■ 公的医療保険による歯科矯正治療について ■
子どもたちの健康上の問題(社会的・身体的・精神的),よりよい生活機能(身体機能)や 外見上の問題(社会参加・制約・自尊心)を解決することは,われわれ歯科医療従事者にとっての共通の願いです.歯科矯正医療は,歯の位置異常や顎骨の大きさといった 身体構造の不正 「体の病(疾病 / 病気)」,顔貌や見た目による 社会参加の制約や活動制限 「心の病(人の視線という痛み)」 という 障がい を改善することで,体と心の健康 well-being を回復・増進します.
口腔の健康格差是正,公平な歯科矯正医療を求める多くの国民や全国自治体の請願・意見書を受けて,本年6月1日より学校健康診断(歯列・咬合)で医学的に必要な医療を受けるよう指示された児童・生徒は,初診相談・検査・診断にかかる医療費は保険適用となりました.愛媛県内では,子ども医療費助成により18才までの歯科矯正相談は無料です. 【 文部科学省令で定められた 健康診断(歯列・咬合)の3区分について;】 区分0: 異常なし 区分1: 定期的観察が必要 区分2: 専門医(歯科医師)による診断が必要 ・ 医学的に異常ありとされた 区分1 と
区分2
が保険給付の対象となります.
・ 日本中のどこの歯科医院でも保険適用(各自治体での医療費助成の違いがあります)です. ・ 担当の歯科医師によくお尋ねください.
文部科学省令
児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項及び健康診断票の様式例の取扱いについて
各欄の記入については、次によること。
歯列の状態、咬合の状態について、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医師)による診断が必要、の3区分について、それぞれ 0、1、2
で記入する。
学校保健安全法施行令
(事後措置)について
第九条 学校においては、法第十三条第一項の健康診断を行つたときは、二十一日以内にその結果を幼児、児童又は生徒にあつては当該幼児、児童又は生徒及びその保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいう。)に、学生にあつては当該学生に通知するとともに、次の各号に定める基準により、法第十四条の措置をとらなければならない。
一 疾病の予防処置を行うこと。
二 必要な医療を受けるよう指示すること。
三 必要な検査、予防接種等を受けるよう指示すること。
四 療養のため必要な期間学校において学習しないよう指導すること。
五 特別支援学級への編入について指導及び助言を行うこと。
六 学習又は運動・作業の軽減、停止、変更等を行うこと。
七 修学旅行、対外運動競技等への参加を制限すること。
八 机又は腰掛の調整、座席の変更及び学級の編制の適正を図ること。
九 その他発育、健康状態等に応じて適当な保健指導を行うこと。
学校保健安全法
(児童生徒等の健康診断)
第十三条 学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない。
2 学校においては、必要があるときは、臨時に、児童生徒等の健康診断を行うものとする。
第十四条 学校においては、前条の健康診断の結果に基づき、疾病の予防処置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない。
1 「歯列・咬合」の欄
学校健康診断で受診勧奨のない場合の必要な医療費(自由診療)は こちら をご覧ください.不明な点はお尋ねください
【歯科矯正に公的医療保険の適用される場合】 註: 2024年現在 ※18才まで無料 ( こども医療費助成制度:申請先はこちら )
① 学校健康診断で異常ありとされた場合の 相談・検査・診断にかかる費用
② 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
③ 前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)
④ 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)
【我が国の歯科矯正医療の公的医療保障適用への経過】
医療の歴史の中で,歯列矯正という歯並びや顔貌への医療(理論や技術)は普遍性を持つ価値であるのに対し,その社会への適用制度(医療提供体制)はそれぞれの国家や地域の文化・思想・歴史背景の中で培われてきました.グローバル社会となった現代においても,健康に対する文化概念や価値は多様であり,それぞれの国家,地域における医療優先順位は様々です.
歯並びや顔貌は,生きる上での健康,文化的,安寧,平穏,安心な生活を送りたいという人々の普遍的願望の中で,「心の問題(精神的)」,「体の問題(肉体的)」,そして「外見上:人の視線という痛み(社会的 Social handicap)」 に影響を与え,well-being の問題であることは広く世界的にも認知されています.日本においても,すべての国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し,国はすべての生活面において,社会福祉,社会保障及び公衆衛生上の向上及び増進に努め無ければならない(憲法25条)ことが定められています.
「健康とは,病気でないとか,弱っていないということではなく,肉体的にも,精神的にも,そして社会的にも,すべてが満たされた状態 well-being にあることをいいます.(WHO憲章:日本WHO協会訳)」
あるいは,
「健康とは,人生における社会的,身体的,感情的な課題に直面したとき,適応し,自らの方向性を見定めることができる能力」 とする positive health の新しい健康概念もあります.
Huber M, et. al. How should we define health? BMJ 2011 Jul 26;343:d4163.
日本において,はじめて歯科矯正に公的医療保障(健康保険)が適用されたのは,「唇顎口蓋裂の歯列矯正治療(1982)」 でしたが,訪米諸国とは時間的にも大きな遅れがありました.☛ 口蓋裂と矯正歯科―その保険導入の前後 その後,「顎変形症(1990)」 など,保険適用の範囲は拡大され,今日では▲下表の66疾患に起因する不正咬合や顔貌の改善に公的医療保険が適用されています.
2024年には,多くの国民・自治体からの要望によって,▲学校健診で歯列矯正の受診勧奨を受けた場合の相談料・検査料 へ保険適用されるように法令整備がなされましたが,まだまだ国民が公平な歯科矯正医療を享受できるには至っていません.
日本の歯科矯正医療は,その社会への適用という意味で大変遅れた国家でありり多くの社会課題が取り残された状態が続いています.「健康」 や 「医療」,「健康で文化的な生活」 という基本的人権について,ヨーロッパ諸国や米国や南米の国々のそれと比較すると,非常に大きな相違を見出すことができます.これらの医療概念や社会課題は,国民とともに,歯科医療従事者(歯科矯正専門医)自身で考え,早急に解決すべき人道上の課題です.
― 日本の歯科矯正への公的医療保険適用(法令・政策形成)への社会背景と経過
年度 | 法令・政策形成と実行 | 社会課題ワーク(クレイム申立て,国民の請願,自治体の意見書) | |
1874(M07) | 恤救(じゅっきゅう)規則 | ||
1922(T11) |
(旧)健康保険法制定 3/25 |
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1923(T02) | 関東大震災 9/1 11:58 | ||
1927(S02) | (旧)健康保険法施行 1/01- | ||
1938(S13) |
厚生省発足 (旧)国民健康保険法 |
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1945(S20) |
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1946(S21) |
世界保健機関WHO憲章(健康の定義): 1946/7/22に61カ国の代表により署名され,1948/4/7より発効. 健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的well-beingの状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない.到達しうる最高基準の健康を享有することは,人種,宗教,政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである. | ||
1947(S22) | 日本国憲法
施行:5月3日
基本的人権の享有(第11条),幸福追求の権利の尊重(第13条),法の下の平等の原則(第14条)が明らかにされるとともに,①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すること(第25条第1項)とされ,これを具現化するものとして,国はすべての生活部面について,社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(第25条第2項)という国の責任が明確に規定された. | ||
1948(S25) | 世界人権宣言 |
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1951(S26) |
世界保険機関(WHO) 加盟: |
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1956(S31) |
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1958(S33) | 国民健康保険法の制定 |
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1961(S36) | 国民皆保険の実現 |
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1966(S41) | 国際人権規約 |
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1973(S48) | 70歳以上の医療費無料(自己負担ゼロ) |
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1975(S50) | 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 昭和50年11月11日 兎唇口蓋裂に対する保険拡大に関する請願(第1497号) | ||
1976(S51) | 第82回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 昭和52年10月25日 口唇裂・口蓋裂児の医療に関する件 | ||
1978(S53) | 標榜診療科 「矯正歯科」 「小児歯科」 追加 | ||
1982(S57) | 唇顎口蓋裂の保険導入 | ||
1983(S58) | 老人保健法の施行 | ||
1984(S59) | 職域保険(被用者保険)本人の自己負担1割 | そしゃく機能障害 | |
1989(H01) | 子どもの権利条約 | 第24条(健康・医療への権利)子どもは,健康でいられ,必要な医療や保健サービスを受ける権利をもっています. | |
1990(H02) | 顎変形症の保険導入 | ||
1994(H06) | 子ども権利条約に批准・発効:第24条 締約国は,到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認め,いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する.基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供する.児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため,効果的かつ適当なすべての措置をとる. | ||
1995(H07) | 学校健康診断に【歯列・咬合】の項目が追加 |
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1996(H08) | 顎口腔機能診断施設基準の追加 |
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1997(H09) |
同自己負担2割 |
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1998(H10) |
| 平成10年(1998)3月31日 公明党広島県本部と歯科矯正の保険適用を求める会より1万人を超える署名簿を厚生省(小泉厚生大臣)へ提出. | |
2000(H12) |
かかりつけ歯科医初診料の保険導入 |
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2002(H14) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 |
中医協を巡る贈収賄事件(概要) 「かかりつけ歯科医 初診料」の算定要件緩和に係る贈収賄事件 中央社会保険医療協議会を巡る贈収賄事件(中間報告) | |
2003(H15) |
同自己負担3割 |
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2004(H16) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 |
中医協を巡る贈収賄事件(概要) 「かかりつけ歯科医 再診料」の単価引き上げに係る贈収賄事件 中央社会保険医療協議会を巡る贈収賄事件(中間報告) 中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて | |
2006(H18) | かかりつけ歯科医初診料廃止 | ||
2008(H20) | 後期高齢者医療制度始まる 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 |
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2010(H22) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 | ||
2014(H26) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 | ||
2015(H27) | 医療保険制度改革法が成立 | ||
2016(H28) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 (国民健康保険への財政支援の拡充、入院時の食事代の段階的引き上げ、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入などが盛り込まれた) | FDI口腔の健康の新しい定義:口腔の健康は多面的な概念であり、痛み、不快感、頭蓋顎顔面複合体の疾患がなく、自信を持って話し、微笑み、嗅覚、味覚、触覚、咀嚼、嚥下、そして表情を通して様々な感情を伝える能力を含みます。口腔の健康は、生活の質を高めるために不可欠な生理的、社会的、心理的特性を反映しています。 | |
2017(H29) | |||
2018(H30) | 国民健康保険財政:市町村から都道府県単位へ 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 前歯3歯以上の永久歯萠出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。) | ||
2019(R01) |
| FDI:口腔の健康と歯科矯正の再定義.必要な歯科矯正への財政援助を提言 第200国会 参議院 厚生労働委員会 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願 | |
2020(R02) | 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 | 第201国会 参議院 厚生労働委員会 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願 第203国会 参議院 厚生労働委員会 | |
2021(R03) |
| 第204回国会 衆議院文部科学委員会第16号 5月26日 第204回国会 衆議院本会議第35号 6月16日 | |
2022(R04) |
別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 | 第208国会 参議院 厚生労働委員会 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願(立憲) 第208 国会 衆議院 | |
2023(R05) |
| 第211国会 参議院 予算委員会 第211国会 衆議院 厚生労働委員会 第212国会 衆議院 本会議 第12号 子供の歯科矯正治療における保険適用範囲の拡充に関する請願(自民) 第212回国会 参議院 厚生労働委員会第3号 11月16日 | |
2024(R06) | 学校健康診断の事後処置へ保険点数新設 咀嚼能力,咬合圧検査の顎変への適用 別に厚生労働大臣が定める疾患の追加 | ||
⇒ 社会ワーク活動の3-5年程度後には政策形成が実施され,国民生活の向上へとつながっている.しかし,日本では民主主義の歴史がまだ浅く,『ルールは与えられ守るもの』 という意識が強く,国民自身が社会的な不平等に気づき,クレーム申立て(社会活動)から政策に反映されるまでには時間を要している. わが国の歯科矯正医療への社会への適用,健康格差の是正(口唇裂・口蓋裂,顎変形症など)は,例えば,G7各国の現状よりも30年ほどの遅れがある.これは日本の歯科医たちが,目前の患者に注視する技術的次元が強く,国民や社会全体の健康指標向上の視座,経済的障壁によって受診できない本当の患者や国民の声(請願や意見書)に対し,臨床医や研究者,歯科矯正医は無関心であったり,社会問題の存在自体を知らないことによる.公平な歯科矯正医療とは? ほんとうに歯科矯正医療を必要としているのは誰か.
― 医療倫理・社会問題として,子どもの歯科矯正医療の公平性を考える視点
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適用年齢 国名 |
各国における歯列不正への公的医療保障の適用基準 |
16才未満
フランス
18歳未満
イギリス
ドイツ
北欧諸国 |
Grade 3
3-a 3.5~6mmのオーバージェットで,口唇不全がある
3-b 1~3.5mmの逆被蓋
3-c 1mmを超える前歯or臼歯部交叉咬合、CR/ICPのズレが2mm未満
3-d 2~4mmの中等度のコンタクトポイントのズレ
3-e 前歯または側方歯の開咬が2~4mm
3-f
外傷を伴わない歯肉または口蓋粘膜に完全な過蓋咬合 Grade 4
4-h 補綴前矯正または補綴を避ける空隙閉鎖を要す重度でない歯数不足
4-a 6~9mmのオーバージェット
4-b 咀嚼・発音障害を伴わない3.5mmを超える切歯列の過蓋咬合。
4-m 1~3.5mmのオーバージェット,咀嚼・発音障害が認められる
4-c 前方または臼歯部交叉咬合,CR/ICPに2mm以上のズレ
4-l
片側または両側臼歯部に機能的咬合接触がない交叉咬合
4-d
4mmを超える重度のコンタクトポイントのズレ
4-e
4mm以上の極端な前歯または側方歯の開咬
4-f
歯肉または口蓋粘膜の外傷を伴う著しい過蓋咬合
4-t
不完全萌出,隣接歯に対し傾斜や埋伏
4-x
過剰歯の存在 Grade 5
5-I
叢生,転位,過剰歯,乳歯残存,その他の病的原因による萌出障害(第三大臼歯を除く)
5-h
広範な歯の欠損.修復に影響するもの(1/4顎に1歯以上欠損)
5-a
9mm以上のオーバージェット
5-m
-3.5mm以上の逆被蓋,咀嚼および発音が困難な場合
5-p
口唇口蓋裂,その他の頭蓋顔面異常
5-s
乳臼歯の埋伏 |
21才以下
アメリカ |
・オーバージェット:9mm以上
・反対咬合:3.5mm以上 |
グローバル社会の現代においても,たまたま日本に生まれた子どもたちにとって,口腔や顎顔面の健やかな成長発育に関する 「医学的に必要な歯科矯正医療」へのアクセスには,大きな社会経済的障壁が存在しており(歯科矯正はいわゆる親ガチャである),「歯の位置異常という疾病」 や 「社会参加の制約となる外見上の問題 Social handicap:人の視線という痛み; 醜」 など,公平な歯科矯正医療へのアクセスの実現は,喫緊に是正すべき社会課題となっています.
こうした状況は,わが国の国民,とくに当事者である子どもたち,そしてわれわれ医療提供者側の歯科医師にとっても大変残念なことです.費用負担の面から治療開始を断念される子どもたちには,日々,日常的に接しています.治療を受けたくても親に迷惑をかけまいと大人になるまで我慢している子どもたちもたくさんいます.いわゆる親ガチャな医療が歯科矯正なのです.すべての国民が適切で基礎的な口腔の保健医療サービス(歯科矯正)を,必要なときに負担可能な費用で享受できる社会が実現するように,健康の社会的決定要因の是正が喫緊に改善されることを国民と歯科矯正医は強く望んでいます.
このような日本の現状につきまして,どうぞご理解頂きますようお願い申し上げます.
【歯科矯正に公的医療保険の適用される場合】 註: 2024年現在.※愛媛県では 18才 まで無料( こども医療費助成制度:申請先はこちら )
① 学校健康診断で異常ありとされた場合(区分1,2)の相談・検査・診断に係る費用
「歯・口腔の健康診断のお知らせ」 を必ずお持ちください.
② 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
③ 前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)
平成30年(2018)改訂により追加, 令和4年(2022)改訂により「小臼歯」を追加.
④ 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)
平成02年(1990)改訂により追加
平成08年(1996)改訂より顎口腔機能診断施設基準が追加
平成20年(2008)改訂により実態に即した評価をおこなうため,
歯科矯正診断料に係る診断を行う時期として,
「一連の歯科矯正治療における顎切除等の手術を実施するとき」を追加.
② の「別に厚生労働大臣が定める疾患」は,令和6年度の診療報酬改定によって,下記66疾患まで拡大整理されています. | ||
7 別に厚生労働大臣が定める疾患とは、次のものをいう。 |
※各疾患の発現率/ 有病率は, 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター内 小児慢性特定疾患情報センター 関連学会web,その他の論文より引用. | |
厚生労働大臣が定める疾患名 | 発現率/有病率 | |
昭和57年(1982)改訂により追加 (1) 唇顎口蓋裂 |
(1) 400-600人に1人(口唇裂34.5%,口唇口蓋裂45.0%,口蓋裂20.5%) | |
平成14年(2002)改訂により追加 (2) ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。) (3) 鎖骨頭蓋骨異形成 (4) トリーチャ・コリンズ症候群 (5) ピエール・ロバン症候群 (6) ダウン症候群 (7) ラッセル・シルバー症候群 |
(2)
3千~5千人に1人の割合 (3) 117人(亀谷ら,1980)100万人に1人 (4) 5万人に1人の頻度 (5) 130人(久保ら,1971) (6) 出生数2,200人前後/年(佐々木ら,2019) (7) 約500~1,000人(2009年調査) |
|
平成16年(2004)改訂により追加 (8) ターナー症候群 (9) ベックウィズ・ウイーデマン症候群 (10) 顔面半側萎縮症 (11) 先天性ミオパチー平成20年(2008)改訂により追加 (12) 筋ジストロフィー平成22年(2010)改訂により追加 (13) 脊髄性筋萎縮症平成30年(2018)改訂により追加 |
(8) (9) 218名(H21年度調査) (10) (11) 約1,000人 (12) 約25,400人 (13) 10万人に1~2人 |
|
平成20年(2008)改訂により追加 (14) 顔面半側肥大症 (15) エリス・ヴァンクレベルド症候群 (16) 軟骨形成不全症 (17) 外胚葉異形成症 (18) 神経線維腫症 (19) 基底細胞母斑症候群 (20) ヌーナン症候群 (21) マルファン症候群 (22) プラダー・ウィリー症候群 (23) 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。) |
(14) (15) 推定200~300名 (16) (17) (18) 推定40,000人(3千人に1人) (19) 4千人に1人 (20) 520人(平成22年調査) (21) 2万人() (22) 1万~1万5千に1人 (23) |
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平成22年(2010)改訂により追加 (24) 大理石骨病 (25) 色素失調症 (26) 口腔・顔面・指趾症候群 (27) メビウス症候群 (28) 歌舞伎症候群 (29) クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群 (30) ウイリアムズ症候群 (31) ビンダー症候群 (32) スティックラー症候群 |
(24) 約100人 (25)約2,500人(10万人出生に1人) (26) 推定25万人に1人(口蓋裂患者100例に1例) (27) 推定10万人に1人(5万人に1人) (28) 約4,000名(推定罹患率1/32,000) (29) 有病率は不明.1,000症例が報告 (30) 2万人に1人 (31) (32) 約12,000人(1万人に1人) |
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平成24年(2014)改訂により追加 (33) 小舌症 (34) 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。) (35) 骨形成不全症 (36) フリーマン・シェルドン症候群 (37) ルビンスタイン・ティビ症候群 (38) 染色体欠失症候群 (39) ラーセン症候群 (40) 濃化異骨症 (41) 6歯以上の先天性部分無歯症 |
(33) (34) (35) (36) 100例以上の報告あり (37) 100~200名 (38) (39) 35例(10万人に1人) (40) (41) |
|
平成26年(2016)改訂により追加) (42) CHARGE症候群 (43) マーシャル症候群 (44) 成長ホルモン分泌不全性低身長症 (45) ポリエックス症候群(XXX 症候群、XXXX 症候群及び XXXXX 症候群を含む。) (46) リング 18 症候群 |
(42) 2万分の1程度(平成21年度研究) (43) (44) (45) (46) |
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平成28年(2018)改訂により追加 (47) リンパ管腫 (48) 全前脳胞症 (49) クラインフェルター症候群 (50) 偽性低アルドステロン症 (51) ソトス症候群 (52) グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症) |
(47) (48) 推測1万人に1人 (49) 62,000人(男性のみ) (50) 稀,有病率は不明 (51) 2,500人 (52) |
|
令和2年(2020)改訂により追加 (53) 線維性骨異形成症 (54) スタージ・ウェーバ症候群 (55) ケルビズム (56) 偽性副甲状腺機能低下症 (57) Ekman-Westborg-Julin 症候群 (58) 常染色体重複症候群 |
(53) (54) (55) (56) (57) (58) |
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令和4年(2022)改訂により追加 (59) 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変) (60) 毛髪・鼻・指節症候群(Tricho-Rhino-phalamgeal症候群) |
(59) (60) |
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令和6年(2024)改訂により追加 (61) クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)
(63) 高IgE症候群 |
(61) 40,000-42,000人に1人 (62) 200-300名 (63) 20名以上 (64) 5,000人に1人 (65) 10万人に2.29-3.2人 |
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平成30年(2018)改訂により追加 |
(66) |
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8 7の(66)のその他顎・口腔の先天異常とは、顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合に、その都度当局に内議の上、歯科矯正の対象とすることができる。
9 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常に対する歯科矯正の療養は、当該疾患に係る育成医療及び更生医療を担当する保険医療機関からの情報提供等に基づき連携して行われる。
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