Oral Epidemiol. 2010 Apr;38(2):171-9. DOI: 10.1111/j.1600-0528.2009.0055.x

フランスでは歯科矯正治療において社会的不平等があり、主に社会的地位、年収、補足保険、居住地域と関連している。

 

 

ドイツ:

The healthcare system and the provision of oral healthcare in European Union member states. Part 1: Germany BDJ: 218, 239–244 2015.

歯科医師 69,000人

チェアサイドアシスタント(ZDF)182,000人

  歯科管理助手(ZMW)

   歯科予防処置助手(ZMP)

    歯科衛生士(DHG) 600人強

歯科技工士 58,000人

 

医療保険制度として,Gezetzelich Krankenksse法定健康保険 SHI)と Private Krankenkasse(民間健康保険)があり,前者に国民の9割が加入しているが,所得の高い経営者などは,カバーされる疾患や適応範囲も広い後者へ加入するが,どちらか一方にしか選択できず,いったん民間健康保険に加入すると国民健康保険には戻れない.

臨床検査、X線検査、診断、詰め物、口腔外科、子供の予防治療、歯周病学、歯内療法については、SHIは費用の10%を負担する.光重合コンポジットレジンは、アマルガム充填と同程度の費用が疾病対策基金によってカバーされ、患者は追加費用を支払う.歯科矯正では,疾病基金が治療の必要性を認めた場合,SHI基金は子供の治療費の80%を負担する.疾病基金の基準を満たさない場合は,子どもの両親は歯科矯正治療費を自分で支払うか,上乗せの民間保険に加入する必要がある.

歯列矯正の必要性は,医学的必要性についてKIG(歯科矯正適応グループ)でレベル1~5に分けられ,レベル3-5では18才まではSHIで賄われる.顎変形症など口腔外科手術が必要な場合は18才以上でも保険適用される.

https://de.wikipedia.org/wiki/Kieferorthop%C3%A4die

 

・ Entwicklungsstörungen im Kopfbereich

・ Zahnunterzahl (Hypodontie)

・ Zahndurchbruchsstörung

・ Distale Bisslage (meist durch Rücklage des Unterkiefers)

・ Mesiale Bisslage (meist durch vorstehenden Unterkiefer, Progenie

・ Offener Biss

・ Tiefer Biss

・ Bukkalokklusion oder Lingualokklusion (Kreuzbiss im Seitenzahnbereich)

・ Abweichung der Kieferbreiten (z. B. Kopfbiss)

・ Kontaktpunktabweichungen (z. B. Engstand)

・ Platzmangelsituation

 

・ Grad 1 umfasst die leichten Zahnfehlstellungen,

deren Behandlung aus ästhetischen Gründen wünschenswert sein kann, jedoch nicht zu Lasten der Krankenkassen.

・ Grad 2 umfasst Zahnfehlstellungen geringer Ausprägung,

diezwar aus medizinischen Gründen eine Korrektur erforderlich machen, deren Kosten jedoch nicht von den Krankenkassen übernommen werden.

・ Grad 3 umfasst ausgeprägte Zahnfehlstellungen,

die aus medizinischen Gründen eine Behandlung erforderlich machen.

・ Grad 4 umfasst stark ausgeprägte Zahnfehlstellungen,

die aus medizinischen Gründen dringend eine Behandlung erforderlich machen.

・ Grad 5 umfasst extrem stark ausgeprägte Zahnfehlstellungen,

die aus medizinischen Gründen unbedingt eine Behandlung erforderlich machen.

 

歯科と医科

orthodontieという用語より,Dento-Maxilläre Orthopädie と言われる.

 

ドイツの歯科医療システム(ISBN 978-4-89605-248-0) 2009年1月発行.

原本は,The System of Dental Care in Germany (ISBN 3-934280-63-3) 2003年発行.

 

 

スウェーデン:

スウェーデン医療ユニバーサルヘルスケア度が存在し,ランスティングごとの地方分権制となっている.ノルディックモデルの高福祉高負担型であり,保健支出はDPの9%.医療保険は社会保険制度ではなく,主に税金を原資として中央政府および県レベルで課税.多くは公営だがプライベート医療機関も存在する.

大学までの教育は無料,18歳まで医療費も無料.消費税25%,収入の30%の所得と税金高額だが,国政選挙の高い投票率(約80%)で国民の支持を得ている.国会議員の平均年齢は45歳程(うち女性46.1%),20代の議員も10人以上いる.

OECD加盟国のうち,40才以下の国会議員比率の高さは,①ノルウェー 36.1%,②フィンランド 36.0%,③スウェーデン 34.4%,④イタリア 32.8% の順にであり,日本は㉘日本 12.7%,㉜アメリカ 11.5% となっている.

歯科医療は,19歳未満であればランスティング(地方自治体)は歯科医療を無料で提供する責務がある.

ランスティングには民間病院の価格・提供サービスの規制権限がある。患者はランスティングと契約を結んでいない民間病院で医療を受けた場合には、払い戻しを受けることはできない。

 

 

フィンランド:

 

 

ノルウェー:

 

 

イタリア:

The healthcare system and the provision of oral healthcare in European Union member states. Part 8: Italy

British Dental Journal volume 222, pages809–817 (2017)

 

 

 

カナダ:

 

 

 

アメリカ 以下は,参考文献より該当部抜粋(DeepL翻訳).詳細原文参.

References:

出典:NC Medicaid Orthodontic Service, Medicaid and Health Choice Clinical Coverage Policy No: 4B Amended Date: March 15, 2019

Oral Health in America: Advances and Challenges 2021 U.S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES National Institutes of Health Ntioal nstitute ofDenal nd Craniofacial Research Bethesda, MD

米国における医療保険制度の概要(2021年6月)ジェトロ

ORAL HEALTH IN AMERICA: A REPORT OF THE SURGEON GENERAL From the Office of the Surgeon General U.S. Department of Health and Human Services May 2000

Manski RJ and Rohde F. Dental Services: Use, Expenses, Source of Payment, Coverage and Procedure Type, 1996–2015 : Research Findings No. 38. November 2017. Agency for Healthcare Research and Quality, Rockville, MD

歯科保険加入と歯科医療サービスの利用状況

歯科医療は、多種多様な場所や施設で提供されている。伝統的に、民間と公共の現場は「ほぼ完全に別々に機能し、異なる資金調達システムを使用し、異なる顧客層にサービスを提供し、異なる環境でケアを提供している」(Institute of Medicine 2011, p.82)。民間部門には、個人経営の歯科医院がすべて含まれる。これらの歯科医院は、主に民間保険に加入している患者や自費診療を行う患者、そして一部の公的資金を受ける患者を対象としています。現代のデンタル・セーフティ・ネットには、社会的・経済的・健康的に様々な不利益を被っている人々を含む、十分なサービスを受けていない人々の歯科治療を支援する施設、医療提供者、メディケイド子供健康保険制度(CHIP)などの支払い制度が含まれます(Edelstein 2010)。セーフティネットの場所には、歯科学校、様々なヘルスセンター(公立診療所、連邦政府認定ヘルスセンター、学校ベースのヘルスセンター、インディアンヘルスサービスの診療所、地方のヘルスセンター)、病院の診療所や救急室、無料介護プログラム、そして最近では、メディケイドやCHIPの対象となる患者のための個人歯科診療所も含まれています。2019年、43%の歯科医がメディケイドやCHIPを受け入れている。労働力と診療モデルの詳細については、セクション4を参照してください。

一般的に、小児歯科治療のための1つ以上の財源は、雇用者が提供するような民間の歯科給付プラン(通常「歯科保険」と呼ばれる)、アフォーダブルケア法(ACA)の下で州の市場で提供される州の補助金付きの民間給付プラン、メディケイドとCHIPなどの公的保険制度、および家族による自己負担額である。ほぼすべての民間医療保険制度は、予防医療を除くすべてのサービスに対して、ある程度の自己負担を要求している。雇用主が提供する保険制度が利用できるかどうかは、親の仕事に大きく依存し、その質もさまざまである。雇用主が歯科保険を提供しない、あるいは扶養している子供や青年には提供しない親は、ACAの結果、各州に設立された保険市場で州の補助を受けた歯科保険を購入することができるようになった。低賃金の仕事では、健康保険を提供しない、提供しても扶養家族が親の健康保険に加入することを認めない、あるいは歯科保険が含まれない健康保険を提供する傾向がある。このため、低所得の家庭では、子供がメディケイドやCHIPの受給資格を持たない限り、子供の口腔ケアに自己負担がかかる危険性が高いのです。

メディケイドとCHIPの経済的資格は州によって異なが、低所得の家庭でも保険が適用され、自己負担をなくすか制限することで医療を受けられるようになります。1967年以来、メディケイドの早期・定期検診、診断、治療給付は、包括的な歯科治療や対象となる歯列矯正を含め、医学的に必要とみなされるすべてのサービスを対象としています。2010年からは、CHIPプランも幅広い必須歯科医療サービスを提供しています。州はCHIPを3つの方法で管理することができる。すなわち、CHIP受給資格者を、広範な歯科給付と費用負担を禁止したメディケイドプログラムに登録する、やや異なる歯科給付と費用負担を制限した別のCHIPプログラムを設立する、またはこれら2つのアプローチを組み合わせる。2015年5月現在、9つの州がCHIPプログラムをメディケイドに統合することを選択し、13州がCHIPを独立した保険プログラムとし、29州が何らかの組み合わせを行っている(Hinton and Paradise 2016)。親が子供をメディケイドやCHIPに加入させることができるかどうかは、家族の収入、子供の年齢、家族の居住州によって異なる。

① HLD (Handicapping Labio-Lingual Deviation) Index

② Salzmann

③ メディケイド公的医療保険の適用基準:

出典:NC Medicaid Orthodontic Service, Medicaid and Health Choice Clinical Coverage Policy No: 4B Amended Date: March 15, 2019

また,メディケイドサービスの説明書のなかでOrthodonticsの定義について書かれており,適用基準の n. と合わせて,我が国における政府の解釈と,諸外国における歯科矯正の意義の違いがよくわかる.

Orthodontics is defined as a corrective procedure for functionally impairing occlusal conditions (including craniofacial abnormalities and traumatic or pathologic anatomical deviations) that cause pain or suffering, physical deformity, significant malfunction, aggravates a condition, or results in further injury or infirmity. Such services must maintain a high standard of quality and must be within the reasonable limits of services customarily available and provided to most persons in the community with the limitations and exclusions specified in this policy.

歯科矯正学は、痛みや苦痛、身体的変形、重大な機能不全、状態の悪化、またはさらなる損傷や病弱を引き起こす、機能的に損なわれた咬合状態(頭蓋顔面異常や外傷性または病的な解剖学的異常を含む)に対する治療法として定義される。このようなサービスは、高い品質基準を維持しなければならず、本ポリシーで指定された制限と除外を備えた、地域社会のほとんどの人に慣習的に利用・提供されているサービスの妥当な範囲内でなければなりません。

 

3.2.2 Medicaid Additional Criteria Covered (ノースカロライナ州)※適用範囲は米国全体で州によって大きな格差がある.

The following criteria for functionally impairing occlusal conditions apply when cases are reviewed for Medicaid orthodontic approval. The probability for approval is increased when two or more of the following criteria exist:

a. Severe skeletal condition that may require a combination of orthodontic treatment and orthognathic surgery to correct (beneficiary’s age and the direction of growth are also considered);

b. Severe anterior-posterior occlusal discrepancy (severe Class II or Class III dental malocclusion);

c. Posterior crossbite of three or more teeth per arch;

d. Anterior crossbite of three or more teeth per arch;

e. True anterior open bite: 2 mm or more; of four or more teeth per arch;

f. Significant posterior open bite: 2 mm or more; of four or more teeth per arch (not involving primary teeth, partially erupted teeth, or one or two teeth slightly out of occlusion);

g. Impinging overbite with evidence of occlusal contact into the opposing soft tissue (lower incisors must be causing tissue trauma);

h. Overjet (excessive protrusion 6 mm or greater);

i. Crowding greater than 6 mm in either arch that must be moderate to severe and functionally intolerable over a long period of time (such as occlusal disharmony or gingival recession secondary to severe crowding);

j. Impactions where eruption is impeded with a good prognosis of being brought into the arch;

k. Excessive spacing of 10 mm or more, in either the maxillary or mandibular arch (excluding third molars), or 8 mm or greater from mesial of cuspid to mesial of cuspid. Any space that will remain for prosthodontic or implant replacement cannot be included in the measurements for meeting spacing criteria;

l. Two or more congenitally missing teeth (excluding third molars) of at least one tooth per quadrant;

m. Occlusal condition that exhibits a profound impact from a congenital or developmental disorder (craniofacial anomaly), severe trauma, or pathology;

n. Psychological and emotional factors causing psychosocial inhibition to the normal pursuits of life (requires supporting documentation of pre-existing condition from a licensed mental health professional specializing in child psychology or child psychiatry); or

o. Potential that all problems will worsen.

メディケイドはどの州でも子どもに包括的な歯科給付を提供しているが、子どもが治療を受けられるかどうかは、親自身のメディケイド歯科給付にも一部依存しているようである。親がメディケイドの包括的歯科給付を受けている子どもは、親がメディケイドの緊急歯科給付のみを受けているか、全く受けていない子どもよりも、前年度に歯科受診をしている確率が高い。しかし、メディケイドの成人歯科医療保険を持たない親の子どもは、何らかの歯科医療保険を持つ親の子どもに比べ、歯科医療を利用しない可能性が7倍も高かった(Children's Dental Health Project 2012)。

メディケイド、CHIP、ACAはすべて子どもの歯科保険加入を義務づけているが、雇用者が出資する歯科保険に加入していない成人の歯科保険加入を保証する制度は皆無である。メディケイドが成人まで給付を拡大すると、その子どもによる予防サービスの利用が増えることが示唆されている(Venkataramani et al.2017)。さらに、低所得の介護者が歯科保険に加入している場合、その子どもは歯科治療を受ける可能性が高いことを示した研究もある(Lipton 2019)。低所得家庭に住む子どもの親への歯科給付の拡大は、これらの子どもの歯科医療へのアクセスを改善する可能性がある。

Malocclusion

不正咬合の存在とその影響は、多くの青年にとって重要である.不正咬合は,口腔機能に影響を与え,顔貌を変え,歯の外傷のリスクを高め,生活の質を低下させる可能性のある歯と顎の不整列のことであり,多くの場合にこれらは外見的なものでもあるが,重度の不正咬合では,歯周組織の健康,咀嚼,発話,心理社会的発達に大きな影響を与えています(Abreu 2018).

1988年から1991年にかけて行われた小児の不正咬合の最後の全国調査(Brunelleら、1996年)では,12歳から17歳の約半数が矯正治療を必要としており,メキシコ系アメリカ人と非ヒスパニック系黒人の集団でその必要性が高いことが示された(Proffitら 1998年).また,これらのデータは,12歳から17歳の青少年の66.2%がオーバーバイト(切歯の垂直方向の重なり)が正常範囲であることを示しています.一方、上顎と下顎の前歯に不正な歯並びがなかったのは12%だけであり,大多数の子供たちが何らかの歯列不正の問題を抱えていることが示唆された.カリフォルニア州のラテン系青少年を対象とした小規模な研究(N=507)では,21.5%がクラスII不正咬合(下顎後退),9.1%がクラスIII不正咬合(下顎突出)であることが示された(Silva and Kang 2001).その後の研究では,米国におけるクロスバイトの発生率は,3歳から12歳の子どもで58%であることが示唆された(Bell and Kiebach 2014).2013年には,20歳までの若者に影響を与えるすべての歯科処置の約15%が歯科矯正関連でした(Laniado et al.2017).

口腔と咬合の健康の心理社会的側面は,青少年が仲間との交流を通じて大人のアイデンティティを形成しているため,話す能力,笑顔,社会的状況での交流など,思春期において特に重要である(Grickら 2016; SilkとKwok 2017).この年齢層は矯正装置や歯列矯正で不正咬合を治療する時期であり,ちょうど外見の重要性が高くなります.青少年のこれらの優先順位を認識し,口腔衛生のメッセージを人気や高い自尊心と積極的に結びつけることで,健康的な生涯の習慣を確立することができます(Silk and Kwok 2017)。

 

口腔保健医療従事者

米国の口腔保健医療従事者は、歯科医師と、歯科衛生士歯科セラピスト歯科助手歯科技工士地域歯科保健コーディネーター(CDHC)などの関連専門家から構成されています。これらの口腔保健専門家は、単独またはグループの歯科診療所、地域診療所、学術的環境、商業的診療所、病院、および連邦、州、または地方政府の環境などのチーム編成や設定で患者にケアを提供しています。これらの医療提供者の中で最も高度な訓練を受けた歯科医師は、口腔疾患の診断と治療、患者の口腔衛生管理、適な口腔衛生行動に関する患者の教育、そして必要に応じて他の医療提供者に患者を紹介するなどの役割を担っています。

米国歯科医師会(ADA)によると、2020年、米国で活発に開業している歯科医師は201,117人であった。最も多いのはカリフォルニア州とテキサス州でそれぞれ31,059人と15,872人、最も少ないのはワイオミング州とバーモント州でそれぞれ306人と348人であった。全体として、2020年の米国住民10万人当たりの歯科医師数は61人であった。しかし、この数は州によって大きく異なり、コロンビア特別区の104人からアラバマ州の41人までである(米国歯科医師会2021a)。歯科医師対人口比の最適な指標はないが、入手可能な推定では、単独診療の歯科医師は年間約1,350人の患者を管理し、グループ診療の歯科医師は約2,100人を管理している(Bailit 2017)。

歯科医の多くは一般歯科医である。2020年、米国には158,520人の一般歯科医と、以下の専門分野での業務を含む追加の教育訓練を報告したその他の歯科医が42,597人いた。歯科矯正学および歯科顔面整形外科(10,885)、小児歯科(8,561)、口腔顎顔面外科(7,529)、歯周病学(5,723)、歯内療法(5,745)、補綴学(3,733)、歯科公衆衛生(823)、口腔顎顔面病理(431)、口腔顎顔面放射線(164) (アメリカ歯科協会 2021a). 2019年と2020年に歯科麻酔学、口腔顔面痛、口腔医学が専門分野として追加された。

口腔保健の人材には、歯科衛生士歯科助手歯科技工士、さらに最近では歯科治療士CDHCも含まれる。歯科衛生士は、口腔衛生スクリーニングや健康歴の確認、健康増進技術の指導、デンタルX線写真(レントゲン)や口腔内画像の作成、歯面からの硬軟沈着物の除去、予防材料の塗布などを行います。いくつかの州では、追加訓練を受けた衛生士が、州の開業法で認められている局所麻酔薬の投与や特定の修復サービスなど、拡大した機能を行うことができます(Beazoglouら2012)(米国歯科衛生士協会2018)。

米国労働統計局(BLS)の雇用者調査は、2020年に米国で雇用されるフルタイムおよびパートタイムの歯科衛生士が194,830人いると推定したが、一部のパートタイム衛生士は複数の環境で働いているかもしれない(米国労働統計局2020a)。BLSは、2020年に312,140人が歯科助手として雇用されると推定している(米国労働統計局2020b)。そのうちの約25%の歯科助手は、拡張機能(例えば、歯の研磨やシーラントの塗布など)を担っていると報告されている(Baker et al.2015)。2020年、米国では歯科技工士は30,800人であった(米国労働統計局2020c)。また、一般市民に直接義歯治療を行う歯科医療従事者であるデンチュリストは、現在、アリゾナ、コロラド、アイダホ、メイン、モンタナ、オレゴンで法的に開業が認められている(National Denturist Association 2021)。

歯科医療へのアクセス不足に対応するため、ADAは2006年にCDHCプログラムを立ち上げ、地域密着型の予防、ケアコーディネーション、患者ナビゲーションを提供しています。CDHCは、サービスが行き届いていない地方、都市、ネイティブアメリカンのコミュニティで活動し、他の方法では歯科治療を受けられないような人々を専門のプロバイダーにつないでいます(Grover 2017)。現在、カリフォルニア歯科医師会などの州歯科医師会は、CDHCプログラムを承認するために州議会と協力しており、460人のプログラム卒業生が45州で働いている(米国歯科医師会2020a)。

歯科セラピストは、この分野で最も最近確立されたミッドレベルプロバイダーで、歯科医師の全般的かつ直接的な監督のもと、日常の予防および修復ケアを提供します。デンタルセラピストの診療範囲は一般歯科医の約4分の1であり、正確な役割はセラピストの教育や州の規制によって異なる。モデルは様々ですが、歯科セラピストは現在13の州で開業することが許されています。アラスカ(部族領)、アリゾナ、コネチカット、アイダホ(部族領)、メイン、ミシガン、ミネソタ、モンタナ(部族領)、ニューメキシコ、ネバダ、オレゴン、バーモント、ワシントン(部族領)、そしてフロリダ、カンザス、マサチューセッツ、ニューヨーク、ノースダコタ、ウィスコンシンで提案や法案が検討中である。2019年には6つの州で法案が承認され、多くは歯科セラピストと登録歯科衛生士の資格を組み合わせているため、個人は二重に訓練されている。現在、セラピストはアラスカ、アリゾナ、ミネソタ、オレゴン、ワシントンで活動している(米国歯科衛生士協会2020)。

口腔ケアのための新しいミッドレベルプロバイダーモデルを開発・導入している州の中で、アラスカは最も経験が豊富である。地域医療補助者プログラムはアラスカの労働力プログラムで、歯科医師以外の口腔医療提供者であるプライマリー歯科医療補助者(PDHA)拡張機能歯科医療補助者(EFDHA)歯科医療補助衛生士(DHAH)歯科医療補助療法士(DHAT)という4種類の医療機関を創設し、ケアへのアクセスを改善するために範囲を広げたものである。PDHAは、口腔衛生、歯ブラシによる予防、フッ素塗布、栄養と疾病管理のカウンセリングを提供します。PDHAは、歯科画像診断、予防処置、シーラント、外傷性修復治療を提供するための追加訓練を受けることもあります。EFDHAは、歯科医師またはセラピストが虫歯を除去した後に修復物を装着するか、予防処置(ルートプレーニングなし)を提供するためのトレーニングを受けた歯科助手です。追加訓練を受けたEFDHAは、より複雑な作業を行うことができる。PDHAとEFDHAのいずれにおいても、トレーニングは2週間の体系的な指導に続き、プリセプターシップが終了するまで直接指導を受ける期間を含みます。

DHAHは、歯科医療認定委員会(CODA)により承認された局所麻酔コースを修了した登録歯科衛生士で、監督する歯科医師から遠隔操作で局所麻酔を提供することができるようになります。DHATは、2年間の教育プログラムを修了し、基本的な歯科修復処置、抜歯、予防サービスを提供することができるようになります。この4つの新しいクラスの医療従事者は、指導歯科医チームのメンバーであり、歯科医のいない小さな村に治療を提供するために、指導歯科医からリモートで働くことが許可される場合があります。

歯科助手は、歯科医院でさまざまな活動を行います。州によっては、健康歴の採取、画像処理、健康増進法の指導、オフィス管理業務、患者や取引先とのコミュニケーション(米国歯科医師会2021b)、さらに歯科医師の処置の補助などを担当することもある。一部の州では、歯科医師が直接患者ケアを行うのを支援するために、機能拡張型歯科助手の使用を支援しており(Beazoglouら、2012)、彼らの継続教育は、米国歯科助手協会(米国歯科助手協会2021)を通じてサポートされています。

歯科技工士は、歯科医師の詳細な書面による指示に従い、総入れ歯や部分入れ歯、ブリッジ、クラウンやベニア、矯正器具を作製します(米国歯科医師会2021c)。技工士は通常、様々な教育環境の中で2年間のプログラムを通じて教育・訓練を受け、卒業生は準学士号または修了証書を取得する。さらに、少数のプログラムは、歯科技工の4年制バカロレアプログラムを提供している。

さらに、歯学以外の分野で訓練を受けた医療専門家が、さまざまな口腔医療サービスを提供しています。医師、看護師、その他は、周産期医療の一環として女性に、また、小児、高齢者、その他特別なニーズを持つ人々に口腔ケアを提供しています(Institute of Medicine and the National Research Council 2011)。これらの活動には、健康歴の確認、口腔衛生スクリーニング、リスク評価とチャート作成、教育と栄養カウンセリング、ケア調整、および通常歯科衛生士の診療範囲に含まれるその他のサービスが含まれる場合がある(Maxey et al.2017)。さらに、虫歯予防のためのフッ素ワニスを提供する場合もある。しかし、トレーニングや経験の不足、不十分なインフラサポート、システムの制限などが重なり、これらの専門家の多くが口腔保健の推進にもっと関与できるようになる可能性が制限されることが多い。歯科医師以外の医療従事者が口腔保健サービスを提供している数については推定されていない.

 

歯科診療の技術

歯科診療では、コンピューター、レーザー、スキャニングとミリング技術、診断情報を強化するための最新のX線撮影技術、およびEHRを含む、さまざまな技術が使用されています。コンピュータは歯科医院の基礎技術であり、新しい修復物を作成するためのスキャン技術に接続され、EHRを管理するために使用されます。矯正歯科用のデジタルスキャニングは、アルジネート歯型に大きく取って代わりました。スキャニングにより、スタディモデルを石に流し込む必要がなくなり、治療計画が強化されます。矯正歯科治療が医療上必要な理で完了し、保険会社による審査が必要な場合、得られた模型を安全な手段で簡単に保険会社に渡すことができます。レーザーは、歯を白くするため、歯の虫歯を取り除くため、または軟組織を取り除くために使用されます。スキャニング及びミリング技術は、歯科オフィス内で新しい接着セラミック及び樹脂ベースの複合修復物を製造するために使用される増大するコンピュータ支援設計/コンピュータ支援製造(CAD/CAM)技術の一部である(Trost et al.2006)。

チェアサイドCAD/CAMシステムの使用は、患者の口腔機能及び審美性を回復及び維持するために歯科医師、技師、及び患者が行う時間及び労力を最小限に抑え、高品質の結果を提供するという点で、全ての歯科分科において有望である(Baroudi及びIbraheem 2015)。歯科用コーンビームCTは、歯、骨、軟組織の3次元画像を作成するために使用される新しいX線技術です(米国食品医薬品局2020年)。先進的な歯科医療技術の詳細については、本モノグラフのセクション6を参照。

EHRは、忙しい歯科医院にとって、歯科記録の作成、請求・支払情報・X線写真の保存、他の医療機関のEHRとの情報共有など、多くのタスクを達成できる情報システムである。歯科診療所では、(1)品質、安全性、効率の向上、(2)健康格差の縮小、(3)患者や家族の関与、(4)ケア連携と集団健康の向上、(5)患者の健康情報のプライバシーとセキュリティの維持(医療情報技術国家コーディネーター室2019)のためにEHRを使用するケースが増えている。歯学部付属診療所、FQHC、グループ診療所など多くの大規模歯科医療機関がEHRに移行しているが、EHRのチェアサイドの可能性を十分に活用している歯科医療機関は半数以下である(Moffitt and Steffen 2018)。セクション6では、EHRについてより詳しく解説しています。

遠隔医療には、遠隔地での医療サービスの提供、患者や医療専門家の教育、公衆衛生や管理活動の実施を促進するための技術の使用が含まれる(Daniel et al.)テレデンティストリーには、ライブおよび「ストア&フォワード」方式で遠隔地から提供できる幅広い口腔保健サービスが含まれる。例えば、口腔外科専門医の診察はテレデンティストリーを用いて行うことができるので、患者は処置の前に長距離を移動する必要がありません(追加情報についてはセクション6を参照)。ケアのコストと時間を削減し、専門医へのアクセスを向上させることができます(Banbury et al.2014; Acharya and Rai 2016; Powell et al.2017)。最適な遠隔医療システムは、健康記録と完全に統合されている。遠隔医療連携により、検査や治療の重複など、患者ケアの冗長性のリスクを低減します(Fathi et al.2017)。

 

専門歯科学および高度一般歯科学プログラム

認定された専門プログラムの数は、2000 年から 2016 年の間に 416 から 457 に増加した。一部の専門分野ではプログラムが減少したが(歯科公衆衛生学が3つ、補綴学が9つ減少)、すべての専門分野で登録者数が増加した。その期間の全体的な登録者数の増加の上位3つの専門プログラムは、口腔顎顔面外科で、848人から1,195人に増加し、小児歯科で、442人から921人に増加し、歯科矯正学で、714人から1,043人に増加した(米国歯科医師会2016)。

た、高度歯科教育登録者数も2000年から2018年にかけて増加した。General Practice Residencyの登録者数は1,063人から1,237人へと微増した。一般歯科の上級教育の登録者数は、614人から924人に増加した(米国歯科医師会2016年、2020f)。

 

今後の課題

米国では、人口動態、疾病・障害のパターン、ヘルスケアのあり方において、かつてないほどの変化が起きている。科学技術の進歩に遅れをとらないようにする必要性は、複数の情報システムを利用できるようになった歯科と医学においてすでに明白である。インターネットや継続的な歯科教育に加えて、新世紀には画像システム、コンピュータ支援技術、遠隔歯科治療や遠隔医療、診断や治療法の改善、新しい生体材料やその他のバイオテクノロジー製品などが継続的に成長すると思われます。患者の疾病リスクの評価や治療計画において、遺伝情報がたす役割はますます大きくなっていくでしょう。

医療治療の有効性、費用対効果、成果についてはある程度の情報が得られているが、「ベストプラクティス」、すなわちどの治療が、どのような状況下で、どの程度のコストで、どの患者に有効であるかを決定するためには、さらなる研究が必要となる。治療計画には、アウトカム指標と患者の嗜好を取り入れる。既存文献の体系的なレビューにより、歯科・内科治療におけるエビデンスに基づくアプローチを促進することができます。さらに、包括的な診断と治療のコード、および新しい技術を適切に取り入れるためのプロセスも必要となります。

健康専門職が直面する課題は、地域ベースの疾病予防と個人の口腔ケアを拡大し、住民のニーズを満たすことである。ケアへのアクセスと障壁の問題に対処し、ケアを求めるすべての人にケアが行き届くよう、満足のいく解決策を見出さなければならない。

これらの予測される構造的、組織的、およびテーマ的な変化が、口腔ケアを提供する国家の能力と取り組みにどの程度影響するかは定かではない。口腔保健の目標を含む国の健康増進および疾病予防の目標は、重要な指針となるものである。変化したケアシステムが、国民の口腔衛生のニーズと要望への対応にどれだけ成功するかは、いくつかの方法で測定することができる。その中には、国民の健康格差の縮小国民全体の疾病発生率および有病率の低下機能的状態の改善費用の削減死亡率の低下健康と生活の質の向上などが含まれる。

 

公的医療保険制度は,

 メディケア(Medicare):

   65歳以上の高齢者
   65歳未満の身体障害を持つ者
   65 歳未満の透析や移植を必要とする重度の腎臓障害を持つ者

 メディケイド(Medicaid):

 特定の子供が加入できる児童医療保険プログラム(CHIP:Children's Health Insurance Program)

 退役軍人が加入できる保険制度(VHA:Veterans Health Administration)などが存在する

これらの制度の対象者以外は、勤務先(雇用主)が加入している民間医療保険へ加入.67.3%(2018年)の人は民間医療保険に加入している.

公的医療保険は、基本的に医療サービスを受けるたびに支払うコーペイ(Co-Payment)6や、保険が適用となるまでに支払わなくてはならないディダクティブル(Deductible)などの保険料の個人負担がなく、事務手数料が民間医療保険と比較して安いというメリットがあるが,医療提供者の選択肢が少ないというデメリットも存在する.メディケアは連邦政府が,メディケイドは州政府と連邦政府によって運営されている.

 

民間医療保険(Private Health Care Coverage)

 加入条件や内容はプランによって異なる。雇用主が提供する保険の場合、中小企業よりも大企業が提供する医療保険の方が良い内容である場合が多い。これには、優秀な人材を獲得・定着させるために福利厚生制度として医療保険を充実させている背景がある。

 また、2015 年に定められた医療保険制度改革法(ACA:Patient Protection and Affordable Care Act、通称「オバマケア」)によって、従業員が50 人上在籍する企業には医療保険の提供が義務付けられたため、保険加入者のほとんどが企業を通じて保険プランに加入している。

 企業が提供する保険に加入する場合は、企業側が保険料の一定割合を負担する場合がほとんどであるため、個人で加入するよりも費用負担が少なくなる。一方で、企業を通じて医療保険に加入する場合は、企業が用意したプランや内容以外は選択できない。企業によって選択肢が全くない場合もあれば、通常プランに加えてさらに充実した内容のプランを用意している場合もある。ただし、内容の充実したプランの場合は保険料が高くなるため、個人負担分も通常プランより増えることとなる.

2020年の年間平均の保険料は,単身プランで7,470ドル,家族プランで21,334ドルとなっており,毎年5%程度上昇している.

 従業員50人以上の企業は,医療保険の提供義務があり(従業員がそのオファーを却下した場合は提供する必要はない),従業員数が50人未満の企業は医療保険の提供義務はない.保険未加入者に対する罰金は,2019 年から廃止となったが,州によっては保険加入義務や保険未加入の場合の罰金を独自に法制化している.2021 年1 月時点で、個人に保険加入義務を課しているのは、カリフォルニア、マサチューセッツ、バーモント、ニュージャージー、ロードアイランドの5 州と、コロンビア特別区(ワシントンDC)となっている.

 

オーストラリア:

民間保険と公的保障によって助成される.人口10万人あたり58.7名の歯科医師.

Oral health and dental care in Australia

Guide to the Child Dental Benefits Schedule

2~17才の子どもは,基本的な歯科医療サービスに対して最大1,013ドルの公的給付を得られる.

歯列矯正は,グループ1~3に分類された費用が設定されている.審美的治療は対象外.低所得世帯では補助が受けられる.

 Group 1口唇裂口蓋裂

 Group 2 外科的矯正治療

 Group 3 補綴処置を伴うもの

 

 

 

ロシア:

 

 

 

― その他,追加など...

 

 

― 主要国の医療保障制度概要2017厚生労働省資料を追加改変)

我国の歯科医療は世界で公的医療保障が最も高い国の一つとされているが,「歯科矯正」に限るとその学問体系に関する考察遅れ,その意義と目的が不明瞭となっている.政府見解や歯科医師自身からも美容整形技術であるかのように解釈されており,国民には大きな経済的負担を求められる世界でも奇異な国家となっている.経済的負担から生じる歯科矯正医療へのアクセスの不平等は,口腔の健康格差の社会的決定要因となっている.

 矯正歯科専門医の役割は誰のためにあり,その目的と意義は何か? 国民への平等な医療提供制度,口腔の健康格差の是正はいかにるべきか?

 ☛ 子どもの歯科矯正 への公的医療保障の国際比較(OECD加盟国 2016)

 ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保障の現状(2010)

 

 日本ドイツフランススウェーデンイギリスアメリカ
制度類型社会保険方式
国民保険
会保険方式
国民皆保険
社会保険方式
国民皆保険
税方式による公営の
保健・医療サービス
税方式による公営の
保健・医療サービス
NHS, National Health Service
メディケア
メディケイド
民間医療保険
自己負担0-30%
こども医療費助成
外来:なし
入院:1日10€
外来:30%
入院:20%
薬剤:35%
無料
ランスティング
(地方自治体)
原則無料民間医療保険
加入率67.3%
2018年
歯列矯正への適応
OECD諸国,米国,諸外国では,医学的に必要とされる場合,公的医療保障が適用
民間保険なし
×
公的保障は限定的

一部疾病
適用範囲は限定
根拠解釈は議論要

18才以下
(1)

16才未満
(2)

19才未満
(3)

18才未満
(4)

メディケイド
21才まで
州による格差+
国民の71%は民間歯科保険に加入
公的医療保険の根拠 疾病及び傷害の国際分類 1900年-
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」とは,「国際疾病分類」とも呼称され、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や傷病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため設けられた分類.1900年(明治33年)に国際統計協会により制定されて以来,医学の進歩や社会の変化に伴いほぼ10年ごとに修正が行われ,第2次大戦後はWHOの所管となり世界保健機関憲章に基づいたものとなった.現在国際的には,1990年(平成2年)の第43回世界保健総会で採択されたICD-10が使用されている.厚生労働省大臣官房統計情報部より引用

  ICD-11 Version: 02/2022
    ICDの概要について
    ICD-11の国内の公的統計への適用について

健康の定義 1946年Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 
公的医療保険適応への経過1947: 顔貌の不正による精神的・社会生存上の懊惱苦悶を指摘(高橋新次郎)

1951: WHO加盟













1982:
唇顎口蓋裂


1990:
顎変形症
詳細は下表.

1994: こどもの権利条約批准(世界で158番目)

1995: 学校歯科検診(不正咬合の健康診断開始)


2002~2022:
歯科矯正混迷期




成育基本法
健やか親子21
 歯の矯正への請願
 自治体意見書 
 国民の要望多数




1948
: Orthodontic treatment included in the provisions of the National Health Service Act












1986:
シャンシェフ報告

1986:
Occlusal Index Committee set up in the aftermath of the 'Committee of Enquiry into Unnecessary Dental Treatment' recommends the introduction of orthodontic indices for NHS treatment
1947:公的資金を投入すべき不正咬合として,口唇口蓋裂,重篤な上下顎の疾患や外傷に起因する不正咬合,醜状,発音に関係し,正常発育への影響や教育就労に障害をもたらす場合の歯列矯正の基準を示した.

1965: 社会保障法IXI メディケイドプログラム制定.
1967: 社会保障法改正.21歳までのメディケイド,handicapping malocclusionへの給付義務化.







2010: ACA法(Patient Protection and Affordable Care Act(PPACA, オバマケア)成立.Medically necessary orthodontic treatment

適用基準一部の疾病
社会通念上必要
容姿の美化X 概念
(Social handicapとQoL)
学校健診:

議論の整理要
諸外国の現状
子どもの権利
制度/法的な是正
☛ 健康格差
KIG
歯科矯正適応グループ
IOTNHLD index
HLD(CalMod)
Salzmann index
など.州による.

Medicaid Orthodontic Service
 歯・歯列の位置や大きさの異常と健康の関係についての国際的な認識
根底にあるものは,「国民の幸せとは何か」という社会通念や理から,国民が享受できる医療制度や法が構築されてゆく.国民の幸福という国家における医療のあり方を考えるに,健康格差の大きな米国においても日本の終戦直後の時期に,公的資金の投入すべき不正咬合の審査基準は定められており,自由診療を取り入れてきた我国の歯科医療は,諸外国における倫理的実践的次元の医療概念,Social handicap,健康格差の是正や社会保障について学ぶものはないか.

Oral health care in Europe: Financing, access and provision, Health Systems in Transition vol.24 No.2 2022

OECD加盟国の保健医療費の状況(2018年)

OECD Health Statics 2021

OECD Health Statics 2022

The state of oral health in Europe. Report commissioned by The Platform for Better Oral Health in Europe

OECD health Working Papers No. 90 (2016) How OECD health systemsdefine the range of good
and services to be financed collectively

Committee of European Health Insurances, European Orthodontic Health Insurances, June, 2010. European Federation of Orthodontic Specialists Associations

ドイツのKIGシステム:2002年1月1日より導入.

Prevalence and Development of KIG-relevant Symptoms in Primary School Students from Frankfurt am Main. Bettina Glasl, Björn Ludwig, Peter Schopf, J Orofac Orthop 2006(6): 414-423

アメリカのHLD/HLD CalModなどについて
Relationship of 3 indexes of orthodontic treatment need used by Medicaid and oral health–related quality of life
Camacho D,Rinchuse D, Zullo T, Roche M
AJO-DO 161(4) p574-81,2022

An Overview of Orthodontic Indices
World Journal of Dentistry, January-March 2012;3(1):77-86

 

 

― 歯列矯正の医療制度化は?

 

 公益社団法人 日本矯正歯科学会では,

 不正咬合をそのままにしておくと生じる問題をWebで公開解説している.

   ・食べ物がよく噛めない

   ・歯槽膿漏になりやすい(注:歯周病のこと)

   ・口臭の原因になる

   ・アゴの関節に負担をかける

 

 Q:健康を害するにもかかわらず,公平な医療分配,患者間の不平等が解消されない理由は?

⇒ ① 欧州諸国の基準

   ② 文化・社会背景

      ③ 医療倫理

      ④ 歯科の歴史から考察する

⇒ 療制度専門医制度の未確立),視点,国民意識や化

 

     

 

― 公衆衛生と生活習慣病

 健康の社会的決定要因

生活習慣病(肥満や糖尿病)はだれの責任か?

  社会的に決定された様々な要因

  健康は自分の選択だけでなく,社会制度によっても左右される

    → 正義の問題(健康政策:)

 

 

 社会格差と健康

 健康格差は正義

 

 

  例えば,様々な全身疾患の誘因となる肥満では:

  見た目のダイエットなど美容的目的では保険適応されないが,以下の条件を満たす場合は適応される.

1. 高度の肥満の人(BMIが35以上/BMI=体重(kg)÷身長m)2)

2. 健診断などで1の条件に該当し、肥満と診断され、なおかつ高血圧、糖尿病、脂質異常症を指摘された人

3. 肥満に伴ういびきや、睡眠時無呼吸症候群と指摘された人

4. 肥満に伴う膝痛、腰痛のある人

5. 肥満によるその他の健康障害を伴う人

 

児肥満診療ガイドライン2017

肥満症診療ガイドイン216の目指すもの

高齢者肥満症診療ガイドライン2018

 

中医協委員から

歯列矯正ってなぜ保険がきかないのか?
 保険診療では,治療内容、使用できる薬,材料等に細かいルールが決められています.それ以外の治療方法、材料等を望まれる場合は,自費診療になります.昨今,保険診療の財政的問題で,安全性のある高度先端医療すべてが保険導入されているわけではなく保険の枠のなかだけで,国民的ニーズに答えきれなくなってきました.歯科の分野では,インプラント,歯周再生治療,歯列矯正,審美歯科審美補綴(オールセラミック等),特殊義歯が上げられます.その他詳しい内容は,ご相談ください.

↳ 保険適用されない分野の中で,歯の位異常・大きさの異常という疾病としての歯列不正は他分野の治療目的とは明らかに異なる.