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5. 矯正治療のリスクと限界
医療技術の進歩にはめざましいものがあり,矯正歯科専門医はほとんどすべての症例を正確に診断し,歯並びや顎顔面の不調和は,より短い期間でより効果的に治療できるようになりました.しかし,
時には,現時点での医療技術では治療方針どうりにいかなかったり,希望される治療が不可能な場合もないとは言えません.矯正治療を含むすべての医療サービスにはリスクと限界が伴います.幸い,矯正治療中におこる合併症は非常にまれであり
,起こったとしてもそれほど重大なことではありませんが,治療を開始する前には十分考慮する必要はあります.
たとえば,矯正治療中には歯根吸収や歯肉炎が起こることがあります.また,歯が癒着している場合には動かないこともあります.治療後に きれいに整った歯並びが後戻りすることもあります.これは ,突然顎が異常に発育して,歯の噛み合わせを悪化させたり,舌や唇を噛む悪い癖のために起こることもあります. 当クリニックでは,患者さまのご要望に応じた治療方針や矯正治療のリスクと限界について,正しい医療情報をわかりやすくご提供する努力を行っています.十分納得して治療を開始していただき,指示を必ず守ってあなたの美しさを保持しましょう. ■ 矯正治療を開始する前に知っておくべきリスク ■● 1. 虫歯や歯周病は,糖分の多いものを食べたり,歯磨きをしないことによっておこります.これは,矯正治療をしない場合でもおこりますが,ブレースを装着している場合はより深刻なリスクとなります.● 2. 何人かの患者さまに は歯根吸収が発生することがあります.通常,この歯根吸収はわずかで目立たないものです.歯の寿命や安定性,動揺に影響することはあまりありません.● 3. 歯を支えている骨(歯槽骨)や歯肉(歯周組織)が健康でない場合,あるいは健康な状態であったとしても,これらの歯の周囲組織は矯正治療によって影響を受けます.一般的には,矯正治療による歯並びの改善は,歯肉炎や歯の喪失の可能性を減少させ,歯を長持ちさせるのに有用ですが,毎日の口腔清掃によって歯垢を取り除かないでいると歯肉や歯周組織の状態は悪化します.● 4. 歯は矯正治療後もその位置を変え続けます.保定装置(リテーナー)の装着は,この傾向(後戻り )を減らすことができますが,長い人生の中では,咬み合わせはいろいろな要因によってさまざまに変化します.その要因には, 「親知らず(智歯)の萠出」,「口呼吸」,「舌癖(舌のくせ)」,「鼻疾患」,「楽器の演奏」,「遺伝的な舌・歯・顎の大きさ」などの影響などがあります.● 5. 「カクカク音がする(関節音)」,「口があかない(開口障害)」,「関節が痛い(関節痛)」といった顎関節症状がおこることがあります.この症状は,矯正治療とは関係なくおこることもあります.当クリニックでは,矯正治療を開始前する前に は顎機能検査を実施し,鑑別診断の必要な場合はMR検査を実施しています. 当院Drは,矯正歯科と顎関節症の専門医ですので,これらの病態も十分に考慮して治療いたします.矯正治療をはじめた後,このような症状がおこったのにお気づきの場合は 申し出てください.● 6. 矯正装置(ブレース )はいくつもの小さな器具 からできています.ゆるみや破損,口のまわりへの打撃 などによって,頬の内側や唇が傷つくこともあります.ワイヤーを調節した後の違和感(歯が浮いたような感覚)は,通常は24-48時間続きます.何かこわれたり,緩くなっているのに気づいた場合は ,直ちにご連絡ください.● 7. ヘッドギアーの間違った使用方法によって,顔や目を傷つけてしまうこと も報告されています.ヘッドギアーによる治療は,こうした安全管理の問題や,患者さまのご負担が多いことから,当クリニックでは,2003年よりヘッドギアー の使用は可能な限り廃止いたしました.現在はより簡便で安全,患者さまのご負担も少ないマイクロインプラントによる治療を行っています.● 8. マイクロインプラントによる固定方法を使用することで治療期間の短縮ができますが.骨の中に植立したインプラントは,その周辺やお口を常に清潔に保っておかないと感染する場合が報告されています. また,ごくまれに,近接する歯根にダメージを与えることもあります.このような場合は除去することで問題は解決しますが,治療の進み具合によっては,再度の植立か,治療方針の変更が必要になります. ● 9. 顎の骨格的な不正(顎変形症 )を改善するためには,手術(外科的矯正治療)が必要になる場合があります.手術を併用した治療法をご選択された場合,手術や麻酔については口腔外科医専門医ともよく話し合ってください.●10. 審美ブレースによる治療をご選択いただいた場合,メタルブレースとは異なり,ブレースが割れたり脱落する可能性が少し高くなります.割れたブラケットが粘膜にダメージを与えることも,ごくわずかに報告されています.●11. リンガルブレース(歯の裏側からの治療)による治療をご選択いただいた場合, 数年前までは歯の裏側の装置によって発音に影響がで るとされていました."S"音や"R"音がその主なものですが,通常は発声練習を行うことによって3週間程度で回復します. しかし,現在の リンガルブレースは著しく小型化され,現在では発音に影響することはほとんどありません.また,歯磨きでは特別な歯ブラシ(#308)を使って時間をかけて丁寧に磨きましょう. ●12. 矯正治療の装置の素材や構造にはいろいろなものがあります.患者さまの中には ,材料に含まれる成分にアレルギー反応を起こす場合があります.これは,非常に まれなことですがご連絡ください.●13. 当クリニックで の一般的な治療期間( 歯を移動するのに要する期間) は約2年とお考えください.しかし,過度や不十分な骨の成長,装置やエラスティックの使用時間不足,日々の口腔清掃の不備,装置の破損や何回もの予約のキャンセルや変更など,いろいろな要因によって治療期間は延長し ます.また,これらは治療結果の質にも影響する場合があります.
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